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キモシェアハウス漂流記第十七話

さて、ここ最近我々キモシェアハウスメンバーに新しい家族が増えた。

ラッパーの飯田さんだ。

元々飯田さんは木田君の友達で、ちょいちょいキモシェアハウスに遊びに来ていた。

それが前住んでた家の兼ね合いでひょんなことからキモシェアハウスに住むことになった。

飯田さんが来た初日。

荷物をリビングに運び、リビングに置ききれない荷物はサスペンダーズ古川さんの部屋に置くことになった。

飯田さんはちょいちょいキモシェには来ていたのだが、古川さんの部屋にはあまり入ったことが無かったらしく入った瞬間に

「ゔおぇええっ!!」と、エヅき、急いで古川さんの部屋から飛び出し泣きながらゲボを吐いた。

古川さんは人間の友達になりたいだけやのに皆から逃げられた怪物みたいな悲しそうな目をしていた。

そんな最悪の初日からのスタートだったが、飯田さんは心を折ること無く、キモシェを変えようと動いてくれている。

俺も最初キモシェに住みはじめたときは片付けようとゴミをまとめたりしていたのだが、土岐に「そんなことをしても意味が無いですよ」と言われ、汚すぎるベランダを見せられて一瞬でここを綺麗にしようという気持ちを殺された。

そんなこともあったので片付ける飯田さんに俺もあのときの土岐のようにベランダに連れて行き、キモシェの真髄を見せたのだが、飯田さんは「いや、僕はこんなんじゃへこたれないですよ。」とHIPHOP魂を見せつけられた。

キモシェに住みはじめて2日目、飯田さんはパンパンになったビニール袋を両手に帰ってきた。

俺が「それはなんですか?」と聞くと、「この部屋のにおいを消すアイテムです」と言った。

そして箱いっぱいにそれを入れた。

ペット用の脱臭ビーズだった。

「人間用のじゃこの部屋は無理です。」

悔しかった。

古川さんの部屋が臭いだけならまだしも、リビングも臭いと思われていたなんて。しかもちょっと臭いとかならまだしも彼が買ってきたのはペット用。リビングでさえも相当臭かったようだ。

しかし、このビーズを置いて2時間後くらい、コンビニで買い物をして帰ってくると、本当に人見知りするぐらい部屋の臭いが変わっていた。

そこでリビングも相当臭かったんだと気づいた。

そして俺達キモシェメンバーも飯田さんの努力に感化され、少しずつまたゴミを捨て出した。

HIPHOPがキモシェに勝った。

そう思っていたのだが、フランツの土岐が牙を剥いた。

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