主人公に不快感を与え続けられるアニメ、バクマン。

皆様はジャンプにて掲載されていたバクマン。という作品をご存知だろうか。

原作・大場つぐみ、作画・小畑健

ペンを握っている男、真城最高(ましろもりたか)は、左の金髪眼鏡の高木秋人(たかぎあきと)に誘われて亜城木夢叶というペンネームで2人で漫画を描くことになる。

漫画家になり、アニメ化まで成功したら想い人である亜豆美保(あずきみほ)と婚約する!という約束を交わし、最高は厳しい漫画の道へと踏み入れることになる…。

というのが基本的なあらすじで、ラブコメ有りの漫画を描いて最終目標である"アニメ化"へと近づいたり、時には離れたりするという単純明快な漫画である。

今回は原作ではなく、アニメ版をシーズン2まで視聴して、なんとも初めての気持ちになって誰かにこの作品を伝えたくなったので、ここに書き殴る。

最初に言っておくが、私がバクマン。を視聴して思ったことは、ジャンプ誌に残る不快な主人公と、それを取り巻く最高のモブキャラたちという感想だった。

決して駄作と言うほどのものではないし、事実として主人公たちが漫画描いてる時はめちゃくちゃ面白い。
ただ、何かしらの問題にぶつかったり、作品以外の人間関係という話になっていくと、如実に問題点が浮き彫りになり、主人公やその他キャラに愛着が湧かなくなっていく…というのも私個人としてはあった。

良い点、悪い点を個人的に総括していこうと思う。

【良い点】福田組のキャラ付け

漫画家として関わることになる福田、平丸、新妻エイジのキャラ付けは個人的に大好きだった。
後ほど悪い点として挙げてしまうが、初期の中井さん(30代で連載が0本)も"遅咲きだが、福田組の熱に当てられて、漫画に取り組むようになったプロアシスタント"として良い描かれ方をされており、ドブ川にいた彼が連載を獲得して喜んでいるのを見ると「主人公たちがもしこのまま連載を持てずに30代になっても、この熱意を持てば夢は叶うかもしれない」という希望を持たせてくれるキャラクターとなっていた。

福田も、口が悪く荒々しいが非常に仲間想いという分かりやすいキャラクターで、平丸は「漫画が大好きで漫画家になった天才の新妻エイジ」と対照になる「漫画について何も知らない、わからないけどお金が貰えるからやっている」という、ある種のヘイトを買いそうな異質なキャラではあるが、こちらも分かりやすいキャラクターである。

新妻エイジも奇声こそ上げるものの、それらは福田の荒々しい口調であったり、平丸の「漫画を描きたくない」というキャラ付けの一種であり、本質は「漫画がとても好きで、主人公・亜城木夢叶の漫画がとくに好き、なので同じ本に連載されて勝負することで最高の漫画を描きたい」という、分かりやすい漫画ジャンキーである。

現実と乖離しているこれらの要素はキャラクターの個性として理解できるものであり、基本的には(平丸以外の)全員が「漫画を描きたい」という前提で成り立っていて、その夢に直進してくれるため、行動の動機が分かりやすいのもポイントだと思っている。

問題点を挙げるとするなら、彼らは仲間でありながら戦う相手、ライバルでもあり、福田も「仲間と描いて、ルビはライバル」と言っているのだが、主人公が連載開始したらすぐに「おめでとう!俺も負けねえからな!!!」と電話を入れてきたり、正直良い奴が多いので、倒すべき敵という目で見れないと言ったところだろうか。

しかしこの作品において性格で不快感を抱かないのはレアな存在なので、絶対の評価点としていいだろう。

【良い点】編集と漫画周り

漫画で漫画の話をされるのは、それが創作であってもリアリティがあるというものである。
事実としてバクマンが掲載されていた頃はインターネットに"編集者気取り"がたくさん湧いたという記述が掲示板で散見される(実際どうなのかは分からないが)

アンケートのランキングの順番に掲載順が決まっている。という話や、シリアスな笑いの下りなど、漫画に関しての話はやはり面白く、それが如実に出てくる編集者と主人公の絡みはバクマンで一番面白い瞬間だ。

特に、編集と作戦会議をしている時は「そういう手もあるのか」「漫画ってそうなんだ」という気付きを与えてくれて、見ていて退屈しない。
この点と人格者であるという点から、バクマンを見た人で服部さんが嫌いな人はいないとまで言えるレベルだ。

個人的には港浦もなんだかんだ好きだった。

【悪い点】キャラの改変

さっきも言ったが、私は初期の中井さんが好きだ。


右が中井さん、左の女が碧樹コウ

中井さんは見ての通り、創作物でなんでこんな竿役の顔面みなきゃいけねえんだよ。と言いたくなるレベルで汚い顔面に、デブのお釣りがついてくるという最悪のビジュアル、しかも三十路で連載経験無しのプロアシスタントとかいう終わりの人間だ。

実力は確かで、資料無しに背景を完璧に描けるという凄まじい特技を持つ。

ある日、左の碧木コウ(変換面倒なので碧木表記で)が原作を手がける「hideout door」の作画担当として抜擢され、連載経験に白星が1つ付くチャンスが到来する。ついでに碧木さんに惚れる。

周りから「まるで絵画だ」とまで言わせるほどの画力と表現力で「hideout door」を引き上げるが、ギリギリ連載には届かず、「これ悪いのシナリオじゃなくて絵じゃね?」と思い込んだ碧木コウに見限られてしまう。

中井さんはショックを受けて碧木さんのところへ突撃し「俺が悪いならもっと絵を上達させる!だからもう一度俺と描いてくれ!」と説得。
「口だけならなんとでも言えます。」と碧木さんに反論されるも中井さんは

「じゃあ毎日アパートの前の公園で描く!!窓から見れるだ ローーーーー」

と極寒の冬の中、雪が降ろうと、不良に殴られようと外のベンチで描き続けました。

それは、碧木さんの原作にとてつもなく惚れ込んでいたから(福田談)であり、どうしても作画を担当したかったから。

この努力の甲斐あって碧木さんに認められ、また2人で漫画を描くことになり、hideout doorは連載までこぎつけるのですが…

ここからの中井さんの変貌ぶりに射精しました。

①hideout doorが打ち切りになりそうな時に編集者に「話を変えてくれ」といわれる碧木・中井ペア。
碧木コウは「嫌です。そこまで変えたいなら中井さんと編集さん2人で原作やってください。」とキレる。
それに対して中井さんは「え!!?!?僕が原作やっていいの!!?いいならやります!!!!!!」

???????

お前碧木の原作に惚れ込んでたんちゃうんか?
百歩譲って「連載を止めたら自分が終わりだから、連載に拘るあまり言ってしまった」なら分かります。
しかしそう考えるとこの後と矛盾します。

②碧木コウと再び漫画描けるチャンス来たのに女を優先

hideout door打ち切り後、中井さんはアシスタントとして再度働きます。
アシスタントとして就いた場所で、同じくアシスタントの女の子、30代と同年代の加藤さんに恋をしてチクチク毎日話しかけます。

毎日加藤さんにセクハラして過ごしてた中井は、ある日福田から「碧木コウの作画やらないか?」と聞かれます。

それに対し中井さんは「ここの仕事場が楽しいから嫌だ」と否定します。


しかも根拠に「碧木さんとは釣り合わないから」とか言ってのけます。
つまりここの中井さんの心理的には「女>漫画」であり、連載よりも可愛い女と付き合えた方が良いわけです。

そして最終的には碧木さんに呼び出されて



これです。

なあ、マジで誰?

こいつ極寒の寒空の中で漫画描いてた原作に惚れた男か?
女とワンチャンだけ狙うなら「僕が原作やってもいいですか?」なんて口が裂けても言う訳ないし、こんな「自分が選べる側にある」と思っている精神性なら寒空の下で不良にぼこされながら漫画なんて描いてられないと思うんですよ。

初期中井さんは「自分にはワンチャンが無い、"無い側"の人間だ」と自覚した上で碧木さんに腰低くしながら関わってるし、亜城木夢叶やその他福田組、新妻エイジにもマウントを取るような事は言わない常識人側の人間として描かれていました。

それが「僕と碧木さんでは釣り合わないw」とほざいたあと「迷ってんすよね。どっち取る、かW」とか言った矛盾の塊のようなムーブするわけないんですよね。

漫画を取る人間なら碧木さんとも秒で復活してコンビ組むし、逆に女を取るなら碧木さんを否定してでも漫画を続けさせようとする発言は出ないはずです。

そこらへんの改変がちぐはぐで「意図的に悪く描いてやろう」というのが透けてるのも萎えポイントです。
しかもそれを中井さんでやるのがガチでしょうもないです。良いキャラだっただろ普通に。

【悪い点】最悪な主人公、真城最高

バクマン。を見てきてこいつを好きになれたことが一度もありません。
本当に下痢以下の性格をしています。具体的には

◯相棒の高木秋人が誰かと話してる時に「なあ!」と話を遮って自分の方に呼びつける。謝罪なし。

◯「編集者には当たり外れがある」という叔父から聞いた信憑性のない自論を信じこみ、編集者をひたすら「こいつは当たりか…?w」と値踏みしまくる。謝罪なし。

◯自分の責任で入院することになり、休載を余儀なくされてもキレる。「連載落としたら大変だろ!!!!」と相棒の秋人をパシリに使い、病院に原稿を持ってこさせる。謝罪なし。

◯編集者に「ギャグ漫画を描こう」と言われたら「秋人にギャグを描かせるのは向いてない!前の編集者や新妻エイジも言ってた!」と否定しまくる。
→編集者と口論になりファミレスから退出、その後の帰路で「いや、でもギャグ描いてもいいかなとは思ってた」とほざき出す。意味分からん
→→しかもその後の帰路で自分が振り回したのにも関わらず「あの編集は駄目だなW熱くなりすぎだろW」と悪態をつきまくる。
謝罪なし。

◯相棒の秋人の結婚式で会った前の担当編集の服部さんに「今俺が描いてる漫画がつまんないならやめちまえって言ってくださいよ!!!!!!!!!!」と叫ぶ。
普通にスピーチ中に叫ぶ。結婚式の空気を壊す。これについて謝罪無し。

◯秋人が原作を描くのを夏休み中にやる!と豪語したがスランプで出来なかった。
→最高「秋人のやつ、本当に原作描いてるんだろうな?????」
→→たまたま秋人が彼女とキスしてるところを見たり、電話をかけたらたまたま彼女の家にいることで邪推。「お前ネームほったらかして女と遊んでるだろ!!!!」
→→→その後、最高の彼女の亜豆がヘラってることを知り、最高は"連載中の作品を落としてでも"亜豆に会いに行こうとする。
お前じゃあ何でキレたの?

とこのように思いつく限りでも無限に自己中エピソードがあるのが真城最高であり、それに振り回されながらYesマンをしているのが高木秋人という構造になっている。

個人的にここまで不愉快な主人公は見たことがない。

我が強く、他者を値踏みすることも厭わず、自己中で、しかも平気で人の事をバカにする割に、自分が同じ事をされたらキレるうんこの塊のような存在である。

まだ不快な点はいくらでもあるが、ネガキャンしたいわけでもないので今日はこの辺で。

ぜひバクマン、見てください。

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