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マルコス、オンラインカジノやめるってよ!

本当に2024年も押し迫って、後2日で終了です。今年は僕だっくにとって、かなり変化に富んだ年でありました。

2月20日くらいに3月末で人員削減のためクビ(会社都合解雇)と宣言されて焦ったのが遙か前のような気になりますが、つい10ヵ月前の話です。

いい加減50歳を過ぎますと余程キャリアを積んでいないと、外に放り出されると詰んでしまいます。若い人はバブル時代もかくやという売り手市場ですが、年寄りには厳しい。

所詮は昭和から固まりきった人事制度でしか動かないし動けない日本企業のマインドセットには呆れます。

まあ、そんな訳で世の中弱った人間に更に追い込みをかけるようなあくどい生業というのは沢山あって、その中の一つがオンラインカジノです。


先般記事にしましたが、日本国内でオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪です。海外サーバであろうと関係ありません。そんなオンラインカジノ事情で一つ年末に変化があったことをお伝えしますね。

フィリピンのオンラインカジノ業界の成り立

フィリピン政府は2024年末を期限に、外国人向けオンラインカジノを全面的に禁じられます。あらゆるフィリピンのオフショアゲーム事業者を禁止です。この話自体は7月に決まっていた話なので昨日言われて大晦日までに実施せよという無茶振りではありません

この手法は、2022年12月にパシグ市が条例で既存の事業許可を更新せず、新規申請を拒否することでPOGOを事実上禁止した手法を、全国的な禁止を実行するための潜在的なモデルとしています。

先程書いたように2024年の残余は2日、日本の現時点で後42時間(今は朝6時)、フィリピンでの発効ですから1時間の時差を加味して43時間で終了です。まさに風前の灯火ですね

この決定の背景には、様々な社会的、経済的、そして政治的要因が絡んでいます。

フィリピンでは、2016年に「フィリピンオフショアゲーミングオペレーション(POGO)」という制度が導入され、合法的なオンラインカジノ業者が登録されるようになりました。

この制度は、違法なオンラインギャンブルを減少させることを目的としており、特に中国人ギャンブラーをターゲットにしたビジネスモデルが急成長しました。

ドゥテルテ前大統領の下で、この業界は急速に発展し、多くの外国人労働者がフィリピンに流入しました。

また、POGOは、統合カジノリゾートやオンラインゲームなどを管轄する政府系企業の娯楽ゲーム公社から操業認可を得て、マニラ首都圏やセブ市など主要都市や、地方都市にも広く進出しました。

そのため、賃貸事務所の借り手企業としては、コールセンターを含む情報技術・ビジネスプロセスマネージメント(IT-BPM)企業に次いでPOGO企業が2023年までずっと2位に付けてきた有力な借り手となって、その影響力は決して小さいものではありません。

しかし、POGO業界の急成長は、さまざまな問題を引き起こしました。特に、合法的な運営会社を装った業者がゲーム以外にも金融詐欺や資金洗浄、売春、人身売買、誘拐、拷問、さらには殺人に手を出しているとの懸念が、社会問題として浮上しました。

まさに犯罪の見本市ですね。金の集まるところは結局そうなるのです。 広江礼威の「BLACK LAGOON」は、タイの架空の犯罪都市ロアナプラが舞台でした。

あそこまでハッピートリガーな害基地は多発していないにせよ荒れ具合は似たようなものでしょうか?

違法なギャンブルを抑止して、より重篤な犯罪を助長していては本末転倒ということです。

これらの犯罪は、フィリピン国内の治安を脅かす要因となり、多くの国民から批判を受けることになりました。

マルコス大統領の決断

そういった背景を受けて、2024年7月22日、マルコス大統領は国会で施政方針演説を行い、「POGO」を2024年中に全面的に禁止する方針を発表しました。

この決定は、国内外からの強い圧力と批判に応える形で行われたものです。大統領は、「我が国の法制度に対する重大な乱用と無礼は止めなければならない」と強調し、オンラインカジノ業界がもたらす犯罪や社会的混乱への対策が必要であると訴えました。

この発表には議員から拍手が起こり、多くの支持を集めました。しかし、この決定には経済的な影響も伴うため、一部からは懸念の声も上がっています。

特に、POGO業界で働く約2万3,000人の外国人労働者や約2万5,000人のフィリピン人労働者が職を失う可能性があるため、その影響についても考慮する必要があります。

社会問題と経済的影響

POGO業界は、フィリピン国内で急速な地価高騰を引き起こし、多くの一般市民にとって居住費負担が増加する要因ともなりました。

また、外国人労働者による犯罪やトラブルも増加し、治安悪化につながっているとの指摘もあります。

このような状況から、多くの国民がオンラインカジノ業界への反発を強めていました。

さらに、中国政府も自国民による海外での賭博行為を取り締まっているため、中国政府からもフィリピン政府への圧力があったとされています。

要はただでさえ問題山積なうえ、あの中国が経済を枷に支配的になっているとなればそりゃあ国を預かる身としては放置できませんわね。

経済への影響と今後の展望

POGO業界の全面禁止は短期的には経済的損失をもたらす可能性があります。特に、不動産市場や関連ビジネスへの影響が懸念されています。

しかし、マニラ首都圏のオフィス市場への影響については、大手デベロッパー各社では総賃貸可能面積に占めるPOGOの比率が1~5%程度にとどまっていることから影響は軽微ではないかと言われています。

特に、経済中心地「マカティ」や先進都市「ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)」など、外資系企業がテナントの中心となっている地域のオフィス市場には影響がないそうです。

長期的には、治安改善や社会秩序の回復につながると期待されています。マルコス大統領は、「経済的利益よりも犯罪によるリスクが高い」と述べており、この方針は国としての信用力向上にも寄与すると考えられています。

今後は、新たな経済モデルや雇用機会を創出する必要があります。一応は儲けられていたからこそお目こぼしをしていたのが許容を超えての対応ですから、当然埋め合わせが無いとマイナスでしかありません

政府は、この変革期において新しい産業育成や観光業の振興など、多角的なアプローチで経済成長を図ることが求められます。

しかし、元々観光がそれなりに財源だったのにこれ以上どうするというのか実のところ大きな疑問です。

政治的対立の激化

実はこの話は、経済と治安の話で収まらないのが厄介なところです。フィリピンの政治においてマルコス家とドゥテルテ家は二大巨頭なのですが、この二家の因縁というのは歴史を遡って把握する必要があります。

初期の蜜月と選挙戦

マルコス大統領とドゥテルテ前大統領の関係は、2022年の大統領選挙において非常に密接でした。

マルコス氏は、ドゥテルテ氏の長女であるサラ・ドゥテルテを副大統領候補として迎え入れ、両者は「ユニチーム」として選挙戦を展開しました。

このタッグは、フィリピン国民からの強い支持を受け、圧勝を収めました。両家の蜜月は、政治的な安定をもたらす一因となりました。

支配権争いの始まり

しかし、政権発足後まもなく、両者の間で対立が一気に激化しました。そもそも水と油、呉越同舟だったわけで、一旦安定すればお互いが邪魔に考えるのは当然と言えば当然です。

特に、マルコス政権が先に触れたPOGOの禁止を決定したことがきっかけとなり、ドゥテルテ家との関係が緊張しました。

というのも、前ドゥテルテ政権下でPOGOが急成長した背景には、外国人向けのオンラインカジノ業務を合法化することで、フィリピンに多くの外国資本を呼び込むことを目的としていました。

税収の増加や新たな雇用機会の創出に寄与し、特に若年層や低所得層にとって重要な収入源となりました。

ドゥテルテ家はフィリピン社会におけるエリート支配への反発から登場した典型的なポピュリストです。社会経済的格差が広がる中で、経済成長から取り残された人々の不満を解消するために手段を問いませんでした。

「中国がフィリピンのPOGO業界に干渉しない」との合意を得ることにも尽力した経緯もあり、犯罪性があるからでお綺麗に切り捨てられるのは我慢ならないというのも分からないではありません。(散々上手い汁吸ってそれか、みたいな)

POGO以外にも対立要因だらけ

対中姿勢の変更

ドゥテルテ前政権は、中国との経済関係を重視し、南シナ海での中国船の活動についてはあまり公表しませんでしたが、マルコス政権はこのアプローチを転換しました。

特に、2022年にフィリピンの巡視船が中国海警からレーザー光線を照射された事件を契機に、マルコス大統領は中国の行動を積極的に公開し、国民の支持を得るために強気の姿勢を取るようになりました。

まあ、アメリカと民意が後ろについて強気になっちゃった訳ですね

麻薬に対する姿勢の変更

また、麻薬についてドゥテルテ前政権は、違法薬物問題に対して非常に強硬な姿勢を取り、多数の超法規的殺人が発生しました。(超法規的殺人ってすごいパワーワード!)

この結果、人権団体からの批判や国際刑事裁判所(ICC)による調査が進む中で、ドゥテルテ政権はICCから脱退する事態となりました。

マルコス政権はICC脱退を維持しつつも、治安維持と人権保護とのバランスを取ろうとしています。ここら辺は実はモヤモヤしていることが多く、本当にマルコスがクリーンかは怪しいものです。

反目の結果の極めつけがサラさんの大騒ぎに

特に南シナ海問題や麻薬対策において、マルコス氏が前政権の施策から離れたことが、両者の対立を一層深める要因となりましたが話はそれだけではありません。

2024年11月23日、サラ・ドゥテルテ副大統領はオンライン記者会見において、自身が殺された場合にはマルコス大統領夫妻やロムアルデス下院議長を殺害するよう殺し屋に命じたと発言しました。

この発言を受けて、フィリピン当局はマルコス大統領夫妻の警護を強化しました。マルコス大統領は25日にビデオ声明を発表し、「国全体を政治の泥沼に引きずり込むようなことはさせない」と強い不快感を示しました。

フィリピン国家捜査局は、サラ氏に対して脅迫などの疑いで出頭するよう命じましたが、彼女はこの命令に応じず、書面で容疑を否認しました。サラ氏は出頭しなかった理由として、マルコス政権が自分に偏見を持っており、公正な捜査は望めないと主張しました。

もうどうにもこうにもならないとは、まさにこのことですね

あまり事情を知らなかった方からすると、この記事の読み始めは「フィリピンでオンラインカジノは犯罪の温床だからやめることにしたんだ」に対して「へー、そうなんだー」で済んでいたと思います。

ただ、読み進めるに従って「なんか、これヤバくない?」「ドロドロし過ぎ-」になってきたことでしょう。

そうなんです。実は今のフィリピンは色んな意味で一触即発の火薬庫の一つです

それもですね。これまた1月から始まるトランプ2.0の影響をもろに受けるだろうことが確実な話なのでヤバさマシマシです。

と言いますのも、ドゥテルテ前政権ってポピュリストで民衆のご機嫌取りが上手でよく言えば内政向きの庶民派です。悪く言えば、金権に塗れた法外のクリーチャーですが、これかなりトランプと親和性が高いです

マルコスみたいに表面はお綺麗で裏であれこれやらかすタイプもそこそも調子を合わせることは出来るでしょうけれど、基本バイデンみたいなお題目が揃えば良いみたいなのに近いでしょう。

これ下手すると、ひっくり返る可能性もあるかもしれません。勿論トランプは内政重視なので、アジアのごたごたに介入してお金を減らすことはしないのです。

しかし、フィリピンは世界的にもニッケルや銅の主要供給国ですからディール対象としてはターゲットに入るのです。中国も当然狙っていますから、救ってやる代わりにあれ寄越せこれ寄越せと足元を見たことをやる可能性は高いと僕は見ています。

そして、フィリピンは2025年5月に統一国政・地方選挙(中間選挙)を控えています。まさにトランプ絶好調のタイミングです

いやあ、まだなってないのに、またトラはろくに良い夢を見させてくれそうにありませんねえ。

ではまた

2月15日追記

フィリピン政府が2024年末を期限に外国人向けオンラインカジノ(POGO)を全面禁止した決定から約1か月が経過した2025年2月時点までで、同国では以下のような進展がありました。

予想以上に多くの外国人POGO労働者がフィリピンに残留している

More than 11,000 foreign POGO workers still in the Philippines past deadline: Pagcor

フィリピン政府が2024年末に実施したPOGO(フィリピン沖合ゲーミング事業者)の全面禁止から約1ヶ月半が経過した現在、予想以上に多くの外国人POGO労働者がフィリピンに残留していることが明らかになりました。

フィリピン娯楽ゲーミング公社(PAGCOR)の発表によると、2024年12月31日の出国期限を過ぎても、11,000人以上の外国人POGO労働者がフィリピン国内に滞在し続けているとのことです。

これは、期限までに出国した約22,000人の外国人POGO労働者に比べると、かなりの数が残留していることを示しています。

この状況を受け、フィリピン入国管理局(BI)は、期限を過ぎても出国しなかった元POGO労働者に対する強制退去手続きを開始する方針を明らかにしました。

また、ジョエル・アンソニー・ビアド入国管理局長は、違法滞在の外国人POGO労働者を匿っている企業や個人に対して法的措置を取る可能性があると警告しています。

一方、ラフィ・トゥルフォ上院議員は、期限後に強制退去された外国人POGO労働者がわずか10%程度にとどまっていることに警鐘を鳴らしています。

この状況は、POGO禁止令の完全な実施と、フィリピン国内に残るPOGO関連の外国人労働者への対応が、依然として大きな課題となっていることを浮き彫りにしています。

入国管理局は現在、一般市民に対して違法滞在の疑いがある人物の通報を呼びかけており、通報者の秘密は厳守されるとしています。

フィリピンの「POGO市長」、62件のマネーロンダリング容疑で起訴

https://igamingbusiness.com/gaming/online-casino/philippines-guo-charged-with-money-laundering-another-pogo-shut-down/

元バンバン市長のアリス・グオ(郭華萍)氏に対する大規模な資金洗浄容疑が浮上しました。フィリピン司法省(DOJ)は、グオ氏と31人の共犯者に対して、合計62件の資金洗浄罪で起訴することを承認しました。

これらの容疑は、バンバン市にあるPOGO施設の運営に関連しており、グオ氏個人に対しては26件の資金洗浄罪が含まれています。

検察は、POGOの運営が暗号通貨詐欺や投資詐欺、恋愛詐欺などのスキャムを含んでいたと指摘しており、これらの違法な活動から得た収益が資産購入に使用されていたと主張しています。

さらに、グオ氏は人身売買の容疑でも起訴されており、企業詐欺や麻薬シンディケートとの関連も調査されています。

違法なPOGO施設で衝撃的な拷問の証拠を発見

https://www.abs-cbn.com/news/nation/2025/2/15/paocc-recovers-torture-videos-in-raid-on-pogo-dorm-in-pasay-1505

フィリピンの首都マニラにあるパサイ市で、大統領直属組織犯罪委員会(PAOCC)が違法なPOGO(フィリピン沖合ゲーミング事業者)施設を摘発し、衝撃的な拷問の証拠を発見しました。

この摘発は、34人のインドネシア人元POGO労働者が寮に監禁されているという通報を受けて行われました。

PAOCCは、カンラオンタワーと呼ばれる元POGO施設を捜索し、リウ・メンという元POGO幹部とその管理者を特定しました。

捜査の過程で、PAOCCは近隣のマリーナ・シービュー・レジデンスで中国人が拷問されているという情報を入手しました。その後の捜索で、拷問の痕跡がある中国人男性を救出し、3人の誘拐犯を逮捕しました。

PAOCCが公開した動画には、被害者に拳銃を突きつける場面や、別の中国人が壁に鎖でつながれ電気ショックで拷問される様子が映っていました。これらの証拠は、POGOに関連する犯罪組織の残虐性を如実に示しています。

さらに、施設内では拷問用の部屋が発見され、重量級テーザー銃、エアソフトガン、野球バット、木製の棍棒などの拷問道具が押収されました。壁には手錠が取り付けられており、債務不履行者や売春客に対する拷問に使用されていたと見られています。

「POGOパーソナリティ」は健在

フィリピンでは、2024年末にPOGO(フィリピン沖合ゲーミング事業者)が全面禁止されたにもかかわらず、いわゆる「POGOパーソナリティ」と呼ばれる人物たちが依然として影響力を持ち続けていることが懸念されています。

リサ・ホンティベロス上院議員が率いる調査委員会は、POGOに関連する犯罪組織のネットワークが複雑化し、政府の取り締まり努力を妨げる可能性があると警告しています。

これらの人物には、元バンバン市長のアリス・グオ氏や、「POGOの設計者」と呼ばれる中国人実業家トニー・ヤン氏、さらにはアジアで最も悪名高いギャングの一人とされるワン・クオク・コイ(別名「ブロークン・トゥース」)などが含まれています。

特に注目すべきは、これらの人物がPOGO禁止後も様々な方法で活動を続けようとしていることです。

例えば、一部のPOGO関連企業がBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業を装ったり、特別経済区域内で類似のビジネスを展開したりしているとの報告があります。

フィリピン政府は、これらの「POGOパーソナリティ」に対する刑事告発を含む厳しい対応を検討しています。しかし、彼らの影響力や犯罪ネットワークの複雑さを考えると、完全な撲滅には時間がかかる可能性があります。

この状況は、POGOの禁止が単に法律で定めるだけでは不十分であり、関連する犯罪組織や違法活動に対する継続的な監視と取り締まりが必要であることを示しています。

これらの取り組みを通じて、フィリピン政府はPOGO産業の完全な解体と、関連する外国人労働者の帰国を進めようとしていますが、その道のりは予想以上に長くなりそうです。

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