キモシェアハウス漂流記第十話
今後忘れることは無い、2023年9月8日夜中家に帰るとリビングからあの男達の声が聞こえてきた。
玄関からリビングまでの約7歩。その日の俺は3歩でリビングへ。
ドアを開ける。
「よぉ。」
電話から聞く声じゃない、電波を通さないあの懐かしい声が。
遠い国フィリピンで野犬やデカいコウモリとの格闘を生き抜き日本に帰って来た男
そして北海道の離島、利尻島の旅館で1カ月の出稼ぎバイトから帰ってきたあの男も。
キモシェアハウス初期メンバーの2人が帰ってきていたのだ。
俺達はとにかく顔を見るやいなや、汚い体同士で抱き合い、その周りに俺達の再会を祝福するようにコバエが舞いに舞っていた。
抱き合ったときの木田君は前より小さく感じた。
聞くところによると、利尻島の住み込みバイトでいきなり環境がガラッと変わったストレスで便秘になり、1カ月で4回しかうんこをしてないのに6キロ痩せるという、物理を無視した痩せ方をしていた。
そして篠原さんはフィリピンの生活のストレスでM字ハゲの2つの尖った部分が繋がって
O字ハゲになっていた。
変わり果てた2人だったが、俺達はあの頃のようにはしゃいだ。
篠原さんが変わったのは見た目とハゲてるやんって言ったときの返しが前までは「ハゲてねーわ!」だったのが「分かってるよ!」になったことぐらいだ。
その日古川さんは自室で寝ていたので、俺、ガクヅケ木田、レンタルぶさいく、フランツの土岐のパワーカルテットでリビングを占拠していた。
木田が利尻での過酷だった話を僕達にしてくれたのですが、篠原さんがその後にした話のパンチが重すぎて木田は西遊記のでっかい大仏の頭を触ったと思ったらまだ指やったときの悟空みたいなリアクションをしていた。
俺と土岐はドラゴンボールの悟空の戦いに引いてるヤムチャみたいになっていた。
篠原さんの軽いエピソードでひとつ。最近パッキャオのボクシングジムに通ってるらしいのだが初回のレッスンでお腹に15キロのボールを落とされて衝撃で飛び出た目ん玉がメガネに当たったらしい。
それをお通しみたいに15秒くらいで話していた。
何が怖いって笑ってる僕らを不思議そうに見ていたのだ。
篠原さんの中でこれは笑いを取るための話では無く、昨日はラーメンを食った。みたいな類いの話なのだ。
そして利尻から帰って来てクタクタの木田君と土岐は2時くらいに寝て、俺と篠原さんは2人きりでリビングを延長することに。
2人きりになって篠原さんは開口一番
「野良犬は俺と似てる。」と言い出した。
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