『完璧』
「ほんっと、完璧だよね。」
「んー、なにが?」
彼が何のことを言っているかわかっているはずの私は、敢えてぼんやりと答える。
冬は嫌いだ。
寒さに滅法弱い私は、どうしても籠りがちになる。
コタツでミカンなんて食べた日には、その罪深さに辟易する。
そんな私を尻目に雪見だいふくを頬張る彼をじっと見て、気楽なもんだよ、と思う。
「え、なになに?」
まずい、無意識に口に出ていたらしい。
***
私は自覚している。何かと完璧を求めすぎることを。
自分にはもちろん、人にも、だ。
それが災いしてか、同僚とは度々ぶつかるし、彼氏は3年半いないまま。
私はこのまま冬とともに枯れてしまうのだろうか。
うとうとしていた彼は、きっと水風船みたいになっているであろう溶けかけた雪見だいふくを一気に口に放り込む。
そしてまた、うとうとうとうと。
***
来年こそは ー
天井の蛍光灯を眺めながら、その言葉を頭の中で打ち消す。
いいじゃないか。そのままで。完璧を求めても。
来年も ー
私が私でありますように。
彼が、完璧だよね、と評した雪の結晶に負けないように。