名前が性格に与える影響「相川ー渡辺理論」
人生で一度だけ、出席番号1番になったことがある。
私にとって苦しい一年だった。
トップバッター、先鋒、切込隊長、ファーストペンギン…
1番とは、かくも厳しいものなのか。
自分ではどうすることもできない苗字によって、学生生活のほとんどを出席番号一桁ですごした私は、いろいろと悩んだし、対策もした。
そして、生まれながらにして出席番号が永久に1番であることがほぼ確定している相川くんには、涙が出るくらい同情した(後にブラジル人留学生のアイウソン君の存在を知ってさらに泣いた)。
そして私(と、きっと相川くんやアイウソン君)は渡辺くんを憎んでいた。
ここに「相川ー渡辺理論」を提唱し、幼少期の出席番号が人格形成に与える影響について考えてみたい。
相川は常に緊張している
出席番号1番。
それは、クラスの中で1番最初の存在になるということだ。
相川は常に緊張状態にある。
なぜなら、授業中、先生に当てられる可能性が最も高いからだ。
いつどこで当てられるかわからない質問に対し、的外れな答えをしようものなら、クラスの笑いもの。
失敗は許されない。だから準備をするし、とっさの状況判断も求められる。
もちろんシンキングタイムなしに最高の答えを出すことは難しい。
だから、相川はホームランを狙わない。
とにかく先頭打者として塁に出て、次に繋ぐことが使命なのだ。
それがクラス全体にとっての最高の結果をもたらす。
つまり相川にとっての理想はイチローなのだ。
相川は常に基準になる
体力測定、予防接種、卒業証書授与、これも相川が最初だ。
説明がよくわからなくても、やれといわれたらやらねばならない。
相川は持ち前の能力で失敗のないパフォーマンスをする。
そして次に続くものたちは、相川が切り開いた道を利用する。
ただマネをする者もいれば、改良する者もいる。相川をフリにしてあえて逆をやる者もいる。
相川がゼロから切り開いた道は、その功績を讃えられることもなく「当たり前の基準」となる。
構造的に、先人である相川が後継者たちのパフォーマンスを越えることは難しい。
お笑いの賞レースでトップバッターが不利なのと同じだ。
よっぽどの相川でなければ優勝は難しい。
渡辺は窓の外を見ている
出席番号でいちばん後ろの渡辺は、座席の配置も最後なので、多くの場合、窓際のいちばん後ろの席に座る。
教室の全体が見渡せて、外の景色も見える、いわゆる主人公が座る席だ(相川は廊下側の一番前の席、モブ席だ!)
そして渡辺は授業中に先生にいきなり当てられる可能性がかなり低い。つまり緊張していない。
だから授業中にクラスメート達の様子をみて妄想を膨らませたり、
ぼーっと窓の外を眺めて虚ろげな表情を浮かべることができる。主人公みたいに。
渡辺は選ぶことができる
授業での発言も体力測定も予防接種も卒業証書授与も、渡辺は最後だ。
出席番号順に何かをする際、自分の番が来る頃には、その場でどう振る舞えばいいかの正解パターンはもうわかっている。
場の緊張感も薄まっている。なんならみんなちょっと飽きている。
注目度も低いので、気楽でもある。
そんな渡辺には2つの道がある。相川が否応なく求める「失敗しない人間」と、スーパースターへの道である。
すなわち、今までの全員のパフォーマンスを参考に、最適解をマネして穏やかに終わる道。
そして、データをコツコツと蓄積した上で、最後に大トリとしてホームランを狙う道。
最後だからこそ、皆の力を結集して解き放つことができる。
やってやろうと思うメンタリティをもつ渡辺は、松井のようなホームラン王になれる可能性を秘めている。
中村とか長谷川とか
相川は厳しい環境におかれているが、だからこそ準備をするし、瞬発力も鍛えられ、イチローになれる。
渡辺にも、主人公として松井になるチャンスがある。それに、渡辺は先生の気まぐれで最初に当てられるリスクも抱えているので、その対応力もつくだろう。
どちらの環境も、負荷があるからこそ成長もできる。
そういう意味で、緊張感やリスクから最も遠いのは中村とか長谷川のような、出席番号の後半の人たちなのかもしれない。
快適すぎる環境は、成長には不利、ということもあるかもしれない。
私(岩崎)は、基本的にトップバッターを参考にしつつも、そこに何かプラスしたいと思いつつ、時間がなくてよいアイデアが出てこず中途半端になり、高橋がしゃべってるあたりで「あぁ、こうしておけばよかったなぁ」と思えるアイデアが浮かんで後悔することを繰り返してきた。
自分で言い出したが、野球に詳しくないので誰タイプなのかよくわからない。
ともかく、出席番号が人格形成に与える影響は大きいのではないか。
探してみたけどその手の論文は見当たらなかった。
今回の試論では、どうしても立場が近い相川に同情してしまうし、渡辺の気持ちをきちんと理解できていない気はする。
広く意見が聞きたいところだ。