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2024年中日ドラゴンズドラフト指名戦略(1)ここ数年のドラフト戦略の功罪

当コラムは、中日ドラゴンズ2024年のドラフト戦略について、中高大の10年間を暗黒時代の中日に捧げ続けた変態大学生が分析したものです。特に何の特徴もない大学生が書いた文章ですが、首脳陣・編成批判等もないとは言えません(めっちゃあるよ)ので、そのような類の内容が苦手な方は閲覧を避けていただけると幸いです。


近年のドラフト状況分析

近々3年間の立浪ドラフトを振り返る

当章では、立浪監督就任後のここ3年のドラフトについて振り返りっていく(前提として21年ドラフトは立浪監督は携わっておらず、立浪監督の見る目的なものを批評するものではないことは明言しておきたい)
ここ数年のドラフトでは、特に上位~中位にかけて我々のような一般素人が高評価をした選手を中心に指名するというよりも、立浪和義監督、またはスカウト陣が評価した独自路線を歩むことが多く、「決め打ち・繰り上げ」が目立つ内容で、2年連続最下位の恩恵(?)を活用できているかどうかは微妙なドラフトといえる。

2021年
1位 ブライト健太 外野手 大学生
2位 鵜飼航丞 外野手 大学生
3位 石森大誠 投手 独立
4位 味谷大誠 捕手 高校生
5位 星野真生 内野手 高校生
6位 福元悠真 外野手 大学生
寸評
平田・大島・福田ら主要野手の高齢化、外野に転向した根尾の伸び悩みなどを受け、外野手の打力不足をチームのウィークポイントと設定し、「BIG3は鵜飼、ブライト、正木でしょ。(3人は)横一線」という米村チーフの発言にもあった、即戦力外野手のブライト・鵜飼を上位指名。そもそも4年全国大会時までほぼ無名であったブライト健太(全国大会で西武1位の隅田からHR)と、大学レベルでも三振数の多さと粗さが目立った鵜飼が即戦力かと言われると疑問ではあり、両外野手共に二軍では類まれな成績を収めているものの、一軍では殻を破れずにいる。一方で、米村チーフがあげたビッグ3で唯一指名しなかった正木(ソフトバンク2位)が24年シーズンに一軍定着を果たしているのもまたもどかしい。
春キャンプでは「いやいや聡文(高橋聡文 中日OB)より上ですよ。」と落合コーチに言わしめた石森も3年目時点で一軍登板0にとどまり、即戦力ドラフトとはほど遠い内容にとどまっている。

2022年
1位 仲地礼亜 投手 大学生
2位 村松開人 内野手 大学生
3位 森山暁生 投手 高校生
4位 山浅龍之介 捕手 高校生
5位 浜将乃介 内(外)野手 独立
6位 田中幹也 内野手 大学生
7位 福永裕基 内野手 社会人
育成
1位 松山晋也
2位 野中天翔
3位 樋口正修
寸評
シーズンオフにこれまで主力を担ってきた京田・阿部両内野手をトレードで放出し、二遊間のレギュラーポジションを開け、二遊間候補の大学生含む内野手をなんと同時に4名指名(濱は後に外野転向)。ドラフト一位の仲地は直前まで監督・チーフの口からほとんど出ていない沖縄大の投手ということもあり大きなサプライズとなった。ただし今回は21年ドラフトとは異なり、ルーキーイヤーこそ苦しんだものの、2024年シーズンでは村松はショートのレギュラーポジションを担い、福永はファースト・サード・レフトと複数ポジションを守りながら、クリーンアップを担っている。田中は終盤失速したものの112試合出場を果たした。育成一位の松山は23年シーズン半ばに支配下登録され、36試合で防御率1.27という驚異的な活躍を見せ勝ちパターンに定着、24年シーズンは8回の男を任され最優秀中継ぎ投手を獲得した。仲地も怪我がちではあるもののプロ初勝利を挙げ、伸びしろの大きさを見せるなど、この三年間では最も成功している(24年オフ段階) ドラフトといえるだろう。一方で3位森山は4月から二軍でローテーションを担い天井の高さを見せたものの、左肩痛を発症し長期離脱が発表され、オフに育成契約を結んだことは議論を呼んだ。
2023年ドラフト
1位 度会隆輝 外野手 社会人→草加勝 投手 大学生
2位 津田啓史 内野手 社会人
3位 辻本倫太郎 内野手 大学生
4位 福田幸之介 投手 高校生
5位 土生翔太 投手 独立
6位 加藤竜馬 投手 社会人
育成
1位 日渡騰輝
2位 菊田翔友
3位 尾田剛樹
4位 川上理偉寸評
ルーキーイヤーでは不発気味だった2022ドラフトの結果を受け、3年連続となる野手ドラフトを決行した。一位の度会を抽選で外すも2位で三菱重工Eastの津田、3位で仙台大学の辻本と、投手中心の指名を行うであろうという一般の予想とは異なり二遊間選手中心の野手ドラフトを展開するものの、一位の草加は新人合同トレーニング時に右ひじ痛を発症しトミージョン手術、津田辻本共に22年ドラフト組の台頭もありシーズンの大半を二軍で過ごすなど予想してた活躍を現状は見せられていない。また、開幕前にロドリゲスの獲得も相まって、津田はサード、辻本はセカンドを二軍では多く守ることとなり、編成側の一貫性のなさもうかがえる結果となった。育成ルーキーの尾田は開幕前に支配下登録を果たし、シーズンの大半を一軍で過ごしたものの代走の切り札としての役割を十分に担えたとは言い切れず、プロ初ヒットもお預けとなった。即戦力として期待が上がった土生、加藤両投手も一軍戦力どころか二軍でも登板数を増やせず、中日ドラゴンズ恒例の「あれ、あの選手って今何してんの?」軍団の仲間入りを果たしてしまった。

総括

中日ドラゴンズのドラフトは4つの問題点があると分析する。
①編成主導の独自路線
②バランス<チームのウィークポイントを重点的に抑える
③「投手陣は良い」という幻想
④守備走塁重視の野手指名

①編成主導の独自路線


 ここ数年特に顕著な傾向として、21年のブライト、22年の仲地を筆頭にドラフト上位においてもいわゆる「人気・有名選手」の指名を避け、スカウトが独自に追いかけてきた選手を順位を繰り上げて早め早めに指名する「独自路線」があげられる。スカウト陣の中で指名候補者リストをかなり絞り込んでいるのか、「この順位で〇〇が残っているから方針変更する」というようなことは上位ではほとんどなく(下位では22年に6位田中、7位福永と指名している)、22年の仲地はヤクルト、23年の津田は阪神が狙っている事から順位を繰り上げたという話ものちに出てきており、指名候補者リストの選手がよそに取られないように順位を上げて早めに指名するパターンが多い。一方で、立浪監督自身は打力強化はもちろんだが、たびたび先発陣の枚数不足を口にしていたものの、ドラフトにはいまいち反映されているとはいえない。
ドラフトにおける立浪の影響力は思ったより小さいのでは?と感じさせた例として、立浪五人衆なるものも発表されたものの、沖縄大の仲地を指名した22年ドラフトだ。

中日スポーツに掲載された通称「立浪五人衆」

「今年の6月か7月くらいに、たまたまユーチューブを見ていて、すごい良い投手だなと。それがきっかけだった」と立浪監督は後に語っているが、立浪監督の一目ぼれが指名につながったと考えると、この五人衆の発表と時系列の整合性が取れなくなる。仲地を指名するのにここまで大々的なブラフが必要だとも考えづらく、立浪監督がそこまで戦略的にマスコミを使うタイプではない(失礼)人なのも、中日ファンなら同意してくれるのではないだろうか。ここからは仮説だが、「監督自身が欲しかった選手が下の五人で、スカウト側が欲しがったのが仲地で、結果的に仲地の指名に至った」と考える方が自然である。

結果的に曽谷、吉村、森下は即戦力として十分な働きをしているのもまた皮肉だが、この例からも、監督がドラフト戦略に介入する余地は意外とないのではないかと推測でき、井上新監督になって余計にドラフトは編成主導のものになるだろう。

②バランス<チームのウィークポイントを重点的に抑える


 ①に続く内容になるが、ドラフト全体の戦略として、チームのウィークポイントを抑える事を重視する傾向にあると感じる。21年であれば、「打力のある外野手」22年、23年であれば「守備走塁重視の二遊間補強」と明確な意思と方針を持ったドラフトを行っている。ここ数年、1年目から活躍する新人はごくまれであるのだが、弱点であるポジションその結果一年単位で見ると同じようなタイプ・年齢の選手を複数人指名することもあり、いびつな年齢バランスを生み出してしまっている。これはここ3年に限った話ではなく年齢バランスを考慮することはほとんどなく、かなり極端なドラフトを展開しがちである。

③本拠地が生む「投手陣は良い」という幻想


 定期的にドラゴンズは解説者から「投手陣は充実していますが、得点力不足に苦しむ」という表現をされがちである。実際問題チーム得点数や失点数だけを観ればその通りなのだが、バンテリンドームという超投手有利の環境における成績には再考の余地がある。実際、24年シーズンの野手WARはリーグ3位の値を算出するなどデータ上では中日はむしろ野手のチームである。もちろんこのことを編成側が認識していれば特に問題はないのだが、ここ数年のドラフト傾向と、23年オフの野手4人獲得、岡野戦力外などの補強傾向を見ていると、投手力(特に先発)不足に対する危機感の薄さが垣間見える。
(追記)長年ローテーション投手として中日を支えてきた小笠原のポスティング申請が発表され、球団側も前向きに検討することが明らかになった。小笠原本人のメジャー志向は前々からささやかれていたことであり、ファンも半分察してはいた(今年の成績で行くの?有原式FAだ!NPBとMLBの経済格差だ!...以下略)ものの、小笠原は去年オフから球団側に話を通していたようで、すると23年ドラフトは24年末にて小笠原の離脱が濃厚だったうえで行われたことになり、編成の先見の明のなさが浮き彫りになり余計に絶望感が大きい。少し言葉を悪くすると、編成側は試合を見てるのか?と不安になってしまう。

④守備走塁重視の野手指名


 ドラゴンズは代々バンテリンドームという本拠地があってか、スラッガー候補の獲得には慎重であった。21年にはブライト鵜飼と打撃でプラスを生み出せる候補を1位2位で指名したが、いまいち戦力になっていないこともあってか22年23年は二遊間中心にかなり小粒な守備走塁に持ち味がある選手の指名に落ち着いた。
同じく広い本拠地を持つチームとして阪神タイガースがあるが、大山(16年)・近本(18年)・佐藤(20年)・森下(22年)と一位で指名した選手がスタメンを張り、2018年の最下位から5年でリーグ優勝を果たした。補強ポイントに関わらず、チームの中心となる野手を上位で指名する姿勢は参考にすべきではないだろうか。

野手指名の方向性に問題ないですか??

今年の各リーグのwOBA(その打者の1打席がどれだけチームの得点増に貢献したかという指標)日本人トップ10を見てみると、
セリーグ
村上(1位)
岡本(1位)
細川(5位)
牧(2位)
宮崎(6位)
森下(1位)
丸(3位)
佐藤輝(1位)
近本(1位)
野間(1位)
平均 2.2位
パリーグ
近藤(4位)
栗原(2位)
山川(2位)
森友(1位)
辰巳(1位)
浅村(3位)
万波(4位)
小郷(7位)
郡司(4位)
今宮(1位)
平均 2.9位
となっており、チームのコアを担えるような選手はやはり上位でないとなかなか取れないことがよくわかる。(もちろん上位で各チームはより良い選手を指名するため当たり前と言えば当たり前である)

中日の過去10年の上位指名野手を振り返ると、
友永(14年3位)
木下(15年3位)
京田(16年2位)
石垣(16年3位)
高松(17年3位)
根尾(18年1位 のちに投手転向)
石川(19年1位)
龍空(20年3位)
ブライト(21年1位)
鵜飼(21年2位)
村松(22年2位)
津田(23年2位)
辻本(23年3位)
となっており、高卒野手の少なさと守備走塁型選手の多さはやはり傾向としてあるといえる。唯一異質といえる21年ドラフトで指名した完全打撃型選手であるブライト健太と鵜飼航丞がブレイクしきれていないのが本拠地ナゴヤドームでの野手育成の難しさを示すとともに、上記傾向に拍車をかけてしまっている。

???「長々と語ってるけど、結局何が言いたいん???」

結論私は何が言いたいかというと、
「上位指名は補強ポイントの穴埋めよりも最大値が大きい選手を積極的に獲得しようぜ!(特に野手)」ということである。(大事)
次章以降、ドラゴンズの年齢・ポジション分布を観つつ今年のドラフト戦略について考えていきたい。



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