アラスカ旅行記⑫ 「あの子はどこ?」
ロッジに戻ると、ロビーには昨晩オーロラを見逃したアメリカ人の団体が居て「なんだ、昨日オーロラ観れたなら、起きてればよかったな」などと言いながら、オーロラ予報を食い入るように見ています。予報曰く今夜も観られる可能性があるとのこと。眠いけど……今夜も挑戦するか!
今夜も涼しいのかな。あれ?ウィンドブレーカーが無いな。車の中に置いてきたかな。ん。車の中にも無いな。さっきのロビー?いや、ロビーにも無い。…え?あの子はどこ?
アラスカに旅立つ1週間前に買ったばかりのウィンドブレイカー。今朝の飛行ツアーの時は着ていた記憶がある。移動中は1度も寄り道していないしな。ということは、100マイル先のデナリ国立公園のどこかに落として来た…?
さーーーー(血の気が引く)
夜11時すぎ。たまたま友人たちとチャットをしていて、一切ウィンドブレーカーの話をしてないのに、その中のひとりが「今日こんな車が走ってた」と添付してきた写真がこちら。
早速ウィンドブレーカーを失くした話を伝えると、さすがはウチナーンチュ(沖縄人)。すぐに心温まる返信が。
まず、今日いちにちの出来事を冷静にリストアップしてみます。
A) 朝イチで飛行ツアーに参加(その時は着ていた)
B) ツアー会社のロビーで買い物(その時にスマホが無いことに気付き、その時にウィンドブレーカーのポケットを探ったけど無く、結局スマホは機内に落としてた。以降ウィンドブレーカーの記憶無し ※さりげなく別の失くしものの告白)
C) 昼食を摂る
D) バスツアーの待ち合わせ場所のホテルロビーで待機
E) バスツアーに参加
F) 夕食を摂る
G) アイスクリーム屋さんに寄る
明日は朝イチでB〜Gに電話だな。きっとあるはず。だって100マイルずっと車移動で、寄り道もしてないし(涙)。
その日は、オーロラを再び観るべく薄着で深夜2時過ぎまで粘りましたが、前日と違って雲が大量に湧いて来て、結局観られず。その代わり、束の間のアラスカの夏を謳歌する蚊たちに大量の献血を…。
朝の9時過ぎに起床。
部屋の外で皆が大騒ぎしている。扉を開けると、「あなたも見た?すぐ目の前にクマが現れたのよ!」……えええええ、昨晩はオーロラも、今朝はクマも逃した!(ウィンドブレーカーも♡)
Bから順番に電話をしてみます。「んー、今のところ無いわ。もしあったら電話しますね!」
C。無し。
D。「グレーで、チャックが付いてて、フード付き?あ、それらしきものがあったわ。んー、よく分からない言葉が書いてあるわ」「あ!日本のブランドなので、それだと思います。スマホに写真を送って貰っていいですか?」「分かった。ちょっと待っててね」
良かった!5分ほどして写真が送られて来ました。
マジでアラスカ人、適当!「それらしきものがあったわ」じゃないのよ!チャック付いてないし!あと、日本人の僕がアラスカ人のアナタに言うことじゃないけど、SKAGWAYってよく分からない言葉じゃなくて、アラスカの地名な!!!!!!(怒)
E〜Gも「今のところないけど、あったら連絡する」との答え。
そんな時、皆さんならどうしますか。前章に書いたアメリカ本土からの旅行客みたいに「旅は思うようにならないもんだ」と割り切りますか。僕は今回の旅で学んだのです。諦めちゃダメなんだって。あのチェナの森で。昨日の夜中にメキシコ人家族と一緒に、オーロラを待ちながら。
電話では無いって言ってたけど、あるかも知れない。アラスカ人、マジで適当だし、ちゃんと見てないかも。行ってみよう。見つからなくても、それはそれさー。芸人魂の見せ所さー。
という訳で、再び往復200マイルの当ての無い旅へ。メートルに換算しちゃダメ。たった片道100マイル。近いお、ダイスケ。秒だお。(往復320kmです)
100マイル走破して、デナリの街に到着。まずは道すがら一番近い、先ほどのSKAGWAYの写真を送ってくれたホテルへ。
「あのぅ、先ほども電話したのですが、グレーのウィンドブレーカーで、前にチャックがついてるやつなんですけど、落とし物ありませんでしたか」
「えーと、ちょっと待ってね。(3分ほど経過)……うーん、残念ながら無いわね」
「そうですか。もし見つかったら連絡を貰ってもいいですか」
「あ、ごめん。こっちを見てなかったわ。ちょっと待ってね(ガサゴソガサゴソ)……あ、もしかして、これ?」
そ れ !!!!!!
神様、仏様、デナリ様、チェナの森で会った紳士様、メキシコの家族様、沖縄の友人様!本当にありがとうございます!マジで諦めないで良かったー。アラスカ人が良くも悪くもマジで適当だって知ってたから、100マイルぶっ飛ばして来て良かったー。ホテルの人センキュー、センキュー。
上機嫌で、昨日行ってランチの美味しかったレストランに顔を出してみる。店員さんが僕を見るなり「んんんん、お前のこと覚えてるぞ。昨日も来てくれたよな。えーとね、えーとね、名前はね……DAISUKEだ!」すごい!日本人に馴染みの無い土地なのに、嬉しい!センキュー。センキュー。
帰りは寄り道。と言っても何も無い一本道なので、途中で車を停めて、荒野の中の送電塔を撮影。都心は送電塔が無い場所なので、初めて見た時はおどろおどろしいもののように思っていたのですが、誰も居ない荒野で孤独に電気を送り続けてる様って、健気よな。僕の好きなジミー・ウェブ作のカントリーの名曲「Wichita Lineman」を聴きたくなりました。
ジェットコースターみたいにキャッチーな出来事で溢れる1日もアリだけど、マイナスで始まり素朴な感謝で構成される今日みたいな1日もアリだな。そう、自分で失くした服を自分で探しにいき、見つかって、すっかり気分がよくなって、センキューセンキューってなって、送電塔を見て黄昏るタイプのおめでたい1日も…
早速、昨晩やりとりしていた沖縄の友人に「あったよ!見つからないネタになんなくて良かったわ〜」と報告すると、すぐに心温まる返信が。
明日はいよいよアラスカ最終日。