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第十六話 ~市場平均に勝てない投資の原因~

このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。

投稿16:市場平均に勝てない投資の原因

セミナーの途中で、かおるは少し迷いながら手を挙げた。だいさく先生はその姿を見て、優しく微笑んだ。

「はい、かおるさん。何か質問ですか?」

かおるは、今抱えている葛藤を口に出した。

「エルスは、アクティブファンドが市場平均に勝つのは難しいと言っていますよね。市場のノイズや短期的な動きに振り回されて、結果的に多くの投資家が間違った判断をしてしまうって。でも…それって本当にそうなんでしょうか?アクティブファンドにはもっと優れた運用方法があると思っていたんです。」

他の参加者たちも興味深そうにかおるの質問に耳を傾けていた。同じ疑問を抱えている様子が見て取れる。
だいさく先生は頷きながら話し始めた。

「いい質問ですね。エルスの『敗者のゲーム』では、多くの投資家が市場平均に勝てない原因として、市場のノイズや短期的な動きに振り回されることが挙げられています。特にアクティブファンドの場合、それが顕著です。」
だいさく先生は、スライドを使いながら説明を続けた。

「例えば、アクティブファンドの運用者は、しばしば市場の動向を予測しようとします。相場が下がると感じたときに売り、上がると思ったときに買う。これが理論的には正しい投資行動のように見えるかもしれませんが、実際にはほとんどの投資家が、こうしたタイミングを正確に捉えることは非常に難しいんです。」

別の参加者が手を挙げた。
「でも先生、プロのアクティブファンドマネージャーでも市場の動きを予測できないんですか?」

だいさく先生は微笑んで答えた。

「そうなんです。エルスも指摘していますが、プロであっても市場の短期的な動きを正確に予測することは非常に難しいです。特に、メディアやニュースが不安を煽るたびに、投資家は慌てて売却に走ることがあります。そして下がったところで買おうとしても、ほとんどの場合ベストなタイミングで買うことはできません。」

だいさく先生は、スライドに表示されたグラフを指しながら続けた。

「これが歴史的なデータが示していることです。市場が下がった時に売り、再び上がるタイミングで買うのは簡単そうに見えますが、実際にそのタイミングを完璧に当てることができた投資家は非常に少ないんです。そのため、多くのアクティブファンドが短期的な市場の動きに振り回され、結局のところ市場平均に勝てないことが多いんです。」

かおるは、その説明を聞きながら深く考え込んだ。
「じゃあ、インデックスファンドはどうなんですか?手数料が安いし、リスクを分散できる。それがエルスの提案だったはずです。」

だいさく先生は頷きながら答えた。
「そうですね、エルスが提唱するインデックスファンドは、まさにこの問題を解決するための手段です。インデックスファンドは市場全体に投資するので、個別の企業のリスクに左右されず、長期的に市場全体の成長を享受できます。そして何より、手数料が安いため、複利の効果を最大限に活かすことができるんです。」

参加者たちが頷きながら聞いている中で、だいさく先生はさらに深く話を続けた。

「エルスが言っていることは、非常に合理的で、多くの投資家にとって有効です。市場のノイズや短期的なニュースに振り回されず、インデックスに投資して市場全体の成長を享受する——それが長期的な成功への鍵だということですね。」

かおるは再び手を挙げた。
「でも、バフェットは違うんですよね?彼は個別の企業に投資して、それでも市場平均を大きく上回るリターンを上げている…。」

だいさく先生は頷き、笑顔で答えた。

「そうです。バフェットのような投資家は、エルスが言う『ほとんどの投資家』には該当しないんです。バフェットは、企業の成長を長期的に支え続けるという信念を持ち、それを貫くことで、インデックス以上のリターンを上げている特別な投資家なんです。」

かおるは、だいさく先生の説明を聞きながら、バフェットとエルスの間で揺れ動く自分の気持ちを再確認していた。市場平均に勝つことがいかに難しいかを理解しながらも、バフェットの成功例が頭から離れなかった。

「私はどちらを信じて、どう行動すればいいんだろう…?」

「次回予告:だいさく先生のセミナーが進む中、かおるはエルスとバフェットの哲学の間で揺れ続ける。彼女が見つける新たな気づきとは?」


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