テレビでは映らない、「せり」のあれこれをご紹介!
「せり(競り)」ってなに??
そもそもせりとは、漁や釣り等で獲られた魚を誰がいくらで買うか、その取引きする作業のことをさします。
漁師(生産者)が魚を獲ってきて、卸売業者(買い手)が欲しい魚にどんどん高い値段をつけていく競争です。
その魚を買いたい人がいればいるほど値段は高騰していきます。
市場によって多少せりの方法などは変わってきますが、今回は私のところの漁港でのせりの様子をご紹介していきます。
漁師が漁で魚を獲ってからせりをするまでの流れ
せりをするためには漁で獲ってきた魚を選別して、それぞれの重さを量り、種類ごとに並べる必要があります。
この選別では、魚を種類ごとに分けてそれをさらにサイズごとに分ける作業を行っています。
その日の漁獲量によりますが、大体1~2時間ほどかかります。(本当に少ない日は数十分で終わる時も…)
選別では量の多い魚もいればそうでない魚もいますが、量り方が違うのでそれぞれ説明していきます。
まずは量の多い魚から。
口だけで説明しても想像しにくいと思うので、まずはこちらの写真を見てください。
これはとある日のせり前の写真ですが、同じ種類のカツオがザルに入って並べられているのがわかります。
量が多い場合はザルが一つじゃ足りないので、「1ザル○○kg」と重さを揃えて量っていきます。この場合は確か45kgで統一していた気がします。
この重さですが、魚の種類によって多少変化しますが私のところでは大体45kgに揃えることが多いです。
量っていくと端数の分(写真の赤い〇の部分)がでるので、それだけはその重さを紙に書いてザルに張り付けます。
そしてこの写真では写っていませんが、同じ種類でもサイズが違えば値段も変わるので、ザルもサイズごとに変えます。
次に量の少ない魚の場合です。
量の少ない魚は先ほどの写真で出てきたオレンジ色のザルではなくて、ひと回り小さい青い丸かごを使って量ります。もしこの丸かごに収まりきれなかった場合はオレンジ色のザルに入れて量ります。
量の少ない場合はそれぞれの重さを紙に書いて見えるとことに貼っておきます。
この丸かごは大体数kg~10数kg、オレンジ色はそれ以上みたいな感じで使い分けます。魚体の大きな魚は丸かごだとはみ出てしまうので、その場合はオレンジ色のザルに入れます。
分かりにくいと思うので写真をどうぞ。
同じ種類でもサイズが違うのでそれぞれのザルの間の間隔は少し空けておきます。逆に、一つ前の写真でわかるようにサイズが同じ場合はくっつけて並べます。
せりの会場(市場)は室内と屋外がある
私のところでは魚市場は室内と屋外に分けられており、それぞれ魚の売り方が違います。
屋外では先ほど紹介したように数kg以上の魚をそれぞれのザルに入れて売りますが屋内の魚市場では活魚や数匹しかいない、先ほどよりももっと数の少ない魚を置いています。
室内と屋外で魚の状態や量は変わりますが、どちらも同時刻にせりは開始します。
また、魚体の大きな魚(マグロやブリ等)は一匹一匹重さを量って紙に書いて貼ります。
これらも、数が少ない場合は室内、多い場合は屋外で売ります。
ザルの並べ方は??
円滑にせりが進むように、ザルの並べ方も大体決まっています。
まずは同じ種類ごとに列を作り、さらにサイズが大きな魚を上手に置きます。
そうすることで大サイズからせりにかけられていくのです。
また、先ほども紹介した通り、大・中・小でそれぞれの間隔を少し空けておくとせり人も買い手も見やすくなります。
同サイズのザルが複数ある場合は1列10個に揃えて列を作っています。
ブリなどの魚体の大きな魚がたくさんいる場合も重さの重い魚体を上手に置きますが、身を傷つけないようにシート上に広げます。
せりが始まる順番は??
せりは毎日決まった時刻に開始しますが、全ての漁船で一斉に開始するわけではありません。それぞれの漁船を順番にまわっていくのです。
公正に行うために、せりが開始される順番は帰港した順番&選別が終わった船からです。
例えば、帰港した順番が
A→B→C→D→E
だとして、すべての漁船がせりの時刻までに選別及び計量が終わっていた場合は競りの順番もA→B→C→D→Eになります。
しかしBの漁船がせりの時刻までに選別及び計量が終わらなかった場合は
A→C→D→E→Bとなります。
もしくはCの漁船のせり中にBの漁船が選別及び計量が終わったらC→B→D→Eなど、間に入り込む場合もあります。
そのため、順番やそれぞれの船の漁獲量によっては、せりの開始時刻から10分以上経ってようやく順番がまわってくる、なんてこともあります。
せりでの売られ方は??
せりでは「〇円/kg(1kgあたり〇円)」のこの〇の部分を競争していきます。
例えばサバフグの小サイズが3kgあったとしたら、そのときの最も高い値段が500円だとしたら、500(円)×3kg=1500(円)が値段になります。
※この値段は今てきとうにつけただけです。
そして大体1ザルずつせりにかけられていきます。
しかし1枚目の写真のように同じ種類・サイズのザルが2つ以上あった場合は、買い手がまとめて複数のザルを買うことも少なくありません。
買い手がまとめて買って余った分をさらにせりにかけるのです。
例:カツオのザルが10コあったとして、買い手Aが最も高い値をつけてまとめて5個のザルを買ったら、残りの5個のザルをまたせりにかけるのです。そしてそのせりで最も高い値を付けた買い手が買って余った分をまたせりにかけていきます。
やはり最初の方が少し値段は高くなります。(需要が高いため)
魚体の大きな魚(マグロやブリなど)は1匹ずつせりにかけられます。
しかし最後の方の痩せている魚体はまとめて取引されることもあります。
また値段の付け方もkgあたりの値段ではなく、1匹の値段で取引されます。
選別が早く終わってせりまで時間に余裕がある場合
最近は特にそうですが、漁獲量が少ないと選別に要する時間も減ります。
そうするとせりまで時間に余裕ができるので、魚の鮮度を落とさないような工夫が必要になります。
写真は漁獲量が少ない時の様子ですが、漁獲量が多いとオレンジ色のタンクを増やしたり、さらに量が多い時はこのオレンジ色よりも大きいタンク(子ども用プールくらいの大きさ)に氷と一緒に入れておきます。
こうすることで鮮度を維持できるのです。
せりでの独特な掛け声&ハンドサインについて
テレビでよく見かける築地でのせりのようす、はっきりいってあれを聞き取れる一般の方はほとんどいないと思います。というかそもそもあの独特な声賭け声は、一般の人が聞いてもわからないようにあえてあんな風に特徴のある言い方をしていると聞いたことがあります。
(そりゃそうですよね、原価を知られちゃ商売になりませんし。
そこらへんの服屋さんで仕入れ値を教えてくれる人なんていないですよね。)
私も最初は全く聞き取れませんでしたが、最近は耳が慣れてきて一部聞き取れるようになりました。
せりでは買い手のハンドサインとせり人(司会者的な役割の人)の掛け声で魚の値段が決められていきます。
まずせりの開始時刻になったら「ピーーー」という始まりの合図の笛がなります。そしてせり人と買い手が最初のせりが行われる漁船のところへ行き、せりを開始します。
最初にせり人が魚の種類や量、サイズを呼び上げてからせりを始めます。
せり人はそのときの最も高い値段を呼び上げ、買う値段を競わせます。
他に買い手が居ない場合は、その最も高い値段を付けた人に売り渡します。
この時の買い手のハンドサインも独特なので気になる人は「せり ハンドサイン」で調べるとでてくるのでぜひ!
ちなみにですが、買い手はせりが始まる前までに魚の下見を済ませているので、せりは円滑にかつ素早く行われます。
せり中に漁師が行っていること
せりでは主にせり人と買い手が仕事をしていますが、漁師もただ見ているだけではありません。
値段がつけられた魚から、その魚の買い手の業者のザルに移し替えたり(せり時は自分たちの船のザルを使っているので)、使わないザルを洗ったり後片付けをしています。
といっても選別の時ほど忙しくはありませんが。
せりが終わって後片付けもおわったらすべての作業が終了になります。
まとめ
今回はテレビでは映らないような部分を含めてせりのあれこれを紹介しましたが少しは伝わったでしょうか?
漁師は魚を獲るだけが仕事じゃないのも伝わったら嬉しいです。
そしてせり人の掛け声や買い手のハンドサインはぜひ現地でその目で実際に見てほしいくらい面白味があるので、せりを見学する機会があればぜひ!
いつもは主に漁のことしかのせていなかったですが、こうやって漁以外のことを言葉と写真で伝えようとすると難しいものがありますね。
ただ今回紹介したのはあくまで私のところの漁港の様子であって、ほかのところではまた違ったせりの様子をみることができるのもおもしろいですよね。
まだまだ漁師の紹介したい仕事はたくさんあるので、これからも写真と拙い文章で頑張って伝えていくのでどうぞ宜しくお願いします!