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「ペットのヘビが食事をせずまっすぐになるのは飼い主を食べられるサイズか測るため」は本当か
「蛇が食事をしなくなった衝撃の理由」
— 諸隈元シュタイン (@moroQma) May 18, 2019
大蛇と仲よく暮らしてる写真や映像を見る度に、この話を思い出して笑えなくなってしまう
もちろん同時に
「ライオンが話したとしても、我々はライオンを理解できないであろう」探究 Ⅱ xi
というヴィトゲンシュタインの言葉も思い出してニヤついてしまうのだが pic.twitter.com/AiiDkXszYk
ネット上でたまに目にする話。細部に違いはあるが、概ねこのようなエピソードとして知られている。
一緒に暮らしてかわいがっていたペットのパイソン(大蛇)が、急に数週間も食事をしなくなってしまった。体を真っ直ぐにしたまま横たわって動かないので心配になり、獣医に相談すると、医師はこう告げた。
「あなたのパイソンは、あなたを食べられるかどうか体を使って測っていたのです」
妙によく出来た話だけど、これは本当なんだろうか。
「パイソンは体をまっすぐにしてサイズを測る」はたぶん嘘
ちょっと調べてみたけど、やっぱりこの話は嘘っぽい。
このパイソンの生態が事実だとしたら、生物系のサイトなどでもっと具体的な事例が出てきそうなものだけど、けっこう調べたのに出てこなかった。そのかわりに、以下のことがわかった。
蛇がある程度絶食するのは普通
多くの蛇は、獲物を捕食したらゆっくりと時間をかけて消化する。そのため、成体であれば10日程度なにも食べないのは普通。「何も食べなくなった」ことで焦るのは、パイソンの飼い主として少し不自然。
対象物を食べられるかどうかを体をまっすぐにして測ることはない
蛇の身体器官は、そういう測定をできるようにはなっていない。また、大きな獲物を無理に飲み込んで腹が裂けてしまう蛇がいたりするので、そもそも蛇は獲物を飲み込むときにサイズをあまり気にしていない。体をまっすぐにすることは普通にあるという。
蛇が人間を殺して飲み込むことはある
4メートル~7メートル級の大蛇の餌食に人間がなってしまう事例は実際に確認されている。しかし、蛇が飲み込むための準備期間を設けるようなことはない。また、人を飲めるサイズの蛇はペットとして飼うには大きすぎるし、危険すぎる。放し飼いにする人はいないだろう。
蛇は人間になつかない
犬や猫のように蛇が人間になつくことはない。以前会った爬虫類マニアの人も「慣れることはあっても、なつくことはない」と言っていた。外敵ではないことを認識してくれる可能性はあっても、すり寄って甘えてきたりすることはない。だからペットの蛇といえど、毒を持ってたり大きかったりする蛇に油断してはいけない。
ということで、やっぱり「まっすぐになる蛇」のエピソードが本当にあったことである可能性は低いと思う。
どこから生まれた噂なのか
この話、私が見てきた限りでも3回はバズっている。
女優の仲里依紗さんはこの話を、共演したスウェーデン人女優から「おばさんの身に起こった話」として聞いたと書いている(現在、当該記事は削除済み)。
ある漫画家さんから聞いた話。その方の知人が大蛇をペットに飼っていて、ある日飼い主の人がリビングで寝そべっていたら、いつもはトグロを巻いて寝ている大蛇がその人に沿うようにまっすぐ伸びている。病気かと思って獣医に電話したら「すぐ離れてください。あなたを飲めるかどうか体で測っています」
— 後藤羽矢子 (@hayakogoto) April 20, 2012
漫画家の後藤羽矢子さんのツイート(2012年)は10000RT以上に達している。
こんな感じで、あちこちで定期的に話題にのぼるのが「まっすぐになる大蛇(パイソン)」なのだ。
ちょっと検索しても、10年近く前には同型の話題が出てくる。以下は2009年3月のヤフー知恵袋。
アメリカの友人から聞いた話です。
ペットのヘビ(パイソン)が餌を食べなくなりトグロも巻かなく真っ直ぐ(棒状)になったので心配で獣医に聞いたところ捕食のために飼い主を食べられるかどうか測っていて危険なのですぐに手放しなさいと言われたそうです。
本当にヘビはこのようなことをするのでしょうか?
(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1023944425)
「アメリカの友人から聞いた話」とあるので、話の源流をたどるとやはり英語圏に行くようだ。英語で検索すると、たとえば以下のようなサイトが出てくる。
ネットの噂を検証するようなサイトだ。このサイト自体の信憑性はともかく、ここでは「嘘」と断じられている。興味深いのは、このサイトでも、話の出どころが「友人の友人の友人から聞いた話で…」と書かれていることだ。かなり初期から「又聞き」の形態をとって広まっているのだろう。
2008年ごろに広まった噂
調べた限りだと、2008年ごろに更新された英語圏サイトにこの話が載っているのが確認できた。日本に和訳されて入ってきたのはおそらく2009年ごろ。いまは消えてしまっているサイトもあるかもしれないが、だいたい10年ちょっとの歴史がある都市伝説とみていいのではないかと思う。
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