第十三話~効率の罠とバフェットの驚愕の実績~
このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。
投稿13 効率の罠とバフェットの驚愕の実績
だいさく先生のセミナーは、進むごとにかおるの心に大きな波を立てていた。
今までの自分がどれだけ「安い手数料」という言葉に囚われていたのか、そのことに気づき始めたからだ。
「手数料の安いものを選ぶことが全てではありません。手数料の安さを重視するあまり、本当に大切なものを見失っていないでしょうか?」
だいさく先生の問いかけが、かおるの胸を深く刺す。
「インデックス投資は、確かに手数料が安く、リスク分散も効率的に行える選択肢です。しかし、その背後には、何かを感じ取ることができていますか?何かとつながり、その成長を見守る喜びを感じられているでしょうか?」
かおるは、だいさく先生の言葉に思い悩んだ。
彼女はこれまで手数料の安さを最優先に考えてきた。
特にS&P500のインデックスファンドに集中投資し、手数料の安さが最大の武器だと信じて疑わなかった。
「でも、それだけで本当に良かったのか…?」
その疑問が、セミナー中ずっとかおるの頭を巡っていた。
だいさく先生は、さらに深く話を続けた。
「ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイの投資成績を見てみましょう。彼は企業とのつながりを大切にし、長期的な視点で成長を支え続けています。そしてその結果、バークシャー・ハサウェイの投資成績は、S&P500をはるかに凌駕しているのです。」
その言葉に、かおるは愕然とした。
「バフェットの投資が、インデックスファンドよりも良い結果を出している…?」
かおるは驚きと同時に、心に重く響く感情を覚えた。
今まで自分は手数料にばかり囚われ、それが「賢い投資」だと信じてきた。だが、そのリターンがバフェットの長期投資に劣るとなれば、今までの自分の投資スタイルは何だったのかという疑念が浮かんできた。
「効率が全てじゃなかったんだ…」 かおるは、自分の心が揺れ動いているのを感じた。
これまで効率重視で合理的にお金を増やすことばかりを考えてきた。しかし、バフェットのように企業との「つながり」を大切にし、信じる企業を支え続けることで、インデックス投資以上のリターンを得ている事実に直面した今、かおるの考え方に変化が生まれ始めていた。
「バフェットは、手数料や効率の問題ではなく、企業とのつながりを重視していた。それが、S&P500を超えるリターンにつながっているんだ…」
かおるは、その事実に愕然とし、心の中でこれまで信じてきた効率主義の枠組みが崩れていくのを感じた。
「私がやってきたことは、投資じゃなくて、ただお金を増やす手段だったんじゃないか…」
だいさく先生はさらに、かおるが抱える疑問に答えるように続けた。
「効率的にお金を増やすこと、それ自体が悪いわけではありません。しかし、そのお金が何とつながり、どのように使われているかを見失ってはいけないのです。お金は人や社会とつながるためのツールであり、その使い方によって本当の豊かさが生まれます。」
かおるは、母・節子が「つながり」を大切にしていたことを思い出した。
お団子屋さんで高いお団子を買うことで、人と人とのつながりを感じ、そこに豊かさを見出していた節子。
それに対して、自分は効率を重視するあまり、何も感じられず、ただ数字に追われるだけの生活をしていた。
「私には、つながりが足りなかったんだ…」
かおるはそう思い、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
「バフェットのように、企業とつながり、その成長を見守ることが、本当の投資なんだ。」
セミナーは続いていくが、かおるの中で一つの大きな転機が訪れようとしていた。
「次回予告:かおるがセミナーを通じて、自分の投資スタイルを見直し、真の投資とは何かを考え始める。効率重視の罠から抜け出すための新たな一歩が見えてくる。」