洋服のメーカーからヘルスケアのお店へ(後編)
ドッグウエアメーカーでスタートした9689が、どうしてヘルスケアに力を入れたショップに生まれ変わったのか。いきなりの3部作で始まったブログもとうとう今回で最終章。最後までお付き合いよろしくお願いしますね。
愛犬プントの足に肥満細胞腫が見つかり、様々な治療方法を探すも手術しか手立てがない現実を突きつけられた私。しかしまだ諦めがつかず、近所にあるドッグフードのショップへ向かいました。
悪性腫瘍のことをドッグフードショップの人に聞きにいったの?と思われるかもしれませんね。ですが、このショップの方(山本さん)は本当の意味でのプロフェッショナルでした。この方のようなショップスタッフは、身近なところでは他に一人としておられません。
動物の栄養学に精通し、常に動物側に立ち、山本さんのおかげで私は初めて動物たちのQOL(Quality of Life)という言葉について考えさせられました。動物の命の尊厳について、生まれて初めて真剣に考えるようになったのです。
山本さんにお会いしていなければ、私の人生は全く違ったものになっていたでしょう。そして、山本さんがいなければ、私の「生きる」という意味の解釈は今とは違っていたでしょう。山本さんは、本当に色々と親身になってお話を聞いてくださいました。
このショップさん、全国からワンちゃん・ネコちゃんのご相談が入る駆け込み寺的な場所になっていて、それはそれはお忙しくされておられました。
お電話もひっきりなし。その多忙な中でも、新規で飛び込んだ私の話にもしっかり耳を傾けてくださいました。
山本さんがおっしゃった、私の心に刺さったこの言葉。
「動物ってさ、しんどい思いや治療してまで長生きしたいって思うのかな。彼らは今を生きてるんだよ。過去でも未来でもなく今なんだよ。」
今でも私の中でその言葉が「本当の意味で生きるということはどういうことか」ということを考えさせてくれています。
結果として私は切除手術は選択せず、プントは11歳近くまで生きてくれました。これは単にいろいろな偶然が重なった結果に起こった「ラッキーなこと」だったのかもしれません。また、私はこれによって手術そのものを否定するつもりはありません。必要な場合もきっとあるでしょう。
ですが、少なくともあらゆる角度からしっかり命と向き合い、飼い主として最良の方法を考え抜くこと、これだけはいかなる状況でもやらなければいけないことだと思っています。この経験を通じて、困っているワンちゃんや飼い主さんの心の拠り所になれたら、そんな風に思うようになってから、自然にドッグフードやサプリメントを取り扱い始め、ヘルスケアに力を入れていくようになりました。
9689を始めた当初は栄養学の知識もなく、無知な状態で健康に直結する食べ物なんて安易に扱ってはいけない、そう感じていました。
お客さんの大切なワンちゃんの口に入るものを、いいかげんな知識でアドバイスなんてしてはいけない、しばらく勉強してからにしよう、と。
山本さんにいろいろと教えていただきながら、自分が思う「ワンちゃんのためのお店」を作るべく、勉強勉強の日々。自分が力をつければつけるほど、
ワンちゃんの役に立つ、飼い主さんを笑顔にできる、そう思って、世界一の
健康オタクになるべく、勉強する量がどんどん増えていきました。
読むべき本がたまりすぎて、ちょっとうわっとなる時もあります。笑
でも楽しいのです、心の底から。
愛犬のためにもなるし、お客さんのワンちゃんのためにもなる。 こんないいことはありません。まさに天職を得た気持ちでした。
ちなみに私の小学1年生の頃の夢は獣医さんでした。
開院した時の病院の名前まで考えていました。笑
違った形ではありますが、動物に関わる仕事につけて心底嬉しく思います。
現在の9689は、「動物たちが本当に生きるということ、QOLを考えるお店」になるべく日々頑張っております。今後もこの考えをもとに、少しずつベストな方向にマイナーチェンジをしていきながら、そのときそのときに
自分たちに出来る精一杯をご提供できればと思っています。
こう思わせてくれたきっかけである今は亡き愛するプント、それから師匠である山本さん、この場を借りてありがとうございます。
今の9689を作ってくださって、感謝しかありません。
残念ながら山本さんは、2022年にこの世を去られました。
大袈裟でもなんでもなく、山本さんが残されたものは非常に大きく、
また自分たちの業界にとっても、大きな損失だと思っています。
山本さんの足元にも及ぶか分かりませんが、いや及べると信じて、
今後も学びを止めてはいけないと思っています。
きっと空から見てくださってると思っているので。
ブログを読んでくださったみなさん、長い文章にお付き合いくださいまして本当にありがとうございました。
3部作の「洋服のメーカーからヘルスケアのお店へ」は、これにて終了です。ワンちゃんのヘルスケアについてお困りのことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。健康を諦めずに一緒に頑張っていきましょう。