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人事領域でのAI Agent活用考察について
AI Agentsの2025年予測
AI Agentsは2025年内に実用レベルで本来的活用を体験するのは難しい領域で、少なくとも現時点で国内スタートアップ企業がキラーユースケースを見つける難易度は容易ではないと考えている。
Blockchain技術の消費者生活的な普及経路を参考によく整理する。Blockchain技術の代表事例であるBitcoinは、消費生活の中では金融投資的興味からであった。それ以降幾度かの期待値バブルと崩壊を繰り返しながら、引いてみると金融インフラとして着実に世界的普及し続けている。その一方で技術者から見たとき、消費生活上の期待値バブルと崩壊にかかわらずBlockchain技術の革新は日々積み重なっている。
その後に同技術もNFTやICO、IEO、ブロックチェーンゲームなどでユースケース探しが続いているが、いずれも期待値バブルと崩壊を繰り返している。
LLM分野も消費者から見たときの普及経路は同様の進化形態を遂げるものだと推測する。
LLM技術の代表事例であるChatGPTが、技術者以外の消費者が日常的にR&Dの一端を感じることのできるアプリケーションとして彗星の如く現れた。消費者生活上でR&Dできる料金価額で提供できる程に競争が生まれた背景には、技術覇権国内での巨額のエクイティ・エコシステムがあり、その基礎研究は一部の覇権国での競争に依拠される事になった。
そのため2023/2024年は覇権国でのエクイティ・エコシステムはLLM技術の基礎モデルを提供する企業への投資が集中し、世界での投資金額の上位を占める事になった。
競争に参入できるのが一部国家の一部企業に限られる情勢が明らかになると、それらの企業以外のスタートアップ企業は、LLMをいかに活用するかのアプリケーションユースケースに興味関心が移り、そのユースケースの1つが画像/動画Generativeである時期もあれば、AI Agentsに今は関心が移っている。
画像/動画のGenerativeは既に多くのクリエイターがコンテンツを生成する際に活用場面が増えており、引いてみれば右肩上がってくるが、産業全体としてはエコノミクスが成立しにくかった。数多のスタートアップ企業が追加資金に恵まれずにキラーユースケースにはならなかった。
消費者はLLMモデル提供者に直接画像生成を依頼することで満足をし、スタートアップ企業側がLLM API利用料を超えて課金できるほどのユースケースを見つけるに至らなかったのである。
そのためエクイティ・エコシステムの世界でも、LLM API利用料を正当化できるほどのビジネスモデルを見つけることができるかどうかに関心が移り、LLMモデル自体の競争も去ることながら、どこに裾野の広い産業でユースケースが眠っているのかの発見探求に関心が移った。
実際に多くのSaaS企業がオプション機能としてのLLM APIコール型のアプリケーションを開発した時期が続いたが、GithubやAdobe製品などのクリエイターユースケース以外には然程利用が進まず、一時期ほどのアプリケーションR&Dが集中しない時期が続いた。
AI Agentsはその探究の中でようやくキラーユースケースになるのではと期待値が高まっている。
その特徴は、自律的に計画を立て、計画に対して自律的に必要なデータを取得し、複数Agent間でiterationしながら回答結果を導く事にある。例えば「消費者の満足度が最も高くなる」という目標に対し、自律的な計画、データ取得とイテレーション自体を行うことで消費者コールセンターが完全にAIが行う方が満足度が高いソフトウェアができるのではないかとの期待である。
ただ、実際にはタスク領域を狭く設定しなければ上記事例のように想像通りの期待実行にはならないこともわかりつつある。
そのため今後AI Agentにて自社業務を実装することを思案するのだろうが、実際には誤りが介在することが多く、実用テストの段階で従来までの業務の方がエラー発生頻度が少なく、AI Agentによる新しい業務フローに載せ替える企業は少ないであろう。
しばらくは生成AIスタートアップに対して大企業からのR&D的発注が続く状況と、SaaS企業側が自社製品の実行を上げるためにAgent実装を試みるシチュエーションが続く。結局多くの企業ではGenへの期待と同様に、Agentへの期待値が下がってくるのであろうと想定する。範囲が広いタスク指示に対して自律的に実行され、エラーが発生されないというのは難しいのだ。
人事業務でのAI活用
人事業務は様々な業務範囲があるが、当社では活躍人材を生み出す仕組み作りで人事業務を、採用、業務遂行(組織化)、マネジメント、評価の4つに分類している。
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採用
米国ではAI Agentでのユースケースとして採用領域が挙げられる。オープン採用プラットフォームであるLinkdInが普及しているため候補者選定、スカウト文面作成と送信、日程調整といった業務を自動化するAI Agentが実稼働している。
AI Agentでのユースケースにはよくコールセンターと採用スカウトが例に挙げられ、それはタスク範囲が絶妙に狭いこととエコノミクスが合うことである。
日本ではビズリーチ等のクローズドプラットフォームが普及しているため米国のように完全自動化まではいかないが、人材大手企業はAI AgentモデルではないもののAIを活用してのマッチングモデルを開発し日々活用している。
基本的に人材大手企業が自社向けシステムとしてモデル開発をしているため、その恩恵はSaaSソリューションとして一般的な企業人事部におりてきていないが、PeopleX社では採用分野でのLLM活用が最も普及すると予測し参入を既に発表している。
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採用面接市場で一番人事部が困っていることは業務プロセスの省人化ではなく、母集団形成である。デジタルヒューマンは応募数が増加し、母集団形成が実現できる市場として狙っている。
候補者から見たときの負荷はその会社に向けた書面を作成し、日程調整を行い、面接をし御礼をするという負荷は潜在的に高く時間差もかかることから、日程調整不要でその場で土日でも朝夜でもその場で面接を受けることのできる体験は、早くAI採用面接官を採用した企業から順番に多くの応募が集まる企業になる。
企業側の業務省人化の観点での開発ではなく、候補者側の業務削減観点でソリューション開発することによって、結果的に企業側に応募が集まるというUXの逆転の発想である。
これらは対話型LLMと3Dモデリングが技術的背景の中心であるが、面接終了後の会社の魅力付け、次回面接への移行率向上、最終条件通知後の魅力付けなどの入社に至るまでの全プロセスを自動化することが可能で、そこで複数のAI Agentが活躍する分野。内定承諾や次回面接移行などの値設定がわかりやすい分野であり、自律性も必然的に狭い領域である。
今後最も浸透していくのがこの採用領域の分野であろう。
人事評価とマネジメント
そして今着目しているのが人事評価とマネジメントフィードバックである。
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自分自身経営者として過去に累計1,000人以上の給与/人事査定に関わってきたが、被評価対象者の1年間の業務内容を全て把握し、平均的人物が同じ業務を遂行していた場合と比較し、被評価対象者だからこその進捗度合いはどの程度だったかを数値的に判定することは不可能であった。
もっと言えば、声高には発言しにくいだろうが、多くの人事評価は直前に2-3ヶ月の業務に対しての評価対象者の主観的観測によって判定されているのが実情であろう。給与、等級やキャリアが決定される最も重要な局面にもかかわらず、顧客からの評価や同僚からの評価、他部署からの評価も聞いた限りでは評価対象に入っている可能性はあるが、適正評価かは疑わしい。
この課題に対しての有効策を、見つけられるソリューションになる可能性が高いと推察している。
実現可能となるデータ構造や技術は特許化までは非開示であるが、既に内部実証実験を終え、被評価対象者の業務内容、その進捗状況、平均的人物と比較したときの優劣点、モチベーションやストレス判定までも自動化することが可能となった。
そして同技術が可能になるということは、別途どの課題に対しての解決策を本人に週次でフィードバックをするというマネジメント業務の自動化すらも可能となることがわかった。
AI First SaaSへの取り組み
採用し、チームで業務遂行を行い、マネジメントにて改善を繰り返し、適切な評価を実施することで、その企業は人事力の強い会社へと変貌を遂げることができる。それをAI Firstであり社員側の利用率の高いものづくりでPeopleX社は勝負しようと考えている。
既にPeopleWork上にはスキルや経歴の自動判定ソリューションが実装されていたりと既存SaaSに次々とAI機能を提供開始している。
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新しい技術はアプリケーションが提供されることで消費者的実感を得て、その結果として投資が集まり、技術領域への投資が加熱し更なる産業進化が生まれる。LLMモデルから、そのキラーユースケース探しのR&Dが多く生まれるのが2025年である。
その産業界からの期待値に関わらず、まだAI NativeなSaaSユースケースは普及していない。自分の役割としては、この技術を世界の多くの人事部署に届けることであり、人事部署のAI活用化に関心がある方と共創したいと考えている。
3月末の評価時期に合わせて、AIを活用した人事評価の公平化の共同研究を行う人事部署をクローズドで3-5社募集致します。従来までの上司による評価システムとAIによる評価値の偏差点を炙り出す共同研究を実施していきたい。
高い採用力を誇り、採用された人材が適正なオンボーディングで育成され、公平な評価が行われ、マネジメントの精度が上がることで、世界の人事機能を強化していく。それが2025年のPeopleXの役割です。
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