浮くんなら、いっそ飛べ!【ひとことお題07】
毎日「ひとことお題」、本日は『浮く』
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その職場は、お昼はみんな一緒に休憩室で食べるという文化だった。
休憩開始と同時につけられるテレビからの騒々しいワイドショーの音声をBGMに、話題はいつも知らないドラマと子供の話だ。
ふだんテレビを見ず、子供もいないわたしに取りたい話題のお皿は一向に回ってくる気配がなく、いつしか取ること自体をあきらめてしまった。
興味ありげな素振りと愛想笑いを浮かべながら、黙々と食べ物を口に運ぶ。
まれにこちらに皿が差し出されるときがある。
そういえば、こないだのお休みはどこへ行ったの?またライブ?
そんなとき私は「ライブ好きで食いしんぼうで、イベントや楽しいことが大好きで、お休みは必ず外にでかけるアウトドア人間」というキャラとして、慎重に話題を皿に乗せた。
あまりどぎつい色や音のついたものを乗せてしまわないように。引かれないように調子に乗って話しすぎてしまわないように。エピソードは出来る限り万人受けするものを選び、わかりやすい言葉を使って、勢いがつきすぎないよう分量と声量を制御しながら。
そうして話題もみんなの興味も尽きていつもの流れに戻ると、気づかれないようにため息をついた。弁当はとっくに食べ終わっている。ここからは、残りの休憩時間をどうやり過ごすか考えなくてはならない・・・
カラーが違うというけれど、あの淡いパステルカラーの午後に、くっきりとした原色のわたしはどうしようもなく浮いていた。
混ざりたかったわけではきっとない。
だけどそんなふうに浮きたかったわけでもなかった。
でも、どうしたって浮いてしまうというんなら、それはいつまでも抑えつけておくべきではないんだろう。だから、この職場を飛び出した自分の選択は正解だったと今は確信している。
私の推しであるホークスもこう言っている。
浮くんなら、いっそ飛べ!
おわり
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