2019年の1月に香港と武漢に行ったおはなし②(全2話)
前回のお話はこちら→2019年の1月に香港と武漢に行ったおはなし①
広東省にある広州駅を20:12に出発したT180列車は順調に北へ向かっていた。
列車そのものは揺れも少なく快適だけれど、下段の老夫婦がなかなかすごい。おっちゃんは大音量で動画見るし、おばちゃんはでっかい声で電話するし。向かいのお兄さんは静かだなと思っていたら、夜中叫び出すし(寝言)。
仕方がないのでスマホにイヤホン繋いでネット回線で日本のラジオを聞きながら就寝。夜中2時前、衝陽の駅でおっちゃんがバンッ!と物凄い勢いで部屋の扉を開けたとき(たぶんホームにタバコ吸いに行った)以外はかなりよく寝れた。
朝、乗客が起きはじめて少しずつ車内が騒がしくなる。スピーカーからオルゴールのようなBGMが流れはじめる。知ってる曲だなぁと思ったら、なぜか徳永英明のレイニーブルーだった。
車掌がまたやって来て、きっぷを返してもらう。
広州から1069キロ。湖北省武漢市の武昌駅に到着。下段の老夫婦もここで降りた。ホームに降り立つとかなり寒い。広州で日中25度ほどあった気温が、武漢の朝は氷点下。
地下通路から駅を出て、武漢在住の友人(現在は帰国済み)と合流。早速朝ごはんを食べに行く。
武昌の駅前の地下はお店が立ち並んでいて、そのうち一軒に入ってみる。友人が適当に頼んでくれた。思ったより優しい味でなんだかホッとする。
食事をして、友人の家に荷物を置きに行く。タクシーで長江の長い橋を渡るのだが、空気が真っ白で対岸どころか川面すら見えない。
荷物を置いてシャワーを借りて、早速観光に繰り出すとする。
武漢を歩く
友人の家があるマンション近くから路線バスに乗る。タクシーにバス、トロリーバスも走っていてかなり交通量が多い。車内に降車ボタンがないと思ったら、中国の路線バスは全てのバス停に停まるらしい。なるほど。
想像以上に安全運転なバスに乗り、再び長江を渡って東側へ戻る。20分ほど乗ったであろうか。
まずは黄鶴楼公園。中国の有名観光地には政府によって等級がつけられていて、ここは最高級のAAAAA級。入場料80元。高い。友人が奢ってくれた。
公園を東側から入るとまずはひたすら山登り。よくわからない建物や岳飛像のあるエリアを抜けていく。東側の高台から黄鶴楼と長江を臨む。うっすら橋が見えてるけど、やはり対岸も川の水面も見えない。
黄鶴楼、近くに来るとかなり大きい。高さ50メートルくらいある。せっかくだから上まで階段で上がってみたけど、景色は相変わらずまっしろだった。ちなみにエレベーターは健常者は使えない。かなり疲れる。
とりあえず黄鶴楼から下山。5分ほど北へ。
ここは「户部巷」というエリア。歩きながらサクッと食べれるようなもの(小吃)を売る店がたくさんある。なかなか人がいて賑わっている。ちょうどお昼時、朝の麺がボリュームあったから空腹ってほどでもなかったけど、少しなにかつまんでみることに。
最初に食べたのは小龙虾。えびではなくザリガニ。湖北省は長江が流れているのはもちろん、やたら湖が多い。友人いわく、この辺の名物はザリガニ、レンコン、武昌魚(大きい淡水魚)。なんというか、地味すぎる。
ザリガニの味はというと、うまみのないエビのような感じ。中国人は好んでよく食べるらしいけど、喜んで食べるほどではないかな。とりあえず売店で買った雪花ビールで流し込む。
もうひとつ食べたのは臭豆腐。お隣湖南省長沙の名物の臭豆腐は黒い。湖南省生まれの毛沢東も愛したとか愛さなかったとか。揚げた臭豆腐に穴を開けて、そこに調味液やパクチーを入れる。当然臭い。また雪花ビールで流し込む。
軽く食べたので次なる場所へ移動する。
道すがら、歩道橋の上にいた。絶対だめなやつ。本家顔負けのサービス精神で通りすがりの家族連れとバンバン写真を撮っている。へにょっと折れた耳がいい味を出している。
途中毛沢東の旧居の案内があったけど、友達は興味ないとかで却下。
次に行くのは武昌起义纪念馆(武昌起義紀念館)。清王朝が倒された辛亥革命のきっかけとなった武昌起義(武昌蜂起)に関する資料館。赤レンガの建物がかなり目を引く。入口に大きな孫文(孫中山)の像があると、台湾好きの自分としてはどうしても中華民國(台湾)の象徴に見えてしまうけれど、王政を打倒したという意味では大陸においても讃えられるべき存在なのだろうか。
孫文は一時的に日本に亡命したりと日本と関わりが多い人だ。実際この紀念館にも日本から要人が何度も訪問しているみたいだ。
紀念館の次は少しタクシーで移動して、楚河漢街というエリアへ。香港に引き続きまた小米のお店を訪ねる。この「小米之家 武汉楚河汉街旗舰店(武漢楚河漢街旗艦店)」は中国でもトップクラスの規模の店舗。吹き抜けで複数階にフロアがある。
小米の店ではいつもイヤホンを買うことが多いけれど、今回はイヤホンと小さいスマートウォッチ(日本円で2700円くらい)も購入。友達も同じスマートウォッチの交通カード対応版を買っていた。
買い物をして楚河漢街ぶらり。楚河漢街は2つの湖の間に引いた人工の川に沿って作られたショッピング街。建物も中華民国時代をテーマに統一されたデザインでかなりおしゃれ。GAPやZARAのような外資系アパレルブランドが中心で、無印やユニクロなんかもある。
通りのちょうど真ん中くらいにある「万达广场(万達広場)」というショッピングセンターに立ち寄る。ここと楚河漢街を作ったのが万达集团(ワンダグループ)。FIFAのスポンサーでワールドカップの試合に「万达wanda」という広告を出しているからサッカー好きなら見たことがある人もいるかも。
歩き疲れたのでスタバで小休止。友達とスタバなんて高校生みたいだなと思った。中国のスタバはちょっと高い。普通のラテで500円近くしたような気が。
一息ついて、タクシーで湖北省博物館へ。
大きい。人が多い。そして無料。子供から年配の人までかなりいる。見学しているというか滞留している。
とはいえ、省レベルの博物館とあなどってはいけなかった。かなりの充実ぶり。紀元前のものなんかが普通に陳列されているのを見ると、中国の歴史の長さをまじまじと思い知らされる。
小指の先くらい小さな彫刻品から大きな銅鑼みたいなものまでジャンルはいろいろ。説明も中国語で完璧にわかる訳じゃないけど、かなり見ごたえがあった。
博物館は東湖という湖の横にあるので、次はMobikeというシェアサイクルを借りて散策に繰り出すことにした。
途中武漢大学の構内へ進入。武漢は人口あたりの学生の率が高い、京都のような学生の街だそうだ。構内には団地のような学生寮が数えきれないほど並んでいる。一画にはスーパーやら銀行やら食堂なんかもあり、ひとつの街のようだった。武漢大学、春は桜の名所になるらしい。一度行ってみたい。
かれこれ1時間ほどサイクリングをして、街道口という地下鉄の駅で返却。地下鉄で友人の部屋に戻り夕食へ。部屋から歩いて近くの火鍋屋さんへ行く。
阿星豆捞火锅というのがお店の名前。個人店なのかチェーンなのかもよくわからない。けれど、店内は思った以上に清潔でちょっと安心。適当に見繕ってオーダー。中華圏の火鍋店はタレを自分で作れるコーナーがあるから素晴らしい。
麻辣ともうひとつなんの鍋だったか忘れたが、どちらもかなり美味しい。麻辣鍋というと、鴨血という鴨(中華圏ではアヒル)の血を固めたゼリー状のものを鍋に入れるのが好きなのだが、思った以上にフレッシュで真っ赤なものがテーブルに来たのでびっくり。鍋に入れると赤黒いいつもの色になる。
一品あたりの量が多くて平らげるのに四苦八苦。日本の鍋料理店だと野菜盛り合わせみたいな大皿にひとつの種類の野菜がどーんと乗っている感じ。
それにしても辛い鍋と雪花ビールみたいなライトなビールはよく合う。中国=青島ビールって思ってたけど、飲食店は雪花ビールがかなり多いんだな。勉強になった。
武漢2日目
日曜日。とりあえずまずは朝ごはん。
名もない路面店で朝食。牛肉麺かなんか。温かい麺は寒い朝にぴったり。これで数十円とか百円とかの世界。武漢は中国の中でも朝食の街らしく、忙しい朝に安く早く食べれる朝食のお店がたくさんある。台湾慣れした自分からすると親近感がわく。
近くの工事現場に貼ってあったこれ。左のマークとキャラクターは2019年10月に開催される世界軍人運動会のものらしい。軍隊がない日本では知名度の低い大会だけれど、世界では知られているとか。友人が言うに、大会に習近平が来るからあちこち工事しているんだそう。
右のスローガンは中国どこにでもある「社会主义核心价值观(社会主義核心価値観)」というやつ。街歩いてたら10分おきくらいに見かけそう。なんなら覚えてしまいそうだ。上からそれぞれ4つずつ、国家、社会、個人が目標とすべき価値観らしい。よくわからんけど。
さて翌日は友人は仕事で自分は帰国。この日が実質最終日。この日は友人の日用品の買い物と自分のお土産の買い物を兼ねてイオンモールに行くことに。
武漢にはいくつかイオンモールがあるらしく、そのうち特に大きいという「永旺梦乐城武汉经开(イオンモール武漢経開)」というところへ行く。市内を回る無料巡回バスの始発を拾う。途中漢江という長江の支流を橋で渡る。広い河、相変わらず真っ白で対岸が見えない。
バスが到着すると同時に開店。中に入るとほぼ日本のイオンモールだった。日本の飲食店なんかもかなり多い。
とりあえず食品売り場へ。日本の食品もかなりある。なぜか白い恋人とじゃがポックルも。友人は調味料やら即席麺なんかを買っていた。自分はちょっとしたお菓子とお茶とビールを買う。青島ビールが安売りされていて、6本パックで200円くらいだった。
買い物を一通り済ませお昼を食べることにする。巨大過ぎる(延床だと豊洲のららぽーとの約1.7倍)ので飲食店もかなり多い。ジャンルも豊富でかなり迷う。
何を思ったか変わり種ってことでウイグル料理へ。羊(ヤギかも)の串とチャーハンとスープ。香辛料が効いていてかなり美味しい。新疆の黒ビールがかなり進む味だ。ちなみに店員さんはどうみても漢族でした。
食事をしてまたイオンモールを見て回ってお茶をして。旅の疲れからか体調が悪くなったので部屋に帰還する。友人にも迷惑かけてしまったな。笑ってたけど。
気づけば夜。外は真っ暗。相変わらずスモッグがすごい。
数時間寝たらだいぶ体調が戻ってきたので夕食へ。遠出はきついでしょと気遣ってもらい近くの新世界酒店(新世界ホテル)のレストランへ。
「楚中餐厅」という中国料理のお店。青島ビールと何個か料理を注文。日本人をはじめ外国人の利用が多いらしく、洗練された料理とおもてなし。かなり拍子抜け。
公式サイトの写真。このまんまだった。客も自分たちだけでそわそわ。中国にいるのに中華街で高級中華食べてる気分。味は間違いなく美味しかった。えび餃子ぷりぷり。
ごはん食べたら結構元気になったので夜の街を散策することにした。だいぶ心配されたけど。
バスで武漢で一番の繁華街江汉路(江漢路)へ。江漢路は広い歩行者天国でかなりの人だ。買い物するわけではないのでそのまま長江のほとりへ。
相変わらずガスっているけれど対岸がきれいに見えた。河原の公園はかなり整備されていて、夜の時間でもかなり人がいる。若い人たちが広場でスケボーやらダンスの練習しているのを見ると、どこの国も同じだなと思う。
このあたりは過去に租界があったエリアで、当時の建物が今も保存、活用されている。ちょうどこのあたりはイギリスの租界だった場所。大きい建物はたいてい元は商館か銀行。旧横浜正金銀行なんてのもある。
江汉关(江漢関)。イギリスの税関(たぶん)。今は博物館になっている。ここから西へ江漢路がはじまっている。とりあえず見るものも見たし、来た道をのんびら戻って江漢路の地下鉄駅へ。もう地下鉄の安全検査も手慣れたものだ。
部屋の近くの一芳でお茶買って帰還。帰国の準備をして寝ることにする。
武漢から帰国
月曜日の朝。友達は出勤、私は帰国。
とりあえず準備をして朝ごはんへ。私はスーツケースを転がしながら。
昨日の店で武漢名物の热干面(熱乾麺)をいただく。茹で置きの麺をさっと湯にくぐらせて、調味料をかけて出来上がり。ゴマだれがかなり美味しくて、日本人が大好きな味だ。これが100円しないで食べれるなんて最高だな。
お店の前で友人と別れる。飛行機はお昼なのでのんびりと空港に向かう。
近くのローソンに立ち寄ってちょっと買い物をして、タクシーを拾う。今までは友達が拾ってくれたけど、ひとりで中国のタクシーははじめてだ。なるべくきれいなタクシーを探そうと待って見るんだけど、通りすがりの車が停まっては声をかけてくる(何言ってるかわからないけど)。ちょっと待ってみたけど、きれいなタクシーなんていなかったんだ、そもそも。仕方なく次に来たタクシーの窓に顔を突っ込み「汉口火车站(漢口駅)!」と叫ぶ。頷いたのでトランクに荷物を放り込んで車内に乗り込む。
武漢のタクシーはほんとにまんまこれが来る。シトロエンって決まってるらしい。総じてボロで汚い。内装をガムテープで補強してあったりもする。最後に乗ったこのタクシーもほどほどに汚くて、タバコを指に挟みながら巧みにハンドルまわすドライバーだった。ここまで来るとちょっとおもしろい。
車の間を器用に縫って走っていく、ある意味スムーズな運転で漢口駅にやってきた。昔の駅のデザインをモチーフにしたとかいう駅舎はなかなか威風堂々とした佇まい。
空港に直接地下鉄で向かってもよかったけれど、漢口駅から高速鉄道で行くことに。相変わらず無愛想な窓口できっぷを買って、時間まで駅前のマックでのんびりする。
店内で白酒の小瓶持ったおじいさんに絡まれた以外は、日本のマックと変わらない風景。固めのスクランブルエッグが挟まったバーガーも普通においしい。
おじいさんを撃退しながら、なんやかんや1時間ほどいて駅の中へ。駅舎は天井が高く、かなり解放感のある待ち合いスペースだ。ここにもマックやら飲食店がたくさんあった。
お店を物色していたら改札がはじまったのでホーム行く。
漢口から武汉天河国际机场(武漢天河国際空港)まではこの列車で12分くらい。運賃は7元。車内は日本の新幹線と同じ感じでした。距離も時間も短いとはいえ、高速鉄道らしくかなりの速度で走る。
あっという間に天河空港駅到着。下車してターミナルへあがって行く。
国際線の行き先がかなり豊富。パリ、ロンドン、アメリカ方面もある。パリはシトロエンが武漢に工場あるからだよ、と後日友人談。あのボロタクシーか。
カウンターに向かうとチェックインがはじまっていた。成田へは香港経由で帰るのでチケットを二枚もらい、トランジットの案内をもらう。とはいえ荷物を預けてしまえば空港でやることもないのでさっさと中に入る。「国际 港澳台 出发」の案内に沿って進んでいく。
この空港の安全検査はかなり厳しい。電子機器のバッテリーも確認されるし、ベルトやズボンの裾の裏まで確認される。今までの地下鉄と鉄道駅の検査がザル過ぎて、この落差よ。
とにかく真っ白で無機質な空港。とてもきれいだからいいんだけれど。トイレもかなりきれいで、手洗い場の鏡にモニターが組み込まれていて天気予報が表示されていた。中国の発想力よ。
11:35発キャセイドラゴン航空KA853便で香港は13:45着。そこからタイトな乗り継ぎを挟んで15:20発キャセイパシフィック航空CX500便へ。成田には20:30位に帰って来た。香港からの便はほぼ満席で、かなり日本人が多かった。
席が離れた若い女性2人連れの片割れが隣の席にやって来て席を代わってほしいと言ってくるも、移動する先が20列ほど後ろだったので丁重にお断わり。断られることを予期してなかったのかすごい不満な反応されたのが解せない。気まずい感じで隣の席なのもちょっと嫌だし、その後の態度もよろしくなくて最後の最後になんだかなぁという気分。気を紛らわすためいいだけ飲んでやった。結果満足ってことで。
最後に
武漢訪問からまるっと一年。当時、武漢とはどこにあるどんな街かを説明しなきゃいけなかったのに、まさかこんなことで有名になってしまうとは予想がつかなかった。観光地としてはマイナーだけれども、またいつか自由に訪れることができる日が来ることを願って。
おしまい。
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