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最後の部室
自分でつけたタイトルを見るだけでげんなりしてしまうけれども、自分の中できちんと整理しておきたいからここに書き留めておく。
現在13時55分。卒業式&引越しの準備を手伝いに来た母と別れてその足で部室近くの郵便局に転居届を出しに行った。今日部室に来た建前上の理由は部で借りていたFM2を返しに行く。うちにあるの飲みかけのアマレットを後輩に寄贈する。そしてこれまた後輩に貸していた私のコンデジを取りにいく。以上の3つだ。
けれども本音は大学生としての最後の部室を21時に閉館するその瞬間まで堪能することにあった。若干の感傷に浸ってるいるが感傷に浸るのは今日までにしたい。
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誰かを呼ぼうか迷ったけれどもやはりやめた。私は誰かを呼んでここで惜しまれることを望んでるのではない。部室での日々は色々あった。部室でぼーっとして誰も来ないで終わる日、何かの用事でチラと部室に寄ってくれた人とちょろっと話して終わる日、そして私と同じく部室でぼーっとすることが好きな人と一日話して終わる日。どれも好きだった。生産性なんて皆無だけど、愛すべき幸せな日々だった。
それを手放さなくてはいけない時が迫っている。「暇だから部室にいこう」ができなくなるのはやはり寂しい。それが本音だけども、これを口に出して誰かと共有しようとすると余計に寂しくなる。だから言いたくない。本当にわがまま極まりない。
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4月から上田に行くことが決まって、一番に思ったのは今年は部室に行く道のあの桜並木は今年は見ることができなくなるなということだ。そもそも社会人になってくる時間ないだろうというのはごもっともな話だが、私はあの桜並木が大好きだったのだ。今年は最初の実習先が東京であれば、あの桜の下のベンチでお酒飲みたいなと思ってたんだけどもそれはできそうにない。
人間関係も含めてだが自分にとって愛おしい存在であるほど、それがなくなった時の喪失感は凄まじい。こんなことなら最初から愛おしいという感情なんてなければ良いのにと思わない時もないわけではなかった。
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そんなことを今日部室にきても思ってしまうだろうなと思ってお守りとして持ってきた本がやはり役に立った。乙一さんの「陽だまりの詩」という短編小説だ。あらすじは省略するけれども、私はこの中の
「心が組み込まれていなければ、鳥の巣を眺めて楽しむことも、コーヒーの苦さに顔をしかめることもなかった。ひとつひとつの世界の輝きに触れることは、どんなに価値のあることでしょう。そう考えると、私は、胸の奥が悲しみで血を流すことさえ、生きているというかけがえのない証拠に思えるのです。」
という言葉に大学生生活の中で何度も救われた。
この部にいて感じたことは喜びや幸せだけではなかった。時には苦しさや虚しさもあった。自分の中の醜い部分をまざまざと見せつけられ向き合わなければならず辛い時もあった。(しかも結局最後まで向き合えなかった)
でもこの場所で、そしてこの場所で繋がった人との関係性の中で感じたものを否定して、ないものにすることはできない。確かに全て私の人生に価値があることだった。かなり大袈裟で綺麗ごとと思われるかもしれないけど、彩りと輝きに満ちた日々だった。
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だからそれなりに時間はかかるかもしれないけど、この日々はこの日々で無理に忘れようとせず宝物のように大切にしまっておいて時々愛しむくらいの距離でいれたらなと思う。
そして自分自身で選び取った新しく始まる日々も人との関係性も、この思い出に負けないくらい良いものにしていきたいと思う。
20時になった。部室棟が締まる1時間前だ。今日は一人で部室を過ごすことになると思っていたけれど、結局意外と何人も来た。来た人と他愛のない話をしたり、本を読んだりした。いつもの部室での日々だ。21時まで部室にいようと思ったけれど、大学の近くの名物ラーメン屋に行ったことがないということで部室滞在は早めに切り上げてそこに行くことにした。桜はまだ咲いてないけど、帰りは最後に一杯だけベンチで飲んで帰ろうと思う。
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思い出の地ではなくとも、どこにいてもきっと桜は変わらず綺麗だろう。
おわり。