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【感想】お前ら笑うな

 今始めるブルーアーカイブが一番気持ちいいと聞いたので、ここ2週間くらいポチポチやっている。

 なんかたくさん素材とかもらえるし、周回はほとんどスキップだから時間もとられないよ。
 という危険ドラッグ勧めてくる人みたいな甘い言葉に誘われて始めました。

 嘘でした。

 メインストーリーを進めるためには任務をクリアしていかなきゃいけないんだけど、これがわりと時間かかる。
 この任務と任務の間に挟まっているSUBってやつ要る?
 AP(スタミナ)を消費しないとレベルキャップが解放されないので一気に進めることもできない。

 まあ、そんなことは些細な問題で、ストーリーも含めかなり楽しんでいる。
 特に「大人の戦い」は衝撃的だった。

※ブルーアーカイブのメインストーリーVol.1 - 2章のネタバレを含みます。

 “多額の借金を抱えた学校を救うべく、奔走する生徒たち。
 しかし、彼女たちの努力も虚しく、卑劣な大人の罠によって学校は存亡の危機に立たされてしまう。
 そんな中、プレイヤーの分身とも言うべき「先生」は、黒幕らしき人物と単身交渉に向かう。
 そこで「先生」が取り出したのは、拳銃でも短機関銃でもなかった。
 先生の武器は……「大人のカード」だった。
 それは「生や時間」を代償に、現状を打破し得る大きな力を発揮する、詳細不明の武器だと語られた。
 あろうことか、「先生」は対面する人物に、その使用をたしなめられるのだ。
 「その力は自分の生活のために使うべきだ」と――。”

 ――これは、ある種メタ的な要素を取り入れた、彼らなりのジョークかもしれない。
 あるいは、ソーシャルゲームの主人公が陥りがちな「手持ち無沙汰」に対する回答、ご都合主義の弁明かもしれない。
 そもそも深い意味はない。舞台装置の1つにすぎない……かもしれない。

 俺には許せない。

 よりにもよってその役割を担うのが「大人のカード・・・・・・」だと?
 「先生」――プレイヤーこそが、その力を濫用しかねない「大人・・」だと?

 お前たちが……お前たちがそれを笑うのか?

 怒りで腰が抜けたのは生まれて初めてのことだ。
 俺は尻もちをついて、そのまま立ち上がることができずにしばらく茫然とするしかなかった。

 スマホの画面を見つめながら、思い出していた。
 5年くらい前に別のゲームで酒呑童子というキャラクターが全然出なくて5万円くらい課金してしまい、晩ごはんが冷凍うどんだけになってしまったこととかを。

 そのときの怒りを。

 人が誘惑には抗うことができないと、知っていて商売にするのはまだ、いい。
 有史以来、富めるものと貧するものとは、そうやって分たれてきたに違いないのだから。

 だがそうした人の性を、指差して笑うというのなら、俺はそれを許さない。

 嘲笑していいわけがない。
 お前は愚かだと指差していいわけがない。
 それは……攻撃だ。

 あと始めたタイミング的にヒビキ(応援団)を手に入れ損ねたことも許せない。
 年を取ると急にチアが好きになるのもまた人の性だ。

 他の「先生」はこれを受け入れたのか?
 この攻撃を、現実と同じように、あいまいな笑みを浮かべて、受け流してしまったのか?

 それとも……もう忘れてしまったのか? ガチャ課金という痛みを。

 ……古代、人間はもっと怒っていたはずだ。
 冷酷ともいえる大自然の力強さに、何の前触れもなく襲いくる天災に、病に、老いに、死という運命に。
 繰り返される不条理な痛みに人々は慣れ、忘れてしまった。
 ガチャ課金への怒りもいつしか摩耗し、いずれは別の怒りへと上書きされるのだろう。

 だが、まだだ。まだ早い。

 俺の怒りはかつてお前たちが抱いていたはずの怒りだ。
 俺は痛みを忘れてしまったたくさんの人間たちの代わりに怒っている。

 ガチャに慣れるな。
 怒りを忘れるな。

 騙されてるんだ。
 搾取されてるんだ。
 特殊詐欺に遭っているんだ。

 ガチャ商法は合法かもしれないが、まだ合法というだけに過ぎない。
 客から冷静な判断力を奪い、不当に高額なものを売りつける、悪辣な手口だ。

 ブルーアーカイブは、俺に怒りを思い出させ、また人間に戻してくれた。

 ……こう言って課金を正当化することもできる。

「対価として受け取ったものには、十分な価値がある」

 けれどそれは自分をごまかす行為だ。
 大人なのだから、自分の愚行を認め、時には怒りたくなくても、怒らなくてはならない。

 怒り、声を上げなければならない。
 もっと本能的な……原始的な叫びを。

「俺たちから奪ったものを返せ」

 そうだ。
 いいか、俺たちは負けない。

 叫び続ける限り、たとえ理性が思うように働かなくても、瞋恚の火炎が絶えることはない。
 どれだけガチャ商法が世間に浸透しても、クレジットカードの明細書に、毎月のように顔を出すようになっても。

 それはまだ、敗北ではない。
 真の敗北は、与えられるものに満足した時に訪れる。

 安心しろ。俺たちは強い。
 俺たちはいつでもおたけびをあげ、スマホにこん棒を振り下ろして、この戦いに決着をつけることができる。

 俺たちの方が強い。恐れることはない。

 ブルーアーカイブよ、聞いているか。
 言うに事欠いてコハル・ピックアップ・ガチャだと?

 たしかに魅力的な生徒だ。一見すると、ガチャを回してでも手に入れるべきだと思える。正直欲しい。
 だが、貴様らの卑劣な誘惑に、俺が籠絡されることはない。断じて。

 今月は車検があるから、課金をするのは来月からだ。

 残念だったな。大人を舐めるな。

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