第十四話 ~チャーリズ・エルスとの格闘~
このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。
投稿14:チャーリズ・エルスとの格闘
セミナーの中で、かおるはだいさく先生の言葉に強く惹かれ、ウォーレン・バフェットの投資哲学が自分の心に響いていることを感じていた。企業との「つながり」を重視し、長期的な視点で信じた企業の成長を支え続ける。その姿勢が、かおるにとってはこれまで感じたことのない新しい視点だった。
しかし、その一方で、かおるの中にはもう一つの考えが浮かび上がっていた。
「でも、今まで私がインデックス投資をしてきたことだって、間違ってなかったはず…。ちゃんとした理由があったんじゃないか?」
かおるは、これまでインデックス投資に賭けてきた理由を思い出し始めた。手数料の安さやリスク分散だけでなく、その背後には一人の巨匠の存在があった。
チャーリズ・エルス。かおるがインデックス投資に踏み出したきっかけとなった一冊の本、『敗者のゲーム』の著者だ。
「エルスは、インデックス投資こそが成功への鍵だと説いていたんだ…。」
チャーリズ・エルスは、投資の世界でインデックスファンドの先駆者とされている。彼の『敗者のゲーム』では、個別株の売買やアクティブファンドの選定がいかに難しく、効率的ではないかを述べていた。そして、ほとんどの投資家は市場平均に勝つことができないとし、そのためには市場全体に連動するインデックスファンドこそが、最も賢明な投資手段だと主張している。
「市場平均に勝つことは非常に難しい。だからこそ、インデックスファンドに投資し、市場全体の成長を取り込むべきだって言っていた。」
かおるは、エルスの言葉に影響を受け、手数料の安さやリスクの分散を考慮して、S&P500に連動するインデックスファンドに投資してきたのだ。
「エルスの言っていることも、確かに間違っていない…。」
かおるは、バフェットの哲学に共感しながらも、これまで自分が信じてきたインデックス投資の理論に反対する気持ちにはなれなかった。インデックス投資は、投資の世界で成功するための合理的な手段だと思っていたし、今でも多くの専門家やファイナンシャルプランナーが初心者に推奨している投資法だった。
「バフェットが特別な才能を持っているからこそ、企業の成長を信じて長期的に投資できるのかもしれない。けれど、私は普通の投資家だから、エルスが言うように、市場全体に投資するのが一番だと思ってた。」
かおるは、バフェットのように個別の企業との「つながり」を感じる投資が、すべての投資家に適しているわけではないのかもしれないと感じ始めた。エルスが推奨していたインデックス投資は、シンプルでリスクを抑えながら市場全体に分散して投資できる賢明な選択肢だった。エルスが言っていたのは、「勝者のゲーム」ではなく、「敗者のゲーム」を避けることが、投資における成功の鍵だということだ。
「敗者のゲーム」とは何か。
チャーリズ・エルスは、投資を「敗者のゲーム」と表現している。つまり、多くの投資家が市場に勝とうとして間違った選択をし、結果的に市場平均以下のリターンを得てしまう現実を指摘していた。エルスは、個別の株を選ぶことやアクティブファンドの選定が、多くの投資家にとってはリスクが高く、確実性の低い選択肢であると警告していた。
「だから、エルスは市場全体に投資し、市場の成長を取り込むことが賢明だと言っていた。手数料の安いインデックスファンドが、私たちにとって最も効率的な手段だったんだ…。」
かおるは、今まで自分が信じてきたことがすべて無意味だったわけではないと再確認しようとしていた。バフェットの投資スタイルに感銘を受けつつも、エルスの教えを軽視することはできなかった。
「私は、どうすればいいんだろう…?」
バフェットの「つながり」を感じる長期投資と、エルスの「合理的なインデックス投資」の間で、かおるの心には葛藤が生まれ始めていた。
「次回予告:かおるの葛藤は続く。インスタやYouTubeで初心者に推奨されるS&P500のインデックス投資との狭間で、彼女が見つける次なる一歩とは?」