第十八話 ~本当の豊かさへの気づき~
このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。
投稿18:本当の豊かさへの気づき
セミナーも終盤に差し掛かり、かおるは心の中で自分に問いかけていた。インデックス投資は合理的で手堅い。エルスが広めたこの投資手法は、市場全体に投資することでリスクを分散し、長期的に安定したリターンを得られる。それがこれまでのかおるの選択だった。しかし、心のどこかでは物足りなさが残っていた。
「インデックス投資をしていて、私は本当に幸せを感じているんだろうか…?」セミナーのタイトル「お金が幸せをもたらしていないなら、それはおそらくその使い方が間違っている」が、かおるの心に響いていた。
セミナー前半で、だいさく先生が語ったバフェットの投資実績がふと思い浮かぶ。
「そういえば、バフェットはS&P500をはるかに超えるリターンを出していた…。」
かおるはそのときは深く考えなかったが、今になってその言葉が意味するものの重みを感じていた。インデックス投資の堅実さとは別の、企業との「つながり」や「信念」を大切にする投資の姿が浮かび上がってきた。
かおるは再び手を挙げた。
「先生、バフェットが1980年代からコカ・コーラに投資し続けていると聞きました。その長期投資で、彼はどれくらいのリターンを得たのでしょうか? インデックスを超えるリターンというのが、どれほどのものか知りたくて…。」
会場の参加者たちも、かおると同じように興味を持っていたようで、注目しているのがわかる。
だいさく先生は少し笑顔を浮かべ、スライドを操作してコカ・コーラの事例を示した。
「バフェットは、コカ・コーラに1988年から投資を始めました。当時、バークシャー・ハサウェイが購入したコカ・コーラの株価は、約2.5ドルでした。そして彼は、その株を今日まで売らずに持ち続けています。現在のコカ・コーラの株価は60ドルを超えています。つまり、彼の投資はこの30年以上で、株価だけでも24倍以上に増えています。」
かおるの心に、その数字が強く響いた。
「24倍…?」
「しかし、バフェットが得たのはこれだけではありません。コカ・コーラは配当金を出し続けています。バフェットは、その配当金を再投資せずに受け取り続けているんです。現在、バークシャー・ハサウェイがコカ・コーラから毎年得ている配当金は約7億ドルに達しています。これは、彼の元々の投資額の数十倍にもなります。」
会場に軽いざわめきが起こった。かおるも、そのリターンの大きさに圧倒されていた。
「つまり、バフェットは、単に株価の上昇だけでなく、配当金を通じても膨大なリターンを得ているんです。彼がコカ・コーラを手放さずに持ち続けてきた理由は、単に利益を追求するだけではありません。彼は、この企業の成長を信じ、その成長を支えることで、企業との長期的なつながりを築いてきたんです。」
かおるは、だいさく先生の説明を聞きながら、心に一つの答えを見つけ始めていた。
「インデックス投資が悪いわけではない。でも、バフェットがやっているのはそれ以上のこと…。企業を信じて、長い時間をかけてその成長を支える。だからこそ、彼はインデックスを超えるリターンを得ているんだ。」
だいさく先生はかおるの反応を感じ取り、続けた。
「バフェットの投資が素晴らしいのは、単にお金を増やすだけではなく、その過程で企業とつながり、その成長を見守り続けることです。そしてその結果、インデックス投資では得られない、深い満足感とともに、実際のリターンも大きく上回るんです。」
かおるは深く頷いた。
「お金の使い方が、私の幸せに繋がるってことですね…。バフェットのように、信じられる企業を支えることが、私にとっても豊かさを感じられる道かもしれない。」
だいさく先生は笑顔で応えた。
「そうです、かおるさん。お金はただ増やすだけではなく、その使い方が本当に重要です。お金を通じて、企業や社会とどうつながり、何を生み出していくか。それがバフェットの投資哲学であり、その結果として得られるリターンが、インデックス投資を超える豊かさと満足感をもたらすのです。」
かおるの心は、バフェット流の投資スタイルに向かって大きく動き始めていた。
「私は、バフェットのように信じられる企業を支えたい。そして、その企業とともに成長しながら、自分自身も豊かさを感じたい…」
セミナーが終わりに近づいていたが、かおるの心には確かな変化が生まれていた。インデックス投資の安定性と合理性は否定しないが、それ以上に彼女が求めていた「つながり」と「満足感」がバフェット流の投資にあることを強く感じていた。
「次回予告:かおるがいよいよ投資スタイルを変える決断を下す。バフェット流の投資スタイルに向けた第一歩を踏み出す瞬間が訪れる!」