第十七話 ~お金と幸せの本当の使い方~
このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。
投稿17:お金と幸せの本当の使い方
セミナーも終盤に差し掛かり、かおるの心の中で様々な思いが交錯していた。エルスのインデックス投資がいかに合理的で効率的な手法であるかは理解している。だいさく先生の説明も納得のいくものだった。しかし、それでもかおるの胸の内には、ずっと引っかかるものがあった。
「インデックス投資は、確かに手堅くて合理的。でも、正直なところ、私はそれで幸せを感じているんだろうか…?」
ふと、セミナーのタイトル「お金が幸せをもたらしていないなら、それはおそらくその使い方が間違っている」が頭をよぎった。まさにその言葉が、かおるの今の気持ちを表していた。
かおるはもう一度手を挙げた。
「先生、インデックス投資が合理的であることは理解できました。でも、私は正直、インデックス投資をしていて幸せを感じていない気がします。確かにお金は増えているけれど、何かが足りないんです…」
だいさく先生はかおるの言葉を静かに聞き、少し微笑みながら答えた。
「いい視点ですね、かおるさん。お金を増やすことだけが目的ではなく、そのお金をどう使うか、そしてどんな意味を持たせるかが大切です。インデックス投資は、チャーリズ・エルスが広めたとても合理的な手法です。市場全体に投資することでリスクを分散し、手数料を抑えることができる。しかし、かおるさんが感じているように、ただお金を増やすだけでは、本当に幸せを感じられないこともあるんです。」
かおるは、その言葉を聞きながら、自分の心に問いかけた。
「確かに、インデックス投資は手数料が安く、リスクも抑えられる。でも、心のどこかで物足りなさを感じている。もっと違う使い方があるんじゃないかって…」
だいさく先生は、かおるが考え込んでいるのを見て、優しく続けた。
「では、かおるさんにとって、本当に大切なお金の使い方とは何だと思いますか?」
かおるは少し戸惑いながらも、ゆっくりと答えた。
「もしかしたら、お金を使うことで人とつながり、社会に何かを貢献することなのかもしれません。インデックス投資は安全で、増えるのは確かだけど、それが私にとって本当に意味のあることなのか…。バフェットのように、企業を信じてその成長を応援する投資の方が、もっと自分にとって豊かさを感じられるのかもしれない。」
だいさく先生はかおるの答えに深く頷いた。
「そうですね、かおるさん。お金はただ貯めるだけではなく、どのように使っていくかが本当に重要です。バフェットは、企業とのつながりを大切にし、その成長を信じて長期的に支え続けています。それこそが彼の投資の本質であり、彼がインデックス投資を超えるリターンを出している理由でもあります。お金をどう使い、どんな意味を持たせるかが、最終的にはその投資がもたらす幸せに繋がっていくのです。」
かおるは、だいさく先生の言葉に耳を傾けながら、自分が今まで求めていたものが何であったのかに気づき始めていた。
「私は、ただお金を増やすことだけを考えていた。でも、本当に私が欲しかったのは、お金を通じて自分が何かを支え、つながりを感じることだったのかもしれない。そして、それを実現できるのが、バフェット流の投資なんだ…」
かおるは、今まで感じていた違和感の正体に気づいた。インデックス投資は合理的で、確実にお金を増やしてくれる方法だった。しかし、その方法では自分が求めていた「幸せ」を得ることができていなかったのだ。
「お金の使い方が、間違っていたんだ…」
かおるの中で、はっきりとした答えが見えてきた。お金を増やすこと自体ではなく、そのお金をどう使い、誰とつながるか——それこそが、彼女にとって本当の意味での豊かさをもたらす道だったのだ。
「バフェットのように、私は信じられる企業を応援して、社会に何かを還元する投資をしたい。それが、私が求めている幸せに繋がるんだ。」
だいさく先生は、かおるの表情の変化を見て静かに頷いた。
「かおるさん、あなたが今感じているその気づきが、これからの投資やお金の使い方に大きな影響を与えるはずです。お金は、ただ効率的に増やすだけでなく、それを通じてどう社会とつながり、どんな意味を持たせるかが大切なんです。」
かおるは、だいさく先生の言葉に感謝しながら、心の中で決意を固めていた。
「次回予告:かおるがついに自分の投資哲学を見つける。インデックス投資との決別か、それとも新しい投資スタイルへの第一歩か?かおるの選択が明らかにされる。」