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ロシアウクライナ情勢-ネオナチ発言について-

世界情勢の緊張感が急激に高まっている。
どうか事態が早急に収束することを願う。

1.はじめに

プーチン大統領がウクライナ侵攻の目的に「武装解除と非ナチ化」を挙げ、ゼレンスキー政権をネオナチと位置付けたとされた事について、「ユダヤ系のゼレンスキー大統領なのにネオナチ?」となるだろう。これについて陰謀界隈を観察した上で、一般に公開されている記事と検証してみた。なお、本記事の主旨は検証内容を共有するものである。


※今回はリンク含め事実関係が明確でない情報も含む。

プーチン大統領は報道は、「ウクライナの非ナチ化」にこだわっている。
この真意を解き明かすのは難しいという事を踏まえた上で、幾つかの角度から考察した。
彼の根底にあるのはロシア帝国時代への復古という野望、スラブ民族ウクライナの欧米型民主主義排除といったものがあるのかと個人的には考えている。

■プーチン大統領演説

http://en.kremlin.ru/events/president/news/67843

2.陰謀界隈に見られる主張

ウクライナ東部で起きている(とされる)ジェノサイド

分かりやすいものを紹介しておく。
元ウクライナ大使の馬渕氏の動画が出回っており、少なからずこれが影響を与えているようだ。
大使はトランプ推しで、バイデン氏が大統領就任後も「私の心の中ではトランプは今も大統領」と言ってしまう心酔ぶりもあり、Qアホノンをはじめ、ユダヤ陰謀論者、右派に人気が高く、プーチン大統領にも好意的だ(本人は親ロシア派ではないと発言しているが…)

陰謀界隈の発言

3.ウクライナ情勢を遡って見てみる

歴史的経緯から紐解こうと思えば、もっと遡るべきと思うが、今回は省略する(時間が足りない🙏)

<Newsweekより一部転載>


ウクライナのネオナチ勢力

現在のウクライナにネオナチと呼ぶべき勢力がいることは事実だ。極端な反ロシア政策を主張する極右民族主義政党「全ウクライナ連合『自由』」は、ネオナチ政党と目されており、その勢力はクリミア危機・ウクライナ東部紛争前夜の2012〜14年ごろに最高潮に達している。

2010年以降のウクライナでの極右勢力の台頭は欧米側からも懸念されており、ヤヌコーヴィチ政権崩壊に際して、アメリカなどが極右政党に接触していたことに批判があったのも事実。

しかし、現在の「全ウクライナ連合『自由』」は当時と比べると退潮傾向が大きい。もちろん政権に参画もしていない。ところがロシアでは、ウクライナの極右勢力が衰退すればするほど、ウクライナ政権のナチス化が強調されているという。つまり、ウクライナ政権へのロシア側の「ナチス化」批判は事実に基づいてはいないということができる。

中央政治はともかく、2月24日以前から戦闘が続いているウクライナ東部では、ネオナチ極右勢力が義勇兵として、ウクライナから独立を宣言した勢力と戦っていることが報告されている。この地域ではウクライナだけでなく欧州全体から反ロシア系の右翼が集まっており、ハーケンクロイツが掲げられたこともあったという。2015年には、ウクライナの準軍事組織であるアゾフ連隊がハーケンクロイツを掲げるネオナチであるという報道が、ロシアだけでなくアメリカでも出たことによって、アメリカ議会はアゾフ連隊に対する武器供与の支援を取りやめる決定を下した。

ただしこの地域で、ロシア側が主張するようなネオナチによるロシア系住民への虐殺や迫害が行われているという証拠はない。また上述のように、ネオナチの懸念がある団体に対しては、欧米諸国はむしろ支援を取りやめているのであって、NATO諸国によってネオナチが支援されているというプーチンの主張には根拠がないといえる。

ロシア(旧ソビエト連邦)は、第二次世界大戦(「大祖国戦争」)でナチスドイツと死闘を繰り広げた。その歴史はロシア人のアイデンティティの一つになっているので、一般論としては、国内のナショナリズムに訴えかけるには「ナチスとの戦い」は有効な物語といえる。従ってプーチンもその物語に固執しているのだろう。

https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2022/02/post-34.php

■右派セクター、ドミトリー・ヤロシュ(ヤロシ)党首

■ 全ウクライナ連合「自由」(スヴォボーダ)

ウクライナ政界における極右政党あるいはネオナチ政党と定義される。

■スヴォボーダ党創設者アンドリー・パルビー氏

国家安全保障・国防会議議長、ウクライナ最高会議議長等を務める。

4.アゾフ連隊について

もう少し掘り下げてみよう。

2014年9月、アゾフ大隊は大隊から連隊に拡張され、ウクライナ国家親衛隊に登録された。
この時、部隊はそれ自体の非政治化に取り組んだ。その極右指導部は去り、関連する活動家組織であるアゾフ大隊と協力 する全国軍団政党を設立。
アゾフ大隊の代表は、シンボルはスローガンІдеяНації(「国家思想」のウクライナ語)の略語であり、ナチズムとの関係を否定していると言う。2014年、連隊のスポークスマンは、部隊の約10〜20%がネオナチであると述べた。

2017年には、連隊の規模は2.500人以上のメンバーと推定されました。部隊の最初の指揮官は、ネオナチ社会国民議会とウクライナの愛国者を率いた極右ナショナリストのアンドリー・ビレツキーであった。初期のアゾフは、ウクライナの愛国者と右派セクターの支部であるヴァスィリキー、キエ フのリーダーであるヴォロディミール・シュパラが率いる内務省の特別警察会社。

アゾフのシンボルが「ナチズム」を彷彿させるみたいだが、アゾフ側は、単に文字の"N"と"I"が交差することを表していると否定し、ウクライナ語で「国民的思想」を暗示と説明している。
また、アゾフ連隊は公に外国人排斥を主張しているわけではなく、自分達はネオナチではないと主張している。隊員の個人的なイデオロギーとしてネオナチがいても、それが組織的なのかは別という事。
公にはネオナチを否定しているものの、陰謀論的には、中に入り込んでいるネオナチの隊員にコントロールされているというものだろう。

5.ジェノサイドについて


「ウクライナ内務省管轄の準軍事組織のアゾフ連隊が東部の親ロシア派が支配しているとされる地域でジェノサイドを行っている」主張について、前述の元大使の動画内で、「OSCE(欧州安全保障協力機構)で報告されている」と発言していたが、以下公式からは嘘だと否定されている。

■オデッサ虐殺

動画では「オデッサ虐殺」についても言及。
これについては、駐日ロシア連邦大使館アカウントもツイートしている。このアカウントはウクライナはじめ西側諸国が反ロシアのフェイクをばら撒いていると強く主張しているが、この内容の妥当性は不明なので注意して見て欲しい。

オデッサ事件は、ロシアメディアである"スプートニク"でさえ以下の書きぶりだ。

オデッサ地区裁判所は右派急進派の事件関与を示す「証拠は不十分」として検察庁に起訴状を差し戻した。


ロシア側のプロパガンダという指摘もある

<POLITIFACTから>
ドンバスの民間死者数推移をみると、今もなお虐殺が起きている事は読み取れないという指摘。

       -それはそれとして-

そのようなジェノサイドが有れば本当に酷い事だが、仮にそれが有ったとしても、今回のウクライナ侵攻を引き起こす正当性があるとは思わない。

6.さて、ネオナチ論争に話を戻そう

ウクライナに渡る右翼活動家も多く、アゾフ基地には欧米だけでなく中東など50カ国以上から17,000人以上が集まり、訓練を受けているとみられる。
アゾフ大隊の指定は国際的に物議を醸している。
アメリカ議会は2015年、アゾフを「ネオナチの民兵」と位置付け、援助を禁じる法案を可決した。
ところが、2016年、国防総省からの圧力で議会は法案を修正した。

理由としては、ナチズムは容認出来ないがウクライナ軍への支援とは別。ロシアからの侵略の方が脅威。アゾフをネオナチではないとしている。

ウクライナ国家親衛隊の支部として、アゾフは準軍事組織から国軍に変身した。「ネオナチ」の固定観念から自分自身を分離するためのその努力は、いくつかを確信させた。しかし、それでもかなりの数の批評家を引き付けている。

また、公安調査庁HPの国際テロリズム要覧に記載がある事から、「ウクライナ内務省管轄の準軍事組織のアゾフ連隊」が国のお抱えのネオナチ部隊だろうという界隈からの指摘もある。前述の通り、アゾフ大隊の指定は国際的に物議を醸した経緯があったため、そう見られても仕方ない面はたしかにある。
一方で、組織全体を「ネオナチ」という固定観念でレッテル貼りしている面もあるのではないか。

<Newsweekより転載>

ロシアの脅威に対抗するためにはアゾフ連隊や民兵の力が欠かせなかったからだ。ウクライナ政府に対する極右の影響力はアメリカなども認めている。実際、欧米はアゾフ連隊を「国際的ヘイトグループ」と位置づけながらも、これに訓練などの援助を提供してきた。

たとえウクライナ政府が極右に乗っ取られているとしても、それを理由にロシアが打倒していいかは話が別だ。
第一、白人極右を利用してきたのはウクライナだけでなくロシアも同様だ。2014年以来、ウクライナ東部ドンバス地方の分離独立を画策してきた勢力には、ロシアから流入した人種差別的な極右が数多く含まれている。その意味で、ウクライナ政府がネオナチならロシア政府もネオナチということになる。
さらに、たとえウクライナ政府が極右的だったとしても、今回のロシアによる呼びかけが「一般のウクライナ人のことを思いやって」でないのはいうまでもなく、そこにはロシア自身の利益がある。

https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2022/02/post-142_1.php

7.アゾフ連隊の支援者

アゾフ連隊の支援者であるオリガルヒの「イーホル(イホル)・コロモイスキー」はユダヤ系である。
コロモイスキーはウクライナ危機の際に私兵や私財を差し出してウクライナの秩序回復に貢献し、危機の直後にドニプロペトロフスク州の知事に任命。
ゼレンスキーと関係深いと言われている。
後述の「参考:日経記事」を参照。
ただし、現在もコロモイスキーがアゾフを金銭的に支援しているのかは疑問。離れているのではないか。

8.陰謀論的にみれば

ウクライナ、ロシアそれぞれに、西側諸国からの極右の私兵が入り込んでおり、ドンパチやっている所謂ネオコンの陰謀なのだという界隈からの主張がある。ロシア対ウクライナではなく、ロシア対ネオコン・西側諸国という構図。
プーチン大統領は、西側諸国及びバックにいる戦争屋ネオコンからウクライナを取り戻すというロジックであり、侵攻ではないという考え。

【参考】ぎよみどんさんのお言葉

9.ということで

陰謀界隈で指摘されているネオナチ問題は、

・事実として極右、ネオナチと呼ばれるような政党はあるが、近年は勢いが弱まり政権に参画していないという。
・軍組織のアゾフは、初期こそ極右やネオナチのイデオロギーを持つ指揮官が纏めてきたとされるが、
現在の公式見解としては、外国人排斥を主張しているわけではなく、ネオナチを否定している。
中には過激派もまだいるのだろうし、外国から極右の兵隊も来ている、だからといってだ。
・ジェノサイドは、OSCEに否定されている。
一方で、主にロシアのメディアからは、ジェノサイドの事実は明らかだと主張。ただ、その主張には、ロシア側のプロパガンダや、他の陰謀説にも見受けられる「真実は隠蔽されている」というレトリックだと推察する。トランプ不正選挙や国際金融資本なんかと同様に。

この記事👇は分かりやすいです

10.終わりに


ロシアの理屈で侵攻でないとしても、現状を見るにロシアが武力を行使しウクライナを侵攻していないと否定するのは極めて困難だろう。私はこのやり方に賛成出来ない。

11.参考

①ロシアの脅威下で新興財閥と闘うウクライナ大統領

<日本経済新聞より一部転載>

19年の大統領選に勝利して以降、ゼレンスキー氏の支持率は急落したことを受け、オリガルヒを狙えば国民に支持され、究極的にはロシアに抵抗する国家的大義に資すると考えているのかもしれない。脱オリガルヒ法」と呼ばれる富やメディア、政治的影響力に基づいてオリガルヒを定義し、正式に登録する法律が制定された。こうしたオリガルヒは政治献金と民営化への参加が禁止され、公務員とのすべての接触を報告するよう義務付けられる。
一部の専門家と外交官は、ゼレンスキー氏が忠誠心のない実業家に対する恣意的な取り締まりにオリガルヒ法を利用しかねないと危惧している。「問題はすべてのオリガルヒに対して同じアプローチが取られるかどうかだ」と言い、大統領選でゼレンスキー氏を支持した大富豪イーホル・コロモイスキー氏が所有するテレビ局では同氏が好意的に取り上げられていると指摘する。ゼレンスキー氏が大統領に選出される前から、コロモイスキー氏はプリバトバンクをめぐる法廷闘争に巻き込まれていた。同行は当局がバランスシート上に55億ドルの穴を見つけた後、16年に国有化された商業銀行だ。ウクライナ当局とプリバトバンクは複数の司法管轄にまたがる裁判で、コロモイスキー氏とパートナーらが所有してた同行から資金を流用したと訴えている。ウクライナの検察当局は汚職容疑を否定しているコロモイスキー氏を起訴していない。
ゼレンスキー氏は今月の議会演説で、名指しせずにアフメトフ氏をはじめとするオリガルヒに新たな一撃を加えた。天然資源に対する税金をウクライナの次世代のための基金に充て、高等教育と住宅購入の財源に使う計画を明らかにした。
「そうすれば、わが国のオリガルヒは我々の子供たちへの真の投資家になる」とゼレンスキー氏は語った。「我々は過去30年間で初めて、オリガルヒに対する組織的闘争に乗り出した。ウクライナがこの闘いに勝つことを確信している」

②「ロシアの論理」で読み解くウクライナ危機
【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】
(2022年2月9日)

③ プーチン帝国、そこに民主主義はあるのか(ロシアの謎)

④ ロシア、米国、中国、欧州連合:列強入り乱れるイタリアと『世界家族会議』

⑤ ロシア国営RIAノーボスチ通信が間違えて記事を公開した件

⑥NATO東方拡大ほか関連記事リンク

⑦トランプ氏の発言

⑧ 【ロシア 軍事侵攻】 「プーチン氏には“妄想の歴史観”が…」 ウクライナ研究の第一人者が分析するロシア軍事侵攻の背景【神戸学院大学教授 岡部芳彦】

以上、大変長くなりましたが、お読み頂きありがとうございました🙏

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