C56 26号機 幻の逆転機?②
さて、前回の続きです。
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前回は「ウォーム式逆転機」というSL好きでも聞きなれない逆転機の名前が出てきたところで終わりました。
今回はそのウォーム式逆転機の詳細について書いていきます。
ウォーム式逆転機試験採用の経緯
昭和11年2月4日 鉄運転第五八号により
名鉄局上諏訪機関区小渕沢支区に新製配置されたC56 26号機に製造元である汽車會社考案の「ウォーム式逆転機」を取り付け試験を行ない下記に示す7項目について報告するよう本省運輸局運転課より通達が出されました。
乗務員取扱い上の便否
逆転位置指示の正否
ウォームその他の摩耗の有無
日常の保守上の便否
次回六ヶ月検査の際に於ける摩耗状態
改造を要する箇所並びに将来使用することの可否
その他参考事項
ウォーム式逆転機の詳細
上図はウォーム式逆転機の外観略図です。
この逆転機は名前の通りウォームギアを用いて逆転棒を動かす方式の逆転機で、逆転位置表示(締切位置)も機関士正面側に開けられた穴※から目盛りを読み取る形がとられており、当時の鉄道省制式蒸気で主流だったネジ式逆転機と比べるとかなり異なる構造になっていることがわかります。
※逆転位置表示は上図右側の逆転ハンドルの上に細かく目盛りらしきものが見える部分。
上の「汽車會社製 ウォーム式逆転機略図②③」を見ただけでも従来より複雑な構造になっています。逆転ハンドル回転軸部分にボールベアリングらしきものも確認できたりと従来のネジ式逆転機と比べて部品点数もかなり増えている印象です。
締切位置固定方法
従来のネジ式逆転機はハンドル部分に歯車が付いており、掛金で締切位置を固定する方式でしたが、ウォーム式逆転機は逆転ハンドル裏側に「セクトル」と呼ばれるバネで前後するコマで締切位置固定を行う方式をとっていたようです。
ここで個人的に疑問なのが、汽車會社が何故従来のネジ式逆転機よりも部品点数が多く、構造も複雑なウォーム式逆転機を鉄道省に提案したのかです。
素人目に見ても部品点数が増え、構造が複雑になれば保守やコスト面でも不都合なのは目に見えていますが、所有資料には汽車會社側の提案理由の記載がないので真相は不明です。
今回はここまで。
次回は実際の試験成績について書きます。
だい鉄
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