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ホットクロスバンズ
日本橋三越で開催されていた英国展に行った。英国には行ったことがないのだけれど(行こうと計画を練っているところで、いろいろあってそのままに)、英国的なもの、イメージとしての英国にはなんとなく憧れがある。ぼってりとしたティーポットにたっぷりの熱い紅茶、スコーン、サンドウィッチ、お庭、チェック、古めかしいおうち・・・小さい頃に本で読んだ記憶となんとなくのイメージなので、実際は英国ではないかもしれないし、英国にはないのかもしれないし、そもそも英国に詳しいわけでもないので、「英国が好き」だと公言したことはないのだけれど、なんとなく心にある国の一つ。
そんなこんなで英国展。開催されているのは知っていたけれど、別に行く気はなかった。混んでいるところは好きではないし、出不精だし、遠くはないけれど、近いとも言えない距離感・・・
なのに、結局最終日に足を踏み入れてしまった。仮に行くつもりだったとしても行けない状況だったのが、ポンと最終日に行ける環境が整ったのに背中を押されたような押されていないような。
スコーンと紅茶でも買って帰ろうかなと思いながらうろうろ。並びたくはないけれど、これくらいなら我慢しなければいけないんだろうな、とお店の前の列につこうとすると、最後尾はそこではなかった。さらに別の待機場所があり、そこにもずらりと並んでいるのだ。
一瞬後ろ髪を引かれたものの、すぐに諦め、買えそうなところを探す。歩いていたら聞こえてきたのが、
「ホットクロスバンズありますよ」
の声。条件反射で頭の中を
「Hot cross buns! Hot cross buns! One a penny, two a penny, hot cross buns」
のメロディが流れる。中学一年生のときだったか、ずっと聴き流していたNHKのラジオの基礎英語の番組がリニューアルされて、この歌が紹介されたように記憶している。4月の、少しいつもよりやる気がある感じとともに。
以来ずっとこの歌はふとした時に口ずさんでしまうのだけれど、ホットクロスバンズを食べたことはもちろん、見たことも、そして調べてみようと思ったこともなかったのだ。
一度は通り過ぎたものの、結局ぐるっと回って戻り、
「ホットクロスバンズください」
帰宅して、紅茶をいれ、ホットクロスバンズを切る。温めてバターをたっぷり塗ったら間違いなく美味しいのだろうけれど、まずはそのまま食べてみることにする。
感動は、ない。ずっと気になっていたわけでも、憧れていたわけでもないから。でもなんだろうな、「Hot cross buns」のメロディに形がついたというのだろうか。音だけだったものが目に見えるものになったというか。じんわりと感じる喜び?満足感?なんだろう。わからないけれど、また食べたいなと思った。
知らないことや気になることは今やスマホで瞬時に調べられる。きっといいことなのだろう。でもなんとなくだけど、こうやって云10年の時を経て知らなかったことに出会えるのも悪くないなと思う。
それにしても!広報戦略というものは素晴らしく、まんまと乗せられ、「フランス展か・・・別に興味ないしな」と思っていたのに、うっかりWebサイトを見て、うっかりまた足を運んでしまいそうな私がいる。