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アラスカ旅行記⑨ 「チェナの森の中で」
ひと晩寝て、フェアバンクス観光初日。
先日のアンカレッジ博物館に大変感銘を受けたため、アラスカ大学内にある北方博物館(Museum of the North)にも行ってみました。早速入口にはアラスカを愛した星野道夫さん作品の展示が。
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星野道夫さんの功績
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デカい!!!
資料もたくさんある良い博物館なのですが、アンカレッジ博物館で「黄色いシロクマ」など奇抜でメッセージ性の強い展示で"調教"された後だと、ちゃんとした博物館が物足りなく感じる身体になってしまっている僕。もう今後の人生は《博物館変態》として生きていくしかありません。嗚呼。
気を取り直して、昨日列車の中でも聞いたフェアバンクス近郊の有名スポット、チェナ温泉へ。
曰く、約100年前のゴールドラッシュ時代に発見された温泉で、フェアバンクスから60マイルくらい離れた一本道の最終地点。現在でも電気、ガス、水道、電話線、郵便配達、ゴミ収集、交通手段など一切の公共機関や設備の届いていない場所なのだそう。アラスカの一大観光地にして、どんな場所だよ!
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おそらく郵便配達の負担を減らすべく
集合ポストになってました
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東へ向かう
60マイルはメートル換算すると、約1.6倍、つまり約100kmなのですが、ひたすら一本道を走っていると、メートルに換算することってナンセンスに思えてきました。
アラスカにおける60マイルは、あくまでも60マイルであり、日本における100キロではない。たった2桁かー、60マイルかー、と思うのがきっと正解なのです。きっと。
という訳で、たった60マイルを無心でぶっ飛ばし、無事チェナ温泉に到着。
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水着を着て入る欧米風スタイル
先日のデナリの森でのトレッキングに気を良くして、温泉に入る前に、今回も2時間ほどのトレッキングコースへ。
3年前にカメラを買ってから、歩くくらいのスピードで観察して、写真撮って、初めて考えたり分かることがたくさんある気がして、歩く機会が増えました。初めてお邪魔するチェナの地に挨拶も兼ねて、いざ。
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オーロラ展望室の表示
何それ!萌!
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歩いて15分ほど。急に森が消え、見晴らしが良くなります。いや、待て。これは、見晴らしが良いというわけじゃないのか。
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キクイムシのやられたのか?
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歩けど歩けど、ずっとこの光景。え、ちょっと待って。奥に見えてる山もその奥の山も、全部燃えてしまったということなのか。
人間が活動する為にやむなしと皆が薄目で眺めてる温暖化の影響は、人目につかないところでガチで進行してるじゃないか。アラスカの山の中でキクイムシが異常繁殖して、森の木を全部食い尽くしてる。山が燃えている。
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そんなタイミングで、目の前で学者風の老紳士が焼き倒れた木をノコギリで切っていました。
「あの、質問していいですか」
「答えられることなら」
「この山火事はいつ起きたかご存知ですか」
「2021年。3年前だよ。大変な大火事だったよ。温暖化の影響なのは間違いないね」
「山はどのくらいで元に戻れるんでしょうか」
「んん、さすがにそれは分からないな」
「そりゃそうですよね。済みません、変な質問して」
「それでも、この山はまた森になる。また来年も見においで。必ず今よりは良くなってるから。そう信じて、僕はこうして道を整備してるんだよ」
悲嘆に暮れるのは簡単だけど、それでも投げ出さずに未来に目を向けて、行動を起こすことが出来るのも、また人間。名前聞き忘れたけど、学者風の老紳士、ありがとう。僕も上手に出来るか分からないけど、何かしらの形で人に伝えてみます。来年は難しいかもだけど、また必ずこの山がどうなったかを見に来ます。
その後、2021年のチェナの山火事について調べてみました。
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43000エイカー。広さで言うと、東京23区の1/4〜1/3ほどの面積がこの年の7月に燃えてしまったことになります。これが実際に東京で起きていたら温暖化の本質的なヤバさに気付くけど、そうじゃないから「暑いわー、クーラー掛けないと死ぬ!」と愚痴りながらクーラー爆掛けで生活してる日頃の僕よ…
かたやチェナには電気すら通ってなくて、完全なるエコ循環システムを構築しているというのに!
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下山後は温泉に。新品の水着も売ってますが、誰かが置いていったやつを、ちゃんと洗って売ってるという奇抜な中古水着もあって、誰よりもエコな気持ちになっている僕は後者をゲットして入湯。
山火事にショックを受けている脳は同時に、温泉のクオリティでいうと、やっぱり日本の温泉の方が上かもなー、温泉入って、至高の料理が出てくる、日本の温泉システム、最強だよなー、あの温泉のカツサンド美味しかったなー、みたいなことも考えていて、人間の欲は悲しいほどに底なしなのでありました…