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【本のこと】たゆたえども沈まず
最近読むようになった作家のひとりが原田マハさん。理由は妹の本棚にあるから。帰省のたびに拝借してくるのだ。まずは「本日はお日柄もよく」。これはあっという間に読めた。次に、「リボルバー」を読んで、今回読んだのがこの「たゆたえども沈まず」。
ゴッホ。ぱっと思い出せるのが「ひまわり」と自画像くらい。あとは生きている間にはまったく売れなかった・・・というエピソード。嫌いなわけでもないし、興味がないのとも少し違う。出会う機会があまりなかった、という感じ。
フィクションだということはわかっている。わかっているけれど、兄フィンセントと弟テオのまっすぐさと不器用さに胸が苦しくなってくる。どうしてこんなにも一生懸命なのにすれ違ってしまうのだろう。せめてふたりきりの最後の時間があってよかった・・・では終わらず、さらに悲しいことが起きる。
死後に売れるようになったって何の救いにもならないじゃない、と思ってしまう。この小説を読む前から思っていたことではあるけれど、やっぱりそう思ってしまった。生きているうちに、もっと何かできなかったのだろうか、と。それとも、少なくとも絵にひたすら向き合っている時間はフィンセントにとって、そしてテオにとってもしあわせな時間だったのだろうか。私には永遠にわからないことだけれど。
フィクションによって形作られた生涯によって興味をもたれたとあっては、画家からしたら不本意かもしれない。見せたいのは絵であって、自分の人生ではないのだから。そうは言ってもやっぱり絵が見たくなってしまう。
ずいぶん先だけれど、楽しみにしている。読後からだいぶあくからこそ、先入観抜きに、絵を楽しめるかもしれない。
*写真のこと*
数年前のパリ。車窓から。