同性婚
僕の周りには、恋人とパートナーシップを結んだという人がちらほらいる。
ゲイ界隈で繋がっているSNSでも、同様に、パートナーシップを結んだという人たちを見かける。
愛を誓ったんだ、と感じる。
じゃあ、もし同性婚が合法になったら、結婚するのかな、とも考える。
同性婚が認められない理由はわかる。
日本国憲法第二十四条第一項で、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と謳われているからだ。
そこに、同性婚は含まれていない。
この憲法が施行されたのは、1947年5月3日だ。
当時の日本に、同性愛者がいなかったはずがない。
しかし、自分が同性愛者だと名乗る人も、少なかったに違いない。
そして、自分が同性愛者だと自覚する人も、少なかったに違いない。
認めてよって思う。
同性婚、認めてよ。
僕が現在、恋人がいて、その人と寄り添いたいという理由ではない。
婚姻でしか認められない権利を、同性愛者にも認めてほしいのが主な理由だ。
同性の恋人がいて、その人と一緒に暮らしていたとする。
毎日一緒にいて、仕事に出掛けて、帰宅してご飯を食べて、些細なことで喧嘩して、仲直りして、これからもずっと、一緒にいられたらいいなと考える相手がいたとする。
ある日、その人が事故に遭ったら、どうなるだろう。
想像してみてほしい。
自分の大切な人が、事故で病院に緊急搬送されるところを。
今のままだと、例えその人が亡くなったとしても、連絡を受け取るまでにかなりの時間を要する。
婚姻していたら、伴侶の死亡は、すぐさま知らせを受けることができる。
しかし、僕たち同性愛者は、婚姻できないため、その知らせを病院から直接受けることが難しい。
パートナーシップを結んでいるから大丈夫?
公正証書を作っているから大丈夫?
そんなわけない。
そんなものに、紙切れ以上の価値はない。
自分の愛する人の死に際に、会うことができないのが、今の日本だ。
これって、同性愛者は主張してはいけない権利なのか?
パートナーシップが盛んに取り上げられている。
でも僕は、パートナーシップを結んで良かった、という報告をほとんど目に(耳に)しない。
これから憲法を改正していくための足掛けとして必要なものなのかもしれないが、いくらパートナーシップを結んでも、効力がいまいちわからない。
想像してよ。
愛する人と一緒にいたいと願う姿を。
ゲイで税理士の知人がいる。
彼のところには、同じくゲイの人たちからの相談が入ってくるらしい。
パートナーが亡くなった。
一緒にしていた仕事、どうしたらいいんだろう。
仕事を立ち上げる際には、必ず主従関係が出来上がる。
主となる人は、ひとりしかできない。
その、主となる人が亡くなったら、従として働いていたパートナーは路頭に迷うことになる。
もし婚姻していたら、例えば主として働いていた旦那が亡くなっても、その跡を継いで嫁が仕切ることが可能だ。
その権利が認められている。
でも、同性だった、というだけで、何十年一緒に仕事をしていても、主となる方が死亡した場合、その仕事を継ぐ権利は主の家族にしかないから、パートナーが継ぐことはできない。
家族じゃないのだ。
同性カップルは、家族じゃないのだ。
何十年一緒にいても、同性というだけで、家族になれないのだ。
なんでだ。
想像してよ。
何十年と一緒にいるんだよ。
ずっと一緒にいたんだよ。
そりゃ喧嘩もしたさ。
でも、愛していたんだよ。
ずっと、ずっと一緒だったんだよ。
なんでだよ。
どうして家族になれないんだよ。
なんで。
冒頭に戻るが、同性婚が認められない理由はわかる。
憲法が改正されないからだ。
約80年ほど前につくられた憲法が、僕らを守って、僕らの前に立ち塞がる。
同性愛者って、そんなに悪なのだろうかって考えてしまう。
僕らに将来を考えることは許されていないのだろうかって、考えてしまう。
「いつ結婚するんだ」
実家に帰省すると、必ず言われる言葉。
「仕事が忙しくて相手なんて見つからない」
そう返事して逃げている。
嘘ではない、仕事が忙しくて、というか仕事が楽しくて、僕は恋愛をしたいと思わない。
だから恋人がいないというのは事実だ。
もしものことを考える。
もしも、僕に恋人がいたとして、同性婚が認められたのなら、僕は両親に、自分がゲイであることを打ち明けて、同性婚することを伝えられるだろうか。
たぶん、できない。
姉と妹には話せると思う。
けど、両親には、言えない。
失望されたくないんだと思う。
男として、家を守っていくことができない息子なのだと知られることが、怖いのだ。
孫の顔を見せることができないと認めさせるのが、怖くて怖くて仕方ない。
だからもし、同性婚が認められても、僕は一生、独りのままな気がする。
臆病だなって思う。
自分が同性愛者だと公言できる人を、羨ましいと感じる。
強いなって思う。
僕とはぜんぜん、違うんだなって。
そんな僕が主張すること自体、おかしいのかもしれない。
でも。
同性婚を認めることで、幸せになれる人は必ずいる。
だから、認めてよ。
僕が不幸を背負うから、誰かの笑顔を守ってよ。
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