第五話 ~母との会話~
このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。
投稿5:母との会話
ある日、かおるは久しぶりに母・節子の家を訪れた。節子はいつものようにお茶を準備し、穏やかな笑顔でかおるを迎えてくれた。
「最近どう?」
節子は、かおるが座ると同時に優しく問いかけた。
「うん、忙しいけど順調よ。子供たちも元気だし、仕事もなんとかやってる。」
かおるはそう答えながらも、心の中にある不安を打ち明けたい気持ちでいっぱいだった。
「お団子、食べる?」
節子はテーブルの上に、いつものお団子を用意していた。
母がわざわざ昔から通うお店で買ってくるという、あの高いお団子だ。
「うん…でもね、お母さん、少し話したいことがあるの。」
かおるはお団子を一つ手に取りながら、迷わずに話し始めた。
「最近ね、なんだかいろんなことがわからなくなってきたの。お金のこととか、投資のこととか。インデックス投資を続けてるんだけど、YouTubeやインスタでいろんな情報が流れてきて、結局何が正しいのかわからなくなってきたのよ。」
節子はじっとかおるの話を聞きながら、静かに頷いた。
「真司もね、効率的な投資が一番だって言ってるけど、私は少し違う気がしてきたの。手数料の安さとか、効率ばかりを考えてるけど、それだけで本当に私たちの未来が守れるのか…もっと大事なことがあるんじゃないかって。」
節子はお茶を一口すすり、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「かおる、あなたはずっと頑張ってきたわよね。家族のために、効率的にお金を使って、投資だってしっかりやってる。それは立派なことよ。でも、たまには自分の心の声に耳を傾けることも大事なのよ。」
「心の声?」
かおるは思わず聞き返した。
「そうよ。効率だけを追い求めていると、心が置き去りになってしまうことがある。私が昔からあのお店でお団子を買っているのも、ただの贅沢じゃなくて、そのお店の店員さんとの会話が私の心を満たしてくれるからなの。」
かおるは、以前母が話していた「つながり」の意味を思い出した。
「でも、それって投資と何の関係があるの?」
かおるは、まだそのつながりが理解できずにいた。
「投資だって、お金を増やすだけのものじゃないの。あなたがどう感じるか、何に価値を見出すかが大切なのよ。効率だけを追い求めていると、本当に大切なものを見失ってしまうかもしれないわ。」
かおるは、母の言葉を静かに噛みしめた。
「でも、私はどうしたらいいのか分からないの。効率だけじゃないって分かっても、投資ってそんなに単純じゃないし…。」
「そうね、すぐに答えが出るわけじゃないわ。私も若い頃はお金のことで迷ったものよ。でも、大事なのは焦らずに、自分の価値観を大切にすることよ。」
節子はかおるの肩にそっと手を置いた。
「ありがとう、お母さん…少し楽になったわ。でも、もっと学ばなきゃいけない気がする。」
かおるは、母の言葉に感謝しつつ、これからの自分の道を模索する決意を新たにした。
「うん、焦らなくていいのよ。自分のペースでいいからね。」
かおるは、母の家を後にしながら、心の中で新たな決意を固めた。今の自分が立ち止まってしまっている理由は、情報に振り回されているだけではなく、自分の考えや哲学をまだしっかりと持てていないからかもしれない。
「もっと深く学び、自分なりの答えを見つけなきゃ。」
かおるは、次のステップへと進むための道筋を少しずつ見つけ始めていた。
「次回予告:かおるが自分の道を模索し始めたことで、彼女の考え方に変化が訪れる。効率だけではない、お金との向き合い方とは?そして、夫・真司との間で再び議論が交わされる…。」