『オレンジ色の雨』【著:ハイビ】
自然って感じ。
「儚いな…」なんてカッコイイやつが言えばいい。
ただ単純にキレイだな、って思う。
ばかなのか素直なのか、そこらへんはあんたが判断してくれ。
スピーカーみたいな音で目が覚める。
瞼を持ち上げると次に脳に伝わった感覚は、鼓膜を震わせる雨音だった。
起き上がり座ったまま、天地のカーテンを少し割る。
電灯のぼんやりした丸い光の中に針みたいな雨の筋がいくつも見えた。
今は梅雨の真っ只中。
雨は嫌いじゃないが、こうも空の機嫌が悪いと流石に滅入る。
(降りすぎ…)
窓に上半身を預けて携帯を見る。
1時58分。ミッドナイト。みんな夢の中。
そのまま視線を外界へ投げた。
しばらくすると、孤独に光る白熱灯のオレンジに空の闇を彷徨っていた目が捕まった。
キレイだなーとか、月並みなことしか言えないが、人工灯でも豪雨にハマってるんだ。無理に言葉を飾ることはない。
しばし見惚れる。
ガラじゃないのは俺が一番知っている。
ほっといてくれ。
それにしても、まぁこんな時間なのに車が多い。タイヤの回転で雨が下品に踊る。都会は自然に優しくない夜を持ってくるんだ。
夜がいつなのか解らない人間すらいる。
グラスごしのフルメイクを口説くより、バルコニーで環境問題でも語らないかブラザー。
なんて思って口元のガラスが白く曇ってきたその時、空の色が変わった。
一瞬のことだったが雷だとわかったのも一瞬。
耳をすます。コンマ2秒、界隈を朝焼けにした天が唸りを上げることはなかった。かなり遠いのか。
どうせならギザギザに割れた空も見たかったな。
ひたすら涙を流す電気のノッポに目を戻す。
ぼーっと見ていると吸い込まれそうになった。
昔、誰かがテレビを見るのは自殺行為だと言った。
それはちょっと大袈裟だけど、何となく時間をノッポに費やしてる俺も似たような感じなのかと思った。
何も考えない。
朧げな輪郭の中。シャワーみたいな淡いオレンジ色の雨。
幾度も角度を変えて、生まれてはすぐに地面に叩き落ちる。
自然って感じ。
「儚いな…」なんてカッコイイやつが言えばいい、俺は遠慮しとく。
ただ単純にキレイだな、って思う。
ばかなのか素直なのか、そこらへんはあんたが判断してくれ。
衛星が日本列島を蛍光に染めてかなり経った頃。
雲の上の誰かさんが鳴らす雨音の中。
俺は窓から枕に顔を預けた。
オレンジの雨を思考の空に降らせながら。
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はじめまして、こんにちはハイビです。
梅雨(雨)を思って書いた短編小説です。
私は屋内で見る雨が大好きです。
皆さんは雨にどんな想いがありますか?
拙い文章ですが、最後まで読んで頂き
ありがとうございました。