「科学者」校長の学校改革――対話と探究でつくる新時代の教育
大学の研究者から公立中高一貫校の校長に転身した著者が、伝統ある学校での教育改革の過程を生き生きと描いた一冊です。生徒たちに「主体的に学び続ける力」を育むため、対話と探究を土台に、教師・生徒・保護者との協力を重ねて実現した改革の物語が広がります。
受け身の学びから主体的な学びへ
著者は、生徒たちが受動的に授業に参加している姿に疑問を持ち、「主体性を守る」ことを学校全体で共有することから改革を始めます。頭髪規定の撤廃、制服の見直し、部活動の顧問制度の自由化など、目に見える形での変革を進め、生徒たちの自己表現と自主性を促しました。
信頼関係を築く対話の力
本書の特徴は、改革が「上からの指示」ではなく、現場の声を反映しながら進められた点にあります。教師たちとの丁寧な対話や、生徒たちとの議論を重ね、校則の意味や必要性を共に問い直します。この過程を通じて、信頼に基づく学校文化が形成され、教師も生徒も自分たちの学校を創り上げる当事者となっていきます。
自身の経験と重なる学び
私も学生時代、周囲の空気を読みすぎて自分の意見を言えなかった経験があります。授業ではノートを取ることに集中しすぎて、内容が頭に入らないことも多々ありました。もし当時、このように生徒の声が尊重される学校があったなら、学びに対する意欲も大きく変わっていたのではないかと感じます。
教育の未来に示唆を与える一冊
この本が伝えるのは、教師が「教える」ことから生徒が「学ぶ」ことへの転換の重要性です。教育現場での「教えない教育」がいかに生徒の成長を促し、彼らの未来を支えるのかが具体的に示されています。対話と信頼を基盤にした教育が、次世代の学校をどう変えていくのかを知りたい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
教育の本質を問い直し、改革の先にある理想の学校像を描く本書は、教育関係者はもちろん、教育に関心のあるすべての人に読んでほしいです。この実践記が示すような変革が広がり、すべての生徒が主体的に学び成長できる社会が訪れることを願っています。
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