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「たったいま、指導者はお亡くなりになりました」 横たわる亡骸を見下ろしながら、ベッドを囲む数人の男たちが悲嘆の息を漏らした。 「ああ、そんな……」 「まだ信じられない。我々の偉大なる指導者が永遠に失われたなんて」 「こんなに、今にも目を覚ましそうなのに」 「終末期は病に冒されひどく苦しんでおられましたが、最後はなるべく安らかな顔で逝きたいとのことでしたので」 独裁者の最期を看取ったカスタ博士は、使い終えた注射器のシリンダーを片付けながら訥々と答える。 「おそ
「では、これから撮影の方を始めさせていただきます」 ディレクターはせわしなく動くスタッフたちを横目に据えながら、これまで何度も繰り返してきた言葉を述べた。 「映像はこちらで後に編集しますから、ゆっくり思いつくままにお話しいただければと思います。雑談をするつもりで」 「はいはい。雑談のつもりで、ね」 車椅子の老人は力なく繰り返し、それを見たディレクターは撮影のスタートを命じた。 老人の下に「岩永亮介さん(74)」というテロップが表示される。 「あの日からもう、週
~事務所~ ペンローズの三角形「あの……大事なお話ってなんでしょうか? もしかしてクビでしょうか、そうですよね、やっぱり私なんか……」 「ははは、相変わらずネガティブだな、ペンローズの三角形は。むしろ嬉しい知らせだよ。今度のライブで、ペンローズの三角形にセンターをやってもらおうと思ったんだ」 ペンローズの三角形「ええっ、私がセンター……ですか!?」 四角すい「マジか! よかったじゃん、ペンローズの三角形!」 球「ペンローズの三角形ちゃんならセンターできるって、私、信