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ジャノメ食堂へようこそ❗️

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#オモチ

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(16)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(16)

 ウグイスの平なお腹から盛大な音がラッパのように響き渡る。
 ウグイスは、珍しく恥ずかしそうに頬を赤く染めてお腹を押さえる。
 それに続くようにオモチのお腹から、外にいるアズキから、音こそ鳴らないが家精も言いづらそうにお腹を押さえている。
「あっ……」
 アケは、思わず声を上げて窓の外を見る。
 いつの間にか太陽が森の木々の背よりも高く上がっていた。
「ごめんなさい……私のせいで」
 アケは、肩を

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(3)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(3)

「へっ?」
「無ければ作ればいいんだよ!そのなんだっけ………⁉︎」
「香辛料ですか?」
「そうっ!」
 ウグイスは、びしっと人差し指を立てて叫ぶ。
 アケは、思わずビクッと身体を震わす。
「香辛料みたいに作ればいいんだよ!」
「いや、香辛料はオモチがちゃんと材料を見つけてくれたから……」
「だったらオモチ!」
 ウグイスに呼ばれてオモチは、ピンッと耳を立てる。
「今すぐ海水の代わりになりそうなもの

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ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(6)

ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(6)

 アケとオモチが戻るとウグイスが大絶叫で大説教した。
 死んだ魔蝗に受けた背中の傷はアケが思っていた以上に酷いものだったようだ。
 アケ自身、痛いなとは思っていたが小麦を採ること、持ち帰ることに夢中だったので痛みなんて置き去りにしていた。改めて確認すると着物は裂かれ、茜色が濃い赤に染まり、皮膚が裂け、肉が見えていたらしい。
 オモチもまさかそこまでの傷とは思ってなかったらしくウグイスと一緒に確認し

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ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(5)

ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(5)

「ジャノメ!」
 オモチは、叫ぶも魔蝗からの攻撃に追いかけることが出来ない。
 アケは、木の根の外に出ると魔蝗の群れに攻撃を受ける木の根を見て「ごめん!」と言って駆け出す。
 小麦は、ほんの数分の間に殆どが食い荒らされていた。
 種子は散らばり、葉は千切れ、茎は踏み潰されている。
 アケは、どこかに無事な小麦がないかを探す。
 蛇の目を動かし、唯一の恩恵とも言える視力で草の隙間を覗くように探す。

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ジャノメ食堂へようこそ 第3話 お薬飲めたね(5)

ジャノメ食堂へようこそ 第3話 お薬飲めたね(5)

「水曜霊扉」
 ウグイスの右手に複雑な紋様の描かれた水色の円が現れると同時に無数の水滴が宙に浮かぶ。水滴は綿毛のように浮かびながら結合し、大きな二つの水玉になるとアケと小鬼少女の身体を包み込む。
「開放」
 水玉に包まれたアケと小鬼少女の身体にへばりついた茶色の汚物が溶けるように洗い落とされ、役目を終えて弾けると身体からはすっかり汚物が消さり、濡れてもいなかった。
 昨日も思ったけど不思議だな、と

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ジャノメ食堂へようこそ!第3話 お薬飲めたね(3)

ジャノメ食堂へようこそ!第3話 お薬飲めたね(3)

 そこからのアケの行動は早かった。
 小屋で燻していた鹿の肉を必要な分だけ切り取って運び、まな板の上に乗せてサイコロ状に切る。
 昨日、使わなかった葉物の中から肉厚の物を選んで丁寧に微塵切りする。本当は玉葱がいいけど無いものは仕方ない。
 そしてトマトの出番だ!
 トマトのヘタを取り、お尻に十字の切れ目を入れて沸騰したお湯に浸けると切れ目の先が小さく捲れ上がる。それを抜き取ると用意しておいた冷水に

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