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第二話 ~つながりの意味~

このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。

つながりの意味

かおるは、節子の言葉がどうしても頭から離れなかった。

「つながり…?」

お団子を買うだけで、店員さんとのつながりが生まれるという母・節子の言葉が、どうしても理解できなかった。

効率的に考えれば、安い商品を買って節約する方が賢明だ。かおるは、長年、家計の管理や投資の判断でも「無駄を省くこと」が最優先だと信じてきた。


その週末、かおるは再び節子の家を訪れた。お団子の話が気になりすぎて、もう一度母にその理由を聞きたかったのだ。

「お母さん、どうしてそんな高いお団子をわざわざ買うの?安い方が効率的じゃないの?」

かおるは節子の家に入るとすぐに問いかけた。節子はお茶を入れながら、少し笑ってかおるを迎え入れた。


「あなたは、まだその理由がわからないのね。でも、無駄かどうかは、その人が何に価値を感じるかで違うのよ。私はお団子そのものにお金を使っているわけじゃなく、その裏にあるものにお金を使っているの。」

「裏にあるもの…?」

かおるは首をかしげた。
ますますわからなくなってきた。


「私にとっては、そのお団子を買うことで、あのお店の店員さんと毎回会って話す機会ができるの。それが、私の日常にちょっとした喜びをもたらしてくれるのよ。」

節子はそう言いながら、穏やかな笑みを浮かべた。


「でも、それってただの会話じゃないの?」
かおるは戸惑いながら言った。

「そう見えるかもしれないけど、その会話は私にとって、『誰かとつながっている』と感じる瞬間なの。特にね、年を重ねると、人と話す機会が減っていくものなの。だからこそ、そうした小さなつながりが、私には何より大切なのよ。」


かおるは、節子の言葉を聞きながら、自分の生活を振り返った。仕事に追われ、家事をこなし、効率的に動くことばかりを考えていた自分。

そこには、母が言うような「つながり」を感じる時間はほとんどなかった。


「つながりが大事だっていうけど、私にはそんな余裕がない。お金を稼ぐために仕事をして、投資で増やすことばかり考えてきたし…誰かと話すためにお金を使うなんて、考えたこともなかった。」
かおるは、つぶやくように言った。


「それが、今のあなたの生活なのね。でも、人生はお金を稼ぐことや増やすことだけじゃない。どれだけ効率的にお金を使えるかじゃなく、そのお金を通して何を得るかが重要なの。つながりや喜びが、人生を豊かにしてくれるのよ。」
節子は優しく語りかけた。


かおるは母の言葉に少しずつ理解が芽生え始めた。母が大切にしているのは、お団子そのものではなく、それを通じて得られるつながりと、そこから生まれる満足感や幸福感だった。

かおるは胸の中で、ふと何かが動くのを感じた。それは、今までの自分の価値観が揺らぐような感覚だった。母の生き方は、自分の効率を重視する考え方とは全く違っていたが、そこには確かに「豊かさ」があったように思えた。


かおるは、ふと自分の投資スタイルを振り返ってみた。
インデックスファンドの手数料の安さや効率ばかりを追求してきたが、そこには何か「つながり」や「喜び」はあっただろうか…?少し疑問が湧き上がったが、それが何を意味するのかは、まだ明確ではなかった。


その瞬間、かおるの頭に、以前読んだウォーレン・バフェットの言葉がふと浮かんだ。

「長期的なつながりこそ、最大の財産になる。」

バフェットの投資哲学を思い出しながら、かおるは母の「つながりにお金を使う」という考えが、もしかしたらもっと深い意味を持っているのかもしれないと感じ始めていた。


「次回予告:かおるが母・節子から学び始めた『つながり』の重要性が、次第に彼女の資産運用に大きな変化をもたらすきっかけとなっていく。母の生き方とバフェットの教えが交差する瞬間とは?」



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