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イグ塩インクルーシブ対談後編【下巻】
Dabelのリードユーザーは世界中のブラインドの人たち!
開発者も予想してなかった現実を、実際、自分の目で確かめようと、世界のあちこちのブラインドユーザーに会いに行くDabelのCEOタカさん。
彼らがDabelを使いやすいように、Appleの開発チームと一緒に、ユーザーからのフィードバックをもらいながら、機能を進化させていった。
時には、日本と海外の文化に両股を割かれながらも、このリードユーザーの存在は、今もDabelと共にある。
ざっくりですが、これが、前回まで。
さて、対談の最後は、インクルーシブがいつの間にか専門と言われるようになった(そうなる作戦があった?)今回の対談ゲスト、京大の塩瀬先生(文中では、ご本人のリクエストにより「塩瀬さん」)の活動を含め、ご紹介します。。インクルーシブな世界、みなさんの身近な生活を通して、想像していただけるといいな。
「インクルーシブ」に巻き込まれる
この対談が企画されてから、お二人とのチャットでの打ち合わせの中に出てきた話の中に、
Akemi:一応チャットで出てた、まず京都グラフィで、フランスの視覚障害者のポートレート撮影する作品展やってるキュレーターの人を巻き込んでやりたいよねっていうのが上がってましたよね。
あと、よく塩瀬先生がされている視覚に障害のある人で言葉で見る美術鑑賞していくグループがあるので、そこで美術館でDabelとか、もしリスナーの皆さんからもアイデアが出てきたら嬉しいなっていうことで何か他にも何かやりたいなとか、ちょっと今日の話から、こんなこともやりたいなーみたいなことがあればいいのかな
Taka : あのね、天田さんっていうのは、まさに京都グラフィーで、そのフランスかな。ブラインドの学校の生徒の方のポートレートを撮っている作家さんをフランスから連れてきて、大徳寺の近くでやってらっしゃるんですけど、たまたま通りがかりでその知り合って、そのDabelをお伝えしたらその場でログインして、アメリカ人にその展示の宣伝をしてました。その場で。
すごい良い写真展でした。写真を陶板みたいにして、触れる写真にして展示っていうのを。
Shiose : あー、はいはいはいはい。
見えない人との絵の鑑賞で見えたこと
Taka : 塩瀬さんもなんかめちゃめちゃ、僕、全然存じ上げなかったんですけど、そのインクルーシブデザインやらやられてると、そういう、そのなんだろう、ディスアビリティを持ってる方とのお付き合いがどんどん生まれるもんなんでしょうか、やっぱし。
Shiose : そうですね、僕の所に、福祉では全くなくて、デザインとか、コミュニケーションにおいて、新しい視点をくださるっていう感じなので、あの全然ちゃう観点でやってるからかもしれないんですけど、見えない方も、僕が全く助けに来てないっていうところが、それが対等に遊んでくれることかなと思って。
Taka : いやぁ、それ大事なポイントですね。
Shiose : 一緒に美術鑑賞を最初にした時に、自分としては喋りは得意な方なので、一番最初に目の見えない人と一緒に美術鑑賞したのが、東京上野でやってたオランダのフランドル絵画展なんですけど、その時に、あのフェルメールが書いた絵画芸術っていう作品があって、それを説明するので、僕40点ぐらい全部説明したんですよね、最初。
Taka : よくやりましたね。
Shiose : そうそう。でもどう説明していいか分からないから、端折り方もよくわかんなくて、全部説明したんですけど。それで説明した時に、一緒に回ってくださったご夫婦で、ご主人が見えない方だったんですけど、
Shiose 回った時に、僕の方が先にありがとうございますって言葉が出てしまって。教えてあげるんだと思って行ったんですけど、絵をそんなに見たことがないんだなって、すごいよくわかって。
Taka : あー、語ることで?
Shiose : そうそう。語ることで、二人の女性がいて、こっちの女性の人は少し悲しそうな顔をして、悲しそうなのかなとか、なんだかんだ言いながら見ると、服装とか髪型とか、どっち見てるんだろうとかっていう推測するところがたくさん出てきて説明してるうちに、絵を全部、凄い見たんだなと思って。
Shiose 僕、こんなに見たことないなぁと思って、ありがとうございましたって言えるコミュニケーションって素晴らしいなって思って。
毎月19日はインクルーシブ!
Shiose:そこから、見えない方と一緒に見る、っていう美術鑑賞ってのを、色んな人達にお伝えしようっていうのをやってるうちに、丁度、インクルーシブデザインの話を、ロンドンから日本に入ってくるって言うの普及っていうのを一緒にして欲しいって相談を受けたので、1回やってみたら、さっきの見えない人と一緒に美術鑑賞した時の感覚と一緒で、見えない人とか車椅子な人を助けてる気分が全くなくて。
その人達から教わって一緒に開発してるって、縁側で一緒に景色見てる感があったんで。これはバリアフリーデザインともユニバーサルデザインとも違うなーっていう風に思ったので、
インクルーシブデザインの普及をしようみたいな感じで、毎月19日はインクルーシブデザインの日って言ってワークショップをまず100回やるっていうのを自分に課して。
とりあえずネットで検索すると、インクルーシブデザインで僕の名前が一番上に出るように活動を広げてる。
(Akemi 出てきましたー!)
Taka : すーごいなー。それ、つらくないっすか?
Shiose : なんだろな、でも、人一倍やることで人一倍わかることがあるから、そうすると人一倍人繋がるかなってのがあるので。
そうなることで良質の情報にまた出会えるっていう、その循環を自分で作り出す方法としては一番最適かなと。
ユーザーに会いに!フランスのブラインドの歌姫!
Taka : なんか、あのー、僕らも初めて2019年の6月かな、ブラインドの方々、アメリカの方々中心ですけど、に出会って、そっから飛び火してイギリスとか南アフリカとか、いろんなブラインドの方に、伝わって。
あ、フランスもあったな。フランスのなんだけどスター誕生みたいなところにグランプリなったアリエメッテちゃんていう女性がいて、ようするにめっちゃシンガーとしては有名なんですけど、Dabelすごい使ってて、歌うようにDabelを説明してくださるんですよ。色んな新しいユーザーさんとかに。歌ってるんですよ、ほんとに。
歌と一緒に生きているような感じなんで、お金がなくても普段歌ってるんですよ、ようするに彼女は。ビギナーのダベルユーザーに歌うかのようにいかにダベルが素敵かと説き続けるっていう、なんかこう、なんだろう、それこそ100本ノックみたいなことをやってくださっていて。
Dabelユーザーのフランス人の歌姫。
チームが一体化!インクルーシブデザインに舵取り
で、なんかチームがなんだかんだで、ブラインドの向きの製品を作るんだってことで、こう割と心が一体化したんですよ、やろうと。
デザイナーもすごいアクセシビリティ勉強してくれたり、そのマーケターもうそういうコミュニティにつながるために色々アタックして、そのやりましょうよみたいなことをどんどんやったりとか、チャリティでやったりとかってやったんですけど。
Taka :確かに助けてるって意識になるとダメだなって改めて思いました。一緒にやってる感じですね。
Shiose : そうそう、一緒に新しいことを切り開くってなると、両方楽しめるんで。助けようと思うと、どうしてもやっぱ余裕のある時しかできなかったりするし。
Taka : そうっすね(笑)自分が助けてほしい時があるっていうのが。
Shiose : でも本当に助けられる状況を作れるという、僕も見えない人と付き合う、ご飯とか食べに行く時とかに、真っ暗でみんなで飯食うとかってすると、見えない人7人ぐらいに囲まれると僕が一番飯食えんということに、弁当のどこに何が入ってるとわかんないし(笑)。
Taka : あーなるほど。そういうことか。
Shiose : 電気つけないといけないって不便な奴だなとか言われて、クソ腹立つな(笑)とか思いながら。
Taka :Shiose : (笑)
Taka : たしかにめんどくさいですよね、僕らってある意味(笑)
天ぷらのきつね色がわかるブラインドの料理人
Shiose : 見えない人の中にも料理が得意な人がいて、Dabelでやったら面白いかな思うのは、見えない人の料理講座。
Taka : へー、そういうのあるんですか。
Shiose : 天ぷらがきつね色ぐらいになったころに揚げると美味しいんだよ、て。きつね色も見えへん言うてるやんけ、ウソつけ(笑)、って言いながら。
Taka : たしかにわかんないですよね、きつね色。
Shiose : そうそう、でもきつね色ぐらいになる頃に丁度周波数が変わるっぽくて。
Taka : あーなるほどね、ジュワーっていうね。
Shiose : そうそう、だから多分ね、音で聞き分けてる。
音で聞き分ける仕事っていっぱいあって。
あの、金平糖作るときも、金平糖ってイラ粉(もち米を蒸して細かく砕いたもの)の周りに砂糖まぶすんですけど、窯の中で10万個ぐらいの金平糖に、ザクッザクッってシャクっていう棒を突っ込んでってその音を聞き分けてって砂糖かけるタイミングっての測るんですけど。
これが多分音の周波数とか多分そういうところ音の変化っていうものを頼りにしてるんで、きつね色って言いながら、こうプツプツプツって音を聞きながら変えてたりもするんで。僕たちも実は音も使いながら料理をしてるんだなって。
Taka : はいはいはい、そういうことか。まあそう、実は使ってるんですね。意識的に考えてないだけで。
街の音、日常の音を楽しむ
Shiose : そうそうそうそう、そういうのを考えると、さっきその、Dabelの初期ぐらいの時に何か面白いことを音で紹介するとかと言ってたじゃないですか。
ドイツってラジオが芸術の域にあるんですよね。あのー、絵画とか音楽とかってい内容のラジオがあって。そのラジオ番組で延々何かの環境音だけ流しているチャンネルとかがあって。
前に、京都の市場を河原町ぐらいを、昔ですけどね、歩いてる時に、パチンコ屋の前でしゃがんでマイクで集音している外国人の人がいて、パチンコ屋の前でね。
何してるんですかって声をかけたら、その人はラジオのディレクターかなんかで。日本といえばパチンコ屋だって言ってはって。
Taka : (笑)
Shiose : 日本の文化を象徴するものとしてパチンコがあるから、パチンコの自動ドアが開いた瞬間からガシャガシャガシャっていう音が小さくなるところを延々録音してて。これを母国に帰って流すんだって(笑)
Taka : 面白い。面白い。たしかに日本かもしんないですね。
Shiose : なんかそういう生活音っていう中で、日本にいると当たり前なので、当たり前だと外騒音のノイズレベルを下げるから、そのことが分からなくなってしまうんだけど。
やっぱ、そういうことに気づける音ってのがあるので、そういうのだけを紹介するだけでもすごい文化を共有したり文化の違いを伝えるとかっていうチャンネルは出来んじゃないかなって。それぞれの国の人が自分の国の音を聞くだけでも、めっちゃ面白いものができるかも。
Taka : 確かに、お散歩をずっと配信されてる方がDabelのユーザーの方いらっしゃってまして、街中を移動してると商店街の呼び込みが聞こえてきたり、自転車の音が聞こえたり、なんか子供の声、遊んでキャッキャ聞こえる声が聞こえたり、カラスが鳴いている声が聞こえたり、色んな音が聞こえてきて、あれだけでも結構おもろいんですよね。
Taka : いいっすね。僕最後になんかやっぱその改めて、お助けて側のモードじゃなくて一緒にやってる感で言うと、そのオースティンのブラインドのコミュニティの方の、なんていうかなマンスリーの集会に行ったことがありまして、そこでチャリティあるから協力してね、みたいな話をしてたんですけど。
なんでしたかっていうと、なんかハロウィンの衣装とかクッキーとか顔がなくて困ってますみたいなことをおっしゃってるから、いやだったら集めようと思って、チャリティコンサートやるから一緒にやりましょう、みたいなことをその場でピッチしたんですけど。
なんかすごいなと思ったのが、トイレに行くじゃないですか、で戻ってくる時に、その待ってる側が椅子をトントンしてたんですよ。うぉー!とか思って。わざわざこっちだよーとかじゃなくって、右から入って3つ目の椅子が空いてますよ、とかじゃなくて、指で椅子をトントンしてたんですよね。それでちゃんとたどり着けてたんですよ。おー!とか思って。あれは、なんか、めちゃめちゃ目からウロコでした。あーそういうことができるんだって。だからちょっと驚きましたって話なんですけど。ああいうことができるんですね。
Shiose : そうそう、だからもちろん使ってるチャンネルとしてね、見えてると使わないチャンネルもあるけれども、見えてる人も、実はその音も頼りにしてることがたくさんあって。そういうのに気づかされるからそこを改めて強調すると、実はいいインターフェイスとかできるんだろうなと思って。
例えばあの、逆に聴覚障害の人と話を聞いてて、家のお困りごととかで聞いてると、宅配便がいるのに不在通知が入れられるってのがあって。あのピンポンが聞こえないからなんですよね。
いるのに不在通知が入れられてしまう。そうなると、ライトフラッシュっていって聴覚障害の人がワークショップとかに参加してる時は、僕も音で鈴を鳴らすのと同時に照明をつけ消しするんですよ。
そうすると、今、切れ目ですよっていうタイミングを伝える時に使えるんで。でも、それって、結局喋りに夢中になってる人も音聞いてないことがあるんですよね、終了の合図ですとかってなるんだけど、そこに視覚としてもフラッシュがたかれると、あ!ってなるんで。だからそれを使うと例えば聞こえない人のためとか見えない人のためっていうとこから最初はそのつもりで入るんだけど、実はその恩恵を授かる人って他にもたくさんいて、その利用ユーザーがたくさん増えると必要としてる人もデマンド、ようするに自分でわざわざ言葉にしないデマンドなんで。
Taka : 納得させます!
一同:(笑)
Akemi: いやー、いい感じでまとまりましたね。
Taka : まとまっちゃいました(笑)いや、本当に真面目にブラインドやめてくれっていう株主もいるんですよ、ぶっちゃけ。
Shiose : いや、そうだろうなと思う。
Taka : 僕ね、でも全否定ですね。何を言ってるの?っていう。
それをやってるから僕らこういうの、ユーザビリティとかバリューを提供している、ってそれをちゃんと説明しないとだめなんですね、やっぱね。
Shiose : そうっすね、やっぱり見えない、そこについて気づけない、っていう人がたくさんいるので。言葉にしてって気づけばまた応援者も増えるだろうから。
Taka : そうですね。やります!
もうちょっとなんか最高でした。ありがとうございました!
Akemiダベルインクルーシブ担当から一言
後半は、インククルーシブの本懐、包含するにふさわしく、デザインから民族性、文化にまで広がりを見せるとは!この日のリスナーさんからのコメントも(今は見れませんが)さまざまな気づきや理解に繋がっている様子が伺えました。
そしてですね、この後のチャットの内容も私だけのものにするのは申し訳ないものばかりだったんですよ。なので、番外編としてもう一記事お届けします!本当に企画して良かったなと思うことばかりのこのインクルーシブ企画。ゆるっとですが、いろんな形で継続していきたいと思っています。
当日の音声はこちらで聞くことができます!
対談記事
デザイン協力:cappaさん(@CAPPAYA)西岡克真さん(@kaduma2010)