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ジャノメ食堂へようこそ❗️

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#ジャノメ

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(15)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(15)

「気がついたら白蛇の国は瓦礫の山と化してました」
 崩れ去った城下。
 半壊した白い城。
 泣き叫ぶ声。
 倒れ、血を流し、命を失ったたくさんの人々。
 そして眠るように倒れる巨大な白蛇。
「すまなかった」
 白蛇は、声を絞り出し、泣くように言葉を紡ぐ。
「気づいてやれなくて……すまなかった」
 そして白蛇は深い眠りについた。
「そこからは皆様のご存知の通りです」
 巨人を解放し、白蛇の国を半壊さ

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(14)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(14)

 ナギが出ていって二年が過ぎた。
 それまでの間、アケは空虚に生きていた。
 いや、空虚に生きることしか出来なかった。
 それだけがアケに出来ることだから。
 いつまでも自室とした部屋のベッドの端に座り、汗を掻いて気持ち悪くなり過ぎてようやく風呂に入り、汚さない程度に排泄し、お腹が空き過ぎたら食材をそのまま食べた。
 ただただ生きる為だけに。
 ただただ死なないようにする為に。
 料理なんてほとん

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(13)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(13)

「ナギのおかげで私は生きる目的を持つことが出来ました」
 七歳のアケにとって三歳のナギを育てていくのは大変などと言うものではなかった。
 同世代の子どもとすらほとんど関わったことがなかったのにいきなり三歳の弟のような存在が出来て戸惑わないはずはない。
 食事にしつけ、勉強に具合が悪くなった時の対処。
 本をいくら読んでも足りない。
 アケは、悪戦苦闘しながらナギの育てていった。
 それでも何もなく

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(12)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(12)

「迫害と言っても虐待をされていた訳ではありません」
 そう言ってアケは着物の袖を捲る。
 現れたのは傷ひとつない色白の白くて細い、綺麗な腕だ。
「お父上様もお母上様も国の民たちも私に暴力を振るうことはありませんでした……大きくなってからもその……性的なことをされることもありませんでした」
 そう告げるアケの声は弱々しい。
 ひょっとしてされなかっただけでそれに近しいことはあったのではないか……?

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ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(5)

ジャノメ食堂へようこそ!第5話 私は・・・(5)

 不穏な空気を感じ、アズキが目を覚ます。
 巨体をゆっくりと起こし、アケに近寄る。
 岩のように大きく、背中を燃やした異形の猪に武士達の顔に戦慄が走り、腰の刀に手をかけ、今にも斬りかかろうする。
「やめろ」
 浅黒の武士が左手を伸ばしそれを制する。
「お前達では勝てん」
「アズキ……やめて」
 アケも顔だけをアズキに向ける。
 アズキは、武士達を牽制するように睨みつけたままアケの言うことを聞いて動

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