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鹹湖(日記の練習)

2023年7月18日(火)の練習


 夜、九州に住む友人から「鹹湖」の読み方を訊ねられる。「鹹水」という言葉もあるし「かんこ」ではないかと返すと、塚本邦雄の歌集『水葬物語』を読んでいたらでてきたという。

 遠い鹹湖の水のにほひを吸ひよせて裏側のしめりゐる銅版畫

 辞書を引くと鹹湖すなわち塩湖とある。第一回高村光太郎賞を受賞した詩人の会田綱雄にも『鹹湖』という詩集があるらしい。
 どういう評釈があるのだろうとインターネットで検索すると、北海学園大学人文論集に掲載された菱川善夫の「『水葬物語』全講義」の本文がでてきた。どうやら北海学園学術情報リポジトリで公開されていて、全十二回分の本文をPDFで読むことができる。何回分かに軽く目を通した限り『水葬物語』収録の全二五四首に一首ずつ評釈を加えているようだ。歌に対する深い理解と執念がないとできない仕事だ。
 上記の歌について、菱川善夫によるとこの「鹹湖」は塚本邦雄の短歌にとって重要な「死海」であるとしている。

「『水葬物語』全講義」は、のちに『菱川善夫著作集』(沖積舎)第二巻に「塚本邦雄の生誕 水葬物語全講義」と題して収められている。『水葬物語』の隣に同書をならべて開き、一首ずつ繙くのはさぞ楽しいことだろう。


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