開発生産性可視化・向上の取り組みにおける投資対効果の考え方
こんにちは、Findyの@dai___youです。
本記事は、開発生産性 Advent Calendar 2022 カレンダー2の24日目の記事です。
23日目の記事は、DIGGLEエンジニアリングマネージャー岡崎さんの『DIGGLEの考える開発効率の上げ方』でした。
今回は、”開発生産性可視化・向上の取り組みにおける投資対効果の考え方”というテーマで書きたいと思います。
「開発生産性可視化・向上の取り組みをしていきたいと思っているが、なかなか進めることができていない(できない)・・・」と悩む方々の参考になればと思います。
開発生産性可視化・向上の取り組みを推進するには投資対効果が見込めるか?を示すことがはじめの一歩?
先日、開発生産性 Advent Calendar 2022の14日目の記事である”書籍『アジャイルメトリクス』をエンジニアサイドとビジネスサイドで輪読会してみた”で取り上げた『アジャイルメトリクス』内に書いてあった以下に関して考えたいと思います。
上記の通り、開発組織はステークホルダーに対して開発生産性可視化・向上の取り組みにおける投資対効果を示すことができず、取り組み自体ができないケースが多いようです(エイヤッで取り組みを開始できれば良いのだが、なかなかそうもいかない…。取り組むには一定ヒトの時間とコストをかける必要があるため)。
たしかに明確に(完璧に定量的に)投資対効果を示すことは難しいかもしれません。ただし、考え方を整理することで、一定の効果を見込めるのではないか?と言うことは可能だと考えています。
では、その考え方とは?
開発生産性可視化・向上の取り組みにおける投資対効果の考え方
開発生産性可視化・向上の取り組みによって得られる期待効果は大きく3つで開発組織のコスト削減・価値向上・ステークホルダーとの対話への活用だと考えます(あくまで考え方の参考です)。
コスト削減
開発生産性可視化によって得られる期待効果は大きく2つあり、①マネジメントコスト、②開発工数コストをどれだけ削減できるか、という観点です。
①マネジメントコスト
目標設定・評価・育成など、マネージャーがチームやメンバーの状況を逐次ウォッチして情報を得るのにかかるコストと生産性可視化の取り組みを通して得られる情報を比較するケースです。
②開発工数のコスト
開発プロセスの可視化によって、(あくまで一例ですが)開発でかかっているリードタイムに対して、これまでと同じ工数だが”やり方やプロセス”を変えることで開発工数を削減し浮いたコストと生産性可視化の取り組みによるコストを比較するケースです。
リードタイム改善による開発工数のコストについては、以下のような事例が出ているので、参考にして頂ければと思います。
👉ANDPAD:平均プルリクエスト クローズ時間 120h -> 23h
👉ZOZO:サイクルタイム 463h -> 95h
👉朝日新聞社:平均プルリクエスト クローズ時間 100h -> 24h
またリードタイム改善を進める中で、出せるアウトプット量が増加し、アウトプットひとつあたりのコストが低下したといえる事例もあります(本事例では”マージ済みプルリク数”をアウトプット量として捉えている例です)
👉Findy:2020年上期と2021年下期でアウトプット量が3倍
一人当たりのマージ済プルリク数(2020年上期->2021年下期):
144個ー>455個(開発アクティビティ3.2倍/量の向上)
※もちろんプルリク1つ1つの粒度や難易度などを勘案する必要はあります(とはいえ粒度は異なれど、実感値としての顧客への価値提供の量・スピードは向上しているというのが社内の声です)
平均プルリク クローズ時間(2020年上期->2021年下期):
79.6h -> 15.1h(開発効率5.3倍/スピードの向上)
価値向上
開発生産性を可視化した先で、より生産性向上の取り組みをすることによって得られる期待効果も大きく3つあり、 ①改善文化の醸成 、②開発者体験の向上 、③採用強化という開発組織にとってプラスの価値につながる、という観点です。
①改善文化の醸成
開発組織がデータに基づいた迅速な意思決定やコミュニケーションができる組織づくりができる
開発組織における課題の目線合わせがしやすく、迅速な改善アクションを実施できるようになる
②開発者体験の向上
可視化による改善文化の醸成によって、生産性が高く働きやすい環境(開発者体験がよい組織づくり)につながる
③採用強化
開発者体験がよいことがエンジニアの活躍・離職防止につなげる、また高い生産性の組織にエンジニアが集まりやすい→優秀なエンジニアの採用につなげる
👉NewsPicks:エンジニア採用は「開発者体験」と「候補者体験」を良くすれば上手くいく!
ステークホルダーとの対話(今後)
自社の開発生産性を経営レベルで認識しようとする企業は多いです(エンジニアの開発力がプロダクト成長に大きく影響を及ぼすため)
また、IR資料など外部市場とのコミュニケーションにおいて、エンジニア組織の採用人数や在籍人数だけでなく、エンジニア組織が保有する組織力を人的資本開示に組み込み、ステークホルダーと対話するケースは増えていくと思います
👉Findy代表note:ベンチャー企業の決算でエンジニア組織の成長を開示する時代
例えば、営業が一人当たりの売上高・利益を開示するように、開発組織も一人当たりデプロイ頻度/日(D/D/D)という指標を開発組織の開発力に使うケースがある
👉リンクアンドモチベーション:半年でd/d/dを8倍にした話
D/D/Dなど開発生産性の指標を加味すればまだ小さいスタートアップでもプロダクト成長が期待でき、結果としてバリュエーションが高くつく、というケースもおそらくでてくると思います
👉Coral Capital:スタートアップには「開発速度プレミアム」もある
👉バイセルさんはIR資料でFindy Team+ Award受賞を開発生産性の高さをステークホルダーへのアピールとして活用頂いていたりします
上記の通り、開発生産性可視化・向上によって得られる”期待”効果はあくまで考え方・仮説ですし、明確に効果がどれくらい出るのか、を示すことが難しいかもしれないですが、一定効果が期待できるのであれば、仮説検証をすることが大事なのではと考えています(幸いなことに、生産性向上の事例が世の中に数多くプラクティスとして転がっているので、それらを開発生産性指標を見ながら仮説検証し、効果測定していくことが大事だと思ってたりします)。
開発生産性指標をどのように収集・可視化するか?
結論、自前で開発生産性指標を収集・可視化する or 開発生産性可視化ツールを導入するか、です。
どちらを選ぶか?は、自前で開発生産性指標を収集・可視化するコストとその先で得られる期待効果の実現可能性と、開発生産性可視化ツール導入コストとその先で得られる期待効果の実現可能性を勘案する必要がありそうです。
自前で開発生産性指標を収集・可視化する
以下の事例のように、自前で収集・可視化する計測基盤をつくる企業も増えてきましたので、コストや期待効果の参考になります。
👉リンクアンドモチベーション:Four Keys Metrics を自前で可視化してみた
開発生産性可視化ツールを導入する
”開発生産性を測定する”ということ自体、海外では非常に盛り上がっている領域ではあります。
しかしながら、国内では開発生産性可視化ツール自体数少ないのが現状ですし、まだまだ伸びしろがあるというのが感覚です。ただし、Findy Team+など開発生産性可視化ツールを導入して、生産性向上に取り組まれる企業は確実に増えてきたと思います。
様々な企業様が開発生産性指標を用いて、開発における仮説検証サイクルを回されているため、プラクティスが蓄積されてきていたりもします(また同一の指標を用いるため、他社の指標を参考にすることも可能というのは自前にはないひとつ大きなメリットだと思います)。
まとめ
以上、”開発生産性可視化・向上の取り組みにおける投資対効果の考え方”を紹介しました(※本記事の内容はあくまで考え方の一例に過ぎないです)。
自前で開発生産性指標を収集・可視化する or 開発生産性可視化ツールを導入することで、開発生産性可視化・向上することで得られる期待効果が見込めるか、今後も考えていきたいと思います。
本記事に関して、気になる点あればフィールドバック頂きたいです!(お気軽にDMお待ちしております ー> @dai___you)
最後まで読んでいただきありがとうございました!
25日目最終日は、うるる 萩原さんの 『Four keys について取り組んでみたらエリートクラスに到達したので生産性について考え直してみたりのあれこれ』です!
皆さまよいクリスマスイブをお過ごしくださいませ〜〜〜
12/28 追記
開発生産性を考える前提として以下の記事を参照頂くことをオススメします