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ジャノメ食堂へようこそ❗️

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(16)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(16)

 ウグイスの平なお腹から盛大な音がラッパのように響き渡る。
 ウグイスは、珍しく恥ずかしそうに頬を赤く染めてお腹を押さえる。
 それに続くようにオモチのお腹から、外にいるアズキから、音こそ鳴らないが家精も言いづらそうにお腹を押さえている。
「あっ……」
 アケは、思わず声を上げて窓の外を見る。
 いつの間にか太陽が森の木々の背よりも高く上がっていた。
「ごめんなさい……私のせいで」
 アケは、肩を

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(15)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(15)

「気がついたら白蛇の国は瓦礫の山と化してました」
 崩れ去った城下。
 半壊した白い城。
 泣き叫ぶ声。
 倒れ、血を流し、命を失ったたくさんの人々。
 そして眠るように倒れる巨大な白蛇。
「すまなかった」
 白蛇は、声を絞り出し、泣くように言葉を紡ぐ。
「気づいてやれなくて……すまなかった」
 そして白蛇は深い眠りについた。
「そこからは皆様のご存知の通りです」
 巨人を解放し、白蛇の国を半壊さ

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(14)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(14)

 ナギが出ていって二年が過ぎた。
 それまでの間、アケは空虚に生きていた。
 いや、空虚に生きることしか出来なかった。
 それだけがアケに出来ることだから。
 いつまでも自室とした部屋のベッドの端に座り、汗を掻いて気持ち悪くなり過ぎてようやく風呂に入り、汚さない程度に排泄し、お腹が空き過ぎたら食材をそのまま食べた。
 ただただ生きる為だけに。
 ただただ死なないようにする為に。
 料理なんてほとん

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(13)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(13)

「ナギのおかげで私は生きる目的を持つことが出来ました」
 七歳のアケにとって三歳のナギを育てていくのは大変などと言うものではなかった。
 同世代の子どもとすらほとんど関わったことがなかったのにいきなり三歳の弟のような存在が出来て戸惑わないはずはない。
 食事にしつけ、勉強に具合が悪くなった時の対処。
 本をいくら読んでも足りない。
 アケは、悪戦苦闘しながらナギの育てていった。
 それでも何もなく

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(12)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(12)

「迫害と言っても虐待をされていた訳ではありません」
 そう言ってアケは着物の袖を捲る。
 現れたのは傷ひとつない色白の白くて細い、綺麗な腕だ。
「お父上様もお母上様も国の民たちも私に暴力を振るうことはありませんでした……大きくなってからもその……性的なことをされることもありませんでした」
 そう告げるアケの声は弱々しい。
 ひょっとしてされなかっただけでそれに近しいことはあったのではないか……?

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(11)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(11)

「その時のことを私は覚えてません」
 アケは、クロモジ茶の入った湯呑みを握りしめる。
「気がついたら座敷牢のような所にいて顔にはこの白い布が巻かれていました。それなのに景色はやけに鮮明に見えて……そして……そして……」
 アケは、蛇の目と唇をぎゅっと萎める。
「私は、お父上様と、お母上様、国に住むみんなから迫害されました」
 アケの口から漏れた喉が裂けるような声にウグイス達の顔が青ざめる。

 化

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(10)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(10)

 アケが彼らに誘拐されたのに特に大きな理由はなかったと誰かから聞いた。
 何故その人物を"誰か"と表現したのに大きな意味はない。
 単にアケの側にやってくる人間達が自分たちの名前を告げることがなかったからだ。
 だから、その教えてくれた人物が国の重要人物なのか?治療した医師なのか?それとも世話しに来た給仕だったのか等は特に重要ではない。
 重要なのはその誰かが告げた理由だ。
 その"誰か"はこう言

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(6)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(6)

 アケは、アズキに駆け寄ろうとする。
 しかし、それよりも早く武士達が浅黒の武士の後ろから飛び出し、アズキを囲んで刀を抜いて倒れるアズキの喉元と胴体に突きつける。
 アケは、足を止める。
「アズキ……」
 アケは、声を震わせ、呼びかける。
「ぷぎい」
 アズキの口から弱々しい鳴き声が漏れる。
 目が開いてアケをじっと見る。
 アケは、胸元を押さえ、安堵する。
「焦りましたよ」
 浅黒の武士は、ふう

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(5)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(5)

 不穏な空気を感じ、アズキが目を覚ます。
 巨体をゆっくりと起こし、アケに近寄る。
 岩のように大きく、背中を燃やした異形の猪に武士達の顔に戦慄が走り、腰の刀に手をかけ、今にも斬りかかろうする。
「やめろ」
 浅黒の武士が左手を伸ばしそれを制する。
「お前達では勝てん」
「アズキ……やめて」
 アケも顔だけをアズキに向ける。
 アズキは、武士達を牽制するように睨みつけたままアケの言うことを聞いて動

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(4)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(4)

 翌朝、アケはいつもよりも早く起きた。
 ベッドから起きて窓を見ると月はまだ薄く空にあり、遠くの東の空は橙色に燃え上がっている。
 あと、少しで日が登る。
 一日がまた始まる。
 アケは、身なりを整え、寝巻きから茜色の着物に着替え部屋を出てそのまま食堂に向かう。
 出入り口となっている大窓と小窓を開けて空気を入れ替え、外にある水道で布巾を固く絞ってテーブルを拭き、床を箒で掃く。
 この後はいつもな

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(3)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(3)

「へっ?」
「無ければ作ればいいんだよ!そのなんだっけ………⁉︎」
「香辛料ですか?」
「そうっ!」
 ウグイスは、びしっと人差し指を立てて叫ぶ。
 アケは、思わずビクッと身体を震わす。
「香辛料みたいに作ればいいんだよ!」
「いや、香辛料はオモチがちゃんと材料を見つけてくれたから……」
「だったらオモチ!」
 ウグイスに呼ばれてオモチは、ピンッと耳を立てる。
「今すぐ海水の代わりになりそうなもの

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(2)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(2)

 絶対に美味いに決まっている。
 鼻腔の奥で弾けるような匂いがウグイスの、オモチの、アズキの、そして屋敷の中にいる家精の食欲と胃袋を叩きつける。
 アケは、そんな四人の様子を見て頬を緩めながら白い深皿に炊き上がった白飯を盛っていく。
「ジャ……ジャノメ〜」
 ウグイスが緑色の目を輝かせ、ペタンコなお腹を両手で押さえながら訊いてくる。
「この匂いって……何て言うの?こんな痺れるような匂い……初めて…

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(1)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(1)

 なんて幸せなんだろう……。

 調理台の上で鳥肉を鼻歌混じりに捌きながらアケは、心の奥から湧いてくる温かい気持ちを噛み締めていた。
 日が西へと沈みかけ、青々とした草原の色のトーンが落ちていく。
 いつの間にかジャノメ食堂と呼ばれるようになった青いとんがり屋根の屋敷は夕日に当てられ、橙色に輝き、長い影を伸ばしている。
 食堂の入り口となっている大きな窓の中からマンチェアを纏った金糸の髪の絶世の美

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ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(10)

ジャノメ食堂へようこそ!第4話 雲を喰む(10)

 アケは、湯気上がる雲呑スープを入れた椀をテーブルの上に置く。
 男の月のような黄金の双眸が置かれた椀をじっと見る。
「これが・・その料理か?」
「はいっ」
 アケは、頷き、小さく笑みを浮かべる。
 ぬりかべを見送った翌日の朝、男はやってきた。
 アケは、驚かなかった。
 何故か男がやってくる。そう思っていたから。
 そして男がやってきたら出そうと料理を準備していたから。
 出来立ての料理を。
 

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