
アラスカ旅行記⑤ 「博物館とルドルフ」
売薬宿から脱走して、キレイなホテルで10時間休息を取ったアラスカ初日。アラスカ鉄道に乗るのが翌日の朝なので、アンカレッジにもう1泊します。
想像していた3倍くらいだだっ広くガランとしているアンカレッジの街並み。「ワイルドなアラスカに来た」という感慨よりも、SFの中の人が消されてしまった街にひとり立たされてるような気持ちになります。


山が見えるのはアガる

程よく混んでて安堵
サーモンのチャウダーとパンにコーヒー
北国っぽい朝食は期待以上
中心地に向かって歩いていくと博物館が。田舎の郷土資料館みたいな感じかな、と高を括っていたら、全面的に予想を裏切られました。
まず、アラスカの歴史を大雑把におさらいすると、もともと氷河期にアジア大陸と北アメリカ大陸が繋がっていた頃に、アジア大陸から渡ってきたとされるのが、かつてエスキモーやインディアンと呼ばれていた先住民たち。
そもそも「国」などという概念が無い、集落単位で人々が生活してて他は全部ワイルドな大自然、みたいなアラスカの地を、ロシア帝国が「発見」してロシア領に組み込んで、それを1867年にアメリカが「購入」したのが、現在のアメリカ領としてのアラスカのはじまりです。
ここからは北海道の”開拓”とアイヌの歴史とも似ていますが、人権の思想が希薄だった当時のアメリカ人たちは「広大な自然あふれる新天地を開拓すんぞー」と目をキラキラさせてやってきたわけですが、そんな土地から金が見つかるわ、石油が見るかるわで、さぁ大変。それまで何百年と厳しい自然の循環の中で生きていた先住民の生活は……
こちらの博物館は、そんなアラスカの白歴史も黒歴史も全面的にフィーチャーしながら、さながら博物館と美術館が一体になったような様相。

「ハイダ」「アタバスカン」…
まず先住民にキチンと個別の呼称が
存在することを知るところから

アメリカ本土の人たちは
アラスカのあまりに雄大な景色に
さぞかし驚いたはず

20連チャン絵画

先住民の防寒具
思った以上に長持ちしているし
見た目以上に丈夫そう
匂いもかいでみたい…

アラスカの温暖化を警鐘するアート
あえてプラスチック素材で作られていて
くり抜かれた文字の部分が
床に散乱してました

有難いアラスカの石油発見
けど石油のパイプラインが
分断したものは…

サケに纏わるアート

意味するものは…

美術館ばりに美しい

「黄色いシロクマ」はどういう警鐘なのか説明文を読むの忘れましたが、青いシロクマも居て、赤いシロクマは倒れてるってことは、信号の色になってて今ならギリギリ温暖化引き返せるよって言ってるのかも。
いちいちトンチが効いてるぅぅぅーーー!
当時のアメリカの”フロンティアスピリッツ/開拓者魂(※)”が生み出した美しいアートから、先住民の人権や文化の侵害、環境破壊などを批判し皮肉るアートまで。
多方面からアラスカを映し出してみたけど、さぁ、あなたは何を思う?あなたの目にはどう映る?……みたいなことまで突きつけてくるのが博物館なのか!凄い!目から鱗!
(※当然今は「先住民が居たのに、開拓魂もくそもないだろ!」という認識に切り替わってます)
決して博物館に詳しくはないですが、素晴らしかったので、アンカレッジに行かれる際は是非!
引き続き散歩。「アンカレッジの街角には、トナカイのソーセージのホットドッグなるものがあるらしい」と友人が検索して教えてくれたので、行ってみました。
♫真っ赤なお鼻のトナカイさんは〜
は英語だと
♫Rudolph, the red-nose reindeer
(真っ赤なお鼻のトナカイのルドルフくんは〜)
なのですが「ルドルフのホットドッグだよー」という大変ブラックな呼び込みをしてる屋台があったので、間違いなくここだよね…

意外と癖がなく美味しいルドルフ…トナカイのホットドッグを頬張りながらアンカレッジの街中を引き続き散策。
それこそ星野道夫さんの本に詳しいですが、それまでの暮らしやアイデンティティを奪われた先住民の方々は、アルコール中毒や薬物中毒になる人も多いらしい。実際に昼間からお酒を飲んでフラフラ歩いていたり、木の影で家族全員でコソコソと薬物を摂取してるのは、概ね先住民系の人たち。「ワイルドなアラスカ」の闇が。

それこそSFみたいに派手な色の、曇天の街に似つかわしくない大麻販売店の看板を見ながら考えます。アラスカはどんな場所なの?この旅は楽しいの?それとも北限の現実を直視する旅になるの?
明日はいよいよアラスカ鉄道に!