第三回「ムビシナ」参加シナリオ
こちらは第三回「同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ」「ムビシナ」へと投稿させていただくシナリオです。
今回の題材は「エヴァンゲリヲン新劇場版:序」。
使用システムはまさかの「ゆうやけこやけ(追加サプリメント「よいやみこみち」使用)」となっております。
それでは、下部よりどうぞ!
『私の「大事な/可愛い」あの子』
・登場人物
難しい年頃の女の子「飛鳥井シキ」
縫いぐるみの付喪神「マキナ」
子供を拐う(?)幽霊「ジン=ヴァッカス」
・必要時間
2~3時間を想定
・【ふしぎ】と【想い】
このシナリオで語り手が各[場面]で使える【ふしぎ】は20点、【想い】も20点です。
・物語の概要
縫いぐるみの付喪神のマキナは、かつての持ち主である女の子が町にやって来るということで浮かれていました。人間の姿で彼女の友達になろうと思っていたのです。
ところがマキナは、うっかり女の子ことシキの大事な音楽プレイヤーを壊してしまいました。びっくりしたマキナはその場を逃げ出してしまい、変化たちに謝りに行くのに付いてきて欲しいとお願いします。
ですが、シキは町で最近噂になっている不気味な建物に姿を消していて……?
・語り手の準備
このシナリオには、以下のNPCが登場します。
▼難しい年頃の女の子「飛鳥井シキ」
へんげ0 けもの1
おとな0 こども3
お話の舞台となる町に昔住んでいた14才の女の子。
お母さんが病気になってしまったので、治療に専念する為に三東町に帰ってきました。
本当は心の優しい女の子なのですが、ついつい体の弱いお母さんや仕事の忙しいお父さんを心配させまいと強がっている内に、強い言葉を使いがちになってしまっています。
母親から貰ったお猿の縫いぐるみをとても大切にしていましたが、町から引っ越す当日に無くしてしまったことを今でも気にしていて、物を過剰なくらい大切にするところがあります。
▼縫いぐるみの付喪神「マキナ」
へんげ4 けもの2
おとな0 こども2
【弱点】
《ぼろぼろ》 《われもの》 《おとしもの》
【追加特技】
《がらくたぎょうれつ》 《こころのうつわ》 《しあわせ》
シキが子供の頃に大切にしていたお猿の縫いぐるみの付喪神。シキのお婆ちゃんからお母さんへ、お母さんからシキへと受け継がれてきた、意外と由緒のある縫いぐるみです。
シキのことをとても好ましく思っていて、内心「姫」と呼んで慕っていたのですが、付喪神として動き出せるようになった日とシキの引っ越しが重なってしまい、浮かれて外で遊んでいる間に離れ離れになってしまいました。
シキが町に帰ってくると知って、人間に化けて仲良くしようと考えていたのですが……。
▼子供を拐う(?)幽霊「ジン=ヴァッカス」
へんげ5 けもの1
おとな1 こども4
【弱点】
《くらがり》 《おどろおどろ》 《くさり》
【追加特技】
《ひのたま》 《かなしばり》 《いえがみ》
町に突然現れた奇妙な建物館に住んでいる幽霊です。正確には「吸血鬼」というそうですが。
見た目は線の細い、中学生くらいの男の子なのですが、悟ったような物言いや、燕尾服のような格好をいつもしている変わり者です。
子供が時々ジンの住処に消えると変化達には噂されていますが、何故か土地神様達も彼には何も言いません。
最初の[場面]
場所:PCたちの溜まり場
時間:昼
どういう[場面]:マキナがPC達に協力を頼んでくる場面です。
PC達が集まって、今日は何をして遊ぼうかと相談しています。ボール遊び?鬼ごっこ?人間の子供たちに混ぜてもらうのもいいかも知れませんね。素敵な提案をしたPCには[夢]のやり取りをしてあげてください。
さて、思い思いの遊びで時間を過ごしていると、向こうから複雑な表情を眼鏡の下に浮かべた中学生くらいの女の子がやって来ます。
「あ、いたいた~!お願い!助けてほしいにゃ~!」
【へんげ】の判定で6以上の判定を出せば、彼女がお猿の縫いぐるみの付喪神・マキナが人間に化けているのだとPCは気付きます。【けもの】で判定して6以上なら、彼女がご主人様が引っ越しの時に置いていかれて、猫の変化に世話をされてきたからこんなしゃべり方だとPCは知っています。成功したPCはマキナとの【つながり】を好きな形で2得ることができます。
判定をしなかった、あるいは失敗したPCは、マキナと[出会い]の処理をしてください。この場合、マキナは自分のお世話をしてくれている猫の変化に話を聞いて、PC達を頼ってきたと語ります。
[出会い]が終わったら、最初の場面は終了です。[幕間]の処理をしてから、次の場面に移りましょう。
[場面]の終了:マキナとPCが[出会い]を終えたら[場面]を終えます。
第2の[場面]
場所:PC達の溜まり場
時間:夕方
どういう[場面]:PCがマキナの心情と、かつての持ち主であるシキとの関係を知る場面です。
マキナはかつての自分の持ち主、飛鳥井シキについて彼女に語ります。少し長いお話になりますので、その間に空は段々と朱色に染まっていきます。もし人に化けていないPCがいるなら、コスト無しで人間に変化できることを教えてあげましょう。
マキナがどんな風にPC達にお話するかはPC達の相槌などによって変わるでしょうが
・マキナはかつて飛鳥井シキという少女の縫いぐるみだったが、引っ越しの時に離れ離れになってしまった。
・お世話になっている変化からマキナが久し振りに町に帰って来ると教えられ、人間に化けて友達になろうとした。
・ところがシキとぶつかった拍子に、彼女の音楽プレイヤーが落ちて壊れてしまい、謝ることも出来ずに逃げ出してしまった。
この三点は伝えるようにしてください。
マキナはPC達に、謝りに行くのに付いてきて欲しいとお願いしてきます。1人だと心細いと言うマキナですが【おとな】で4以上を出すか、つながりのあるPCが何だか話が見えないことを問い質すと
「実は…謝ろうと思って後ろを付いていったんだけど、姫(※マキナはシキのことを姫と呼ぶのです)、最近有名な幽霊屋敷に入っていっちゃって…あそこに住んでる幽霊、子供を拐うって評判なんだよ~」
昼間から完全に人間に見えるように力を込めて変化をしていたマキナは、子供をさらうと噂されている幽霊が、もし[けんか]を仕掛けてきたらと怖じ気づいてしまっているのです。
マキナの心情とお願いを聞き終えたら、この[場面]を終わらせましょう。[幕間]の作業をしたら、第3の場面に移ります。
[場面]の終了:マキナが語り終えたら[場面]を終えます。
第3の[場面]
場所:PC達の溜まり場~幽霊屋敷前
時間:夜
どういう[場面]:マキナが本心とシキの現状を明かし、幽霊屋敷へと乗り込む場面です。
PCの中には、あくまでマキナが自分で行動すべきだと【おとな】で諭そうとしたり、【特技】でマキナの勇気を奮い立たせようとするかも知れません。
ですがマキナがPC達を頼るのは自分が怖いからだけではなく、シキを確実に救い出したいからです。マキナは懸命に何度も頼み込み、1人で動こうとはしません。
それでもPC達がマキナを助けるのを渋るなら、マキナは自分の宝物を色々と差し出して来ます。[駄菓子]や[玩具]、[がらくた]で好きなものをPC達に取得させるか、欲しいものが無ければ[夢]に変えてやり取りをしましょう。
PC達が同行を承諾するか、そこまで必死になるのは他に理由があるのではと指摘すると、マキナはぽつりぽつりとシキの事情について語ってくれます。
「姫のお母さん、あんまり体が強くなくて…入院をすることになったらしいんだよね。姫は甘え下手な子で、あたしと一緒にいた頃も強がったり平気だって言ったりして、後からあたしに辛いよ、寂しいよって語ったりしてた。
今度こそ、姫の支えになりたいの!姫が助けられるなら、誠心誠意謝れるなら、友達になるのは諦めても構わない!」
PC達の反応はどんなものでしょうか。ともあれ、幽霊屋敷の前までやって来ることになれば、この場面は終了です。[幕間]の処理を終え、いよいよ幽霊屋敷へと乗り込むことになります。
[場面]の終了:幽霊屋敷の前までやって来たところで、場面を終えます。
第4の[場面]
場所:幽霊屋敷
時間:夜
どういう[場面]:シキを探してジン=ヴァッカスと対決(?)する場面です。
PC達は【特技】を使って幽霊屋敷の情報を集めるかもしれません。その場合は自動で成功して、以下の情報を得られて構いません。
・ジン=ヴァッカスという少年の姿をした幽霊が住んでいる。
・子供が拐われて消えるという噂話が変化の間で流れている。
・何故か土地神様達は彼に注意をしたり立ち退かせたりをしない。
また動物の力を借りたり、物を動かす【特技】で中に入らず屋敷を調べようとするかも知れません。これは《いえがみ》で強化された《かなしばり》で阻止されてしまうので上手くいきません。シキの捜索の為には中に入り込むしかないのです!
屋敷の扉は、PC達が中に入ると決めた時点で「ギイィィィ…」と音を立てて内側に開かれます。これには4の強さでPCとマキナは[びっくり]してしまいます。マキナが逃げ出さないように、PC達は励ましたり、渇を入れたりしてあげましょう。
屋敷の中に入り込むと、灯りもついていないのに見通せる(実は《おにび》を使っています)室内の奥、階段の上に線の細い燕尾服姿の少年が立っています。彼こそが屋敷の主、ジン=ヴァッカスです。
「ようこそ、この町のモノノケ達。僕がこの屋敷の主だ。本来なら歓迎をしたいところだけど、今はお客さまの相手で忙しい。出直してもらえないかな?」
“お客さま”について尋ねれば、ジンはあっさりそれがシキであることを明かします。
「彼女は“大事なもの”を無くしてしまって傷付いているんだ。その傷を癒してあげることが君にはできるかい?」
マキナはそう問い掛けられ、音楽プレイヤーを壊して謝らずに逃げてしまったことを思いだし、即答できずに苦しみます。マキナとのつながりが3以上あるPCは、心からの激励や説得でマキナを奮い立たせることができます。それ以外のPCも【特技】や【おとな】の判定で6以上を出せば説得に参加できます。是非、空気を読んでこう声をかけてあげてください…「逃げちゃダメだ」と。
「なるほどね、自信がある訳だ。ならば彼女の心を開いてみせるといいよ…本当に望んでいるものが解るならね」
そう言うとジンは数歩後ろに下がり、暗がりからふらりとシキが現れ、マキナと向き合います。[場面]はここで終了、いよいよ[幕間]を挟んで最後の[場面]へ移ります。
[場面]の終了:シキとマキナが対面したら[場面]を終えます。
最後の[場面]
場所:幽霊屋敷
時間:夜
どういう[場面]:シキとマキナが和解する場面です。
さて、最後の場面について語る前に、ジン=ヴァッカスの正体について語っておきましょう。
実は彼は、土地神様達に頼まれて「人の子供と因縁のある変化の中を取り持つ」役割を与えられている、いわゆる神使…あるいはそう[使徒]と呼ばれる存在なのです。
土地神様達が彼を懲らしめないのは、そもそも悪いことをしていないからなのですね。
この現代社会、人が変化の存在を受け入れる器はとても小さいです。そこに「大切な人を守りたい」という変化達の思いを重ねる手伝いをして、少しでも関係が上手くいくようにするのがジンのお仕事なのです(当然、噂は彼が自分で流しています)。
今回の場合だと、音楽プレイヤーが壊れてしまって意気消沈していたシキを屋敷に招待し、やんわりと変化の存在を認めさせつつ、シキの強がりの原因の1つが無くしてしまった猿の縫いぐるみにあることを自覚させてくれています。
語り手はそれを意識して最後の場面を演出し、クリア後にこの情報を明かすか、後日談としてジン自身にPC達にこの事情を語らせてもいいでしょう。
マキナは恐らく、PC達からの応援を受けて音楽プレイヤーのことを謝ることは出来るでしょう。ですがシキは、その件については何とも思っていない等と言って強がろうとします。
・自分は物を大切にする性質ではあるけれど、それは本当に大事なものの代わりとしてだ。
・お母さんも含めて、本当に苦しいときほど大事なものは側に居てくれない。
強がりつつも、シキにこれらの心情を吐露させるようにしてください。
マキナは何度か挫けそうになりますが、シキが本当に望んでいるものを探ろうと言葉と誠意を尽くします。PC達も応援や【特技】の使用、あるいは推理などを働かせてマキナを助けてあげてください。
シキが真に望んでいるのは、無くしてしまった縫いぐるみとの再会です。PC達がマキナの正体を明かすことを警戒するようなら、人ならざることが《おどろおどろ》しいので一目で解るジンに対してシキが[びっくり]している様子がないこと(つまりシキに変化を受け入れる素地が既にあること)を仄めかしてあげましょう。
マキナが勇気を出して変身を解除し、再びシキの手の中に戻ることが出来ればこのシナリオはおしまいです。
もしPC達が【すごいふしぎ】を使いたがるようなら、音楽プレイヤーが直ったことにする等して完全にわだかまりを無くしても構いません。シキのお母さんの病気は流石に治せませんが、シキがマキナと再会したことで少しだけ素直になり、回り回って病気に良い影響を与えている…くらいなら描写をしても良いでしょう。
これにてシナリオは終了、人間だと偽るのではなく、ふしぎな友人として受け入れられたマキナがシキと仲睦まじく過ごす姿が、きっと町では見られることでしょう。勿論、PC達もシキと[出会い]の処理をして一緒に遊んでも構いませんよ。
[場面の終了]:マキナとシキが本当の意味で再開したら、場面を終えます。
後日談
PC達は薄々ジンが本当は良い幽霊だと気付いているでしょうが、ハッキリ確証を欲しがるようなら上でも上げた彼についての種明かしをしても良いでしょう。彼はPC達の知った真実について、黙っていてほしいとお願いしてくるでしょうが、さてPC達の反応は…?
場合によっては次のシナリオのカケラにしてもいいかも知れませんね…“破”という訳ではありませんが(笑)。
おしまい!
蛇足気味なあとがき
エヴァをモチーフにゆうやけこやけのシナリオを書くことになるとは、書いてる本人も思いもしませんでした。しかも、ほぼ最序盤の1シーンをこうまで拡張しようとは…マリアスの気配がするのは書いた人の趣向です、ご容赦ください(笑)。
ちなみに気付いていらっしゃる方が大半でしょうが、ジン=ヴァッカスは「馬鹿シンジ」のアナグラムです、全然馬鹿じゃないのは本家と一緒ですね。
それでは、貴重な機会をありがとうございました!
今度こそおしまい!
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