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キモシェアハウス漂流記第二十四話【逆転】

先日キモシェアハウス史上1番の逆転劇が起こった。

これまで古川さんはただでさえ汚いキモシェアハウスの中でも不潔。
そんな位置付けをされていて、特にガクヅケの木田からその不潔さを注意されていた。

古川さんは「…あぁ…申し訳ない…ただ、君も俺と同じくくりの人間のはずだろ?」と言って抗い、それに対してさらに木田が怒る。そんな日々が続いた。

古川さんの部屋の匂いには木田以外の我々も困らされていた。

慣れてはいたが、たまに部屋がかんしゃく起こしたんかってぐらい匂いが強くなる日があり、リビングまでその匂いが流れてきて、その底なしの匂いにリビングにいる皆が挙動不審になる。

ラッパーの飯田さんは何度か古川さんの部屋の匂いでゲボを吐いた。

俺達は部屋の匂いを何とかして欲しいと交渉はするも古川さんは「あぁ…それはそうだね…へへへっ…」と太極拳のような返事で受け流すだけだった。

そんな皆からのヘイトを浴びた古川さんはここ最近めちゃくちゃ酔っ払って帰って来るようになり、ベロベロの状態で木田にセクハラをしてまた怒られ、八方塞がりの状態に自分で追い込んで行った。

そしてレンタルぶさいく帰国記念ライブの配信ギャラが入って来たら布団を買って部屋を綺麗にするという約束を木田が取り付けた。

悪臭の元凶、数年の生活により染みに染みた臭さの集大成、これを捨てさせて新しく布団を買うことを古川さんは了承した。

しかし、古川さん以外のキモシェアハウス民はどうせ布団は買わないし、買ったとしてもまた臭さを染み込ませて部屋中を臭い膜でコーティングするだけだ。と思っていた。

木田に聞いた。「もし古川さんが布団買わんかったらどうする?」

すると木田は

「シバく。」

と言った。

木田は中学生のときヤンチャな同級生にからかわれ過ぎて、ついに堪忍袋の緒が切れてそのヤンチャな同級生に

泣きながら抱きついた過去があったらしい。

だからシバくことは無い。しかし、そんなことを言うほどピリピリしていたのだ。

俺はキモシェアハウスのジャーナリストなのでこの臭い騒動、木田vs古川戦はあくまで中立の立場で見させてもらっていたが、それも難しくなるぐらいここ最近の古川さんの行動は目が余るほどだった。

土岐が言わなかったのもあるが、土岐が一人暮らしからキモシェアハウスに持ってきた赤い鍋を使いまくり臭い鍋にしたことや、リビングの椅子に生尻で座ったり、とにかく酷かった。

まぁまたこれで布団買わんくても漂流記のネタが増えるからいいや。そう思った。

しかし今回の古川さんは違った。

ある日ラッパーの飯田さんとリビングにいると「ギコギコギコ…」と古川さんの部屋から何かをノコギリで切る音がした。

一瞬犯罪のにおいがしたので、俺と飯田さんはアイコンタクトを取り、古川さんの部屋に突入した。

まさか古川さんがキモシェアハウスのカーストを駆け上がるとはこのときの俺達は知らなかった。

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