【雑記】俺たちはアクションゲームに人格を攻撃されている。
アクションゲームはカスだ。俺は胸を張ってそう言える。
アクションゲームは、俺たちの人格的な欠陥をあげつらい、嘲笑し、追放するために作られている
あいつらは最初、どんなゲームよりも親切に戦い方を教えてくれるように見える。
チュートリアルのためのステージがあって、一通りの操作を教えた後、だんだんと求める技術のレベルを高めていく。
そうして、プレイヤーに挫折と成長、成功を与える。そういうふうにできている。
ジャンプはこう、ダッシュはこう、アタックはこうだ。覚えたかな?
「ほら、できるだろう?」と教える。
「残念、もう一度」と勇気づける。
「うまくなったじゃないか。すごいぞ」と褒めそえる。
俺にはできない。
俺はいつも最初の一歩でつまずく。
俺はジャンプしようとしてダッシュする。
アタックしようとしてガードする。
しゃがもうとして武器を持ち変え、リロードしようとして回復薬を飲み、一時停止しようとしてスクリーンショットを撮る。
そうやって、同じ場所で何度も足踏みする。
そうすると、あいつらは言葉を失って黙りこくる。
自動車教習所の教官なら、おだてるなり叱るなりするだろう。
しかしアクションゲームというやつは、想定よりヘタクソなやつに応対するようにできていない。
こういうことを言うと、普段ゲームばっかりやってるようなやつらはこういうことを言う。
「慣れてないだけだよ」と「みんな最初はヘタクソさ」「少し練習すればできるようになる」と。
……なるほど、俺は一週間、10時間くらいそのゲームを遊び、それができるようになるのかもしれない。
おかげで違うキー配置のゲームのとき必要以上に混乱するようになったが、それは大した問題ではない。
もはや恐れることはない。俺はまっすぐ歩き、ジャンプしようとしてジャンプできるし、攻撃しようとして攻撃できるのだから。
けれど、アクションゲームは十分に訓練し、技術を確立した俺をなおも攻撃する。
ダッシュしながらアタックしたり、ジャンプしながら回避したり、右斜め上に高く飛び上がったりすることを求めてくる!
俺にはできない。
それは絶対に、絶対に、絶対にできない。
それでも普通、店で売られているゲームというものはどんなヘタクソでも時間をかければクリアできるように作られている。
俺は求められている技術を一切習得できないまま、幸運に恵まれて次のステージへ進み続ける。
すると、奴らは何を勘違いしたのか、さらにもう一段上の技術を要求する。
いや、それだけならまだいい。
最悪、あろうことか、まるっきり違う操作性のステージを差し込んでくる!
「同じような動きばかりしていて飽きただろう」って!?
お前は気が狂っている! 俺には敵のキノコと味方のキノコの区別もつかないのに!
次から次にやってくる情報に俺の脳は混乱し、ある日突然事務所に放り込まれた鉄砲玉のように、狙いもつけていない拳銃を乱射し、弾切れを起こしてハチの巣にされる。
まさに俺の生活そのものじゃないか。
誰にでもできることができず。失敗から学ばず。マルチタスクをこなせず。
雑で、せっかちで、注意力散漫で、忘れっぽく、雑だ。
すぐに混乱し、混乱したまま行動し、事態を悪化させる。
少しずつ上達しているかもしれない。ミサイルの出てくる場所を覚えて、しゃがんで避けることができるようになっているかもしれない。
でもそれが、さっきスマートフォンをどこに置いたのかって記憶と、引き換えだったとしたら?
出発まであと5分なのに、いつもの場所にないんだ!
こんなことが何度もあるんだ! 週に! 何度も!
気が狂いそうだ!
「これがお前だ。お前はいつもこうして失敗する」
アクションゲームはそうやってプレイヤーの人格を攻撃する。
与えられた刺激に対する反応を繰り返していると、いつしかラストボスへとたどり着く、
彼はたいてい、このゲームの集大成だ。アクションゲームのクソ野郎は言う。
「ここまで来たキミならできるさ!」
俺にはできない。
お前が突然俺を飛行機に乗せて飛ばしたせいで、まっすぐ歩く方法も忘れちまったんだ!
そしてクソ野郎は身勝手に落胆するのだろう。
「こんなに成長していないとは思わなかった」
クソッ!
俺はなんとか、まっすぐ歩き、ジャンプして、攻撃して、ダッシュする。
何十回か挑戦して、ラッキーにラッキーを重ねて、ようやくコントローラーを置く。
けれどそれがうれしいとは思わない。
みんなが、あたりまえに、最初からできたことだからだ。
アクションゲームはカスだ。最初からわかってる。それでも買うのには理由があったはずだ。
素敵なBGM、魅力的なキャラクター、壮大なストーリー、美麗な背景、完成された世界観……。
俺はそれを何1つ受け取ることができない。
あるのは混乱と、焦燥と、無力感、
そして、失われた時間。
アクションゲームはカスだ。
対戦格闘ゲームの次に。