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浮かぶ都道府県: 宮崎県

今回は宮崎県です。

浮かぶ宮崎県

宮崎県は全体の75%を山間部が占めており、東側の沿岸部は総延長400Kmもの海岸線を持ち太平洋に面しています。

毎回、都道府県の画像を作るたびに思うのですが、なぜか県の形が動物等に見えてしまいます。個人的な感想ですが、宮崎県の形は動物が高い所から飛び降りているようにも見えますし、高い所へ飛び上がっているようにも見えます。

点が3つあると人の顔に見えるというのはシミュラクラ現象というらしいですが、都道府県の形を見ていると動物に見えるのは何ていう現象なんでしょう。

その宮崎県の地形の中で今回は
 ・活火山の霧島山(霧島連峰)
 ・天孫降臨の地 高千穂
が興味を引く地形だと思いました。

今回の宮崎県はこれらを中心に、紹介していきたいと思います。


霧島山

霧島山(主な噴火口)

霧島山(霧島連山)は、宮崎県と鹿児島県の県境にある火山群です。
上の画像からもわかるように、火山の噴火口がいくつも見えます。

こんなに噴火口が密集しているのは珍しいと思います。
霧島山全体では20を超える火山が存在します。
ほかの地方の火山と比較すると、山体に比べて火口が大きいように感じます。

宮崎県内で現在も活動中の火山として、噴火予報の対象となっているのは
・硫黄山 霧島山
・大幡池 霧島山
・新燃岳 霧島山
・御鉢  霧島山
です。
すべて霧島山にある火山ですね。

この中でニュースなどでよく耳にするのは新燃岳(しんもえだけ)ですよね。
2017と2018年にも噴火がありました。

2022年4月現在でも、新燃岳は噴火警戒レベル2の状態が続いています。


高千穂

高千穂は天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が、高天原(タカマガハラ)から「高千穂の峯」へ天降ったとされる天孫降臨の舞台です。

宮崎県には「高千穂」と名前が付く場所が2か所あります。

「高千穂」の名を持つのは
 ・宮崎県北部の高千穂峡
 ・南部の高千穂峰
です。

2つの高千穂

上の画像は2つの高千穂の場所を示しています。

天照大神を祀る伊勢神宮がある三重県に住んでいる私としては、
高天原つながりとでも言いましょうか、とても興味をそそられる内容です。

今回は地形という側面からこの2つの場所の違いを見てゆきたいと思います。



 高千穂峡

高千穂峡

高千穂峡は五ヶ瀬川にできたV字の谷で、阿蘇山の溶岩を川が浸食し見事な深い峡谷となっています。
高さ80~100mの断崖が約7Kmも続いていて、この画像では北西から南東に蛇行しながら流れています。

テレビやネットで高千穂峡の映像をみることもあると思いますが、深い渓谷の底に滝の水が流れ込み、狭い空から差し込む日の光が神秘的な映像を作り出しています。

このような深い峡谷どのようにしてできたのでしょうか。

高千穂峡の画像を見てもらうと、五ヶ瀬川には跡取川(河内川)や神代側、岩戸川が流れ込んでいます。

もともとこの高千穂峡の周辺は阿蘇山からの火砕流等が堆積して作られた地形のようです。
その地質が浸食を受けやすい性質であり、もともとの五ヶ瀬川の流れと他の川から流れこんだ水の流れが、川を約100m近くも深く浸食していったようです。

ちょうど、五ヶ瀬川と跡取川がぶつかるところが高千穂峡のメインの観光スポットです。


岩戸川はその名前のとおり、天照大神がお隠れになった天岩戸(あまのいわと)からつけられた名前だと思いますが、この岩戸川を遡ると天岩戸神社があります。

天孫降臨のニニギノミコトは天照大神の孫で、初代天皇である神武天皇の曽祖父です。

高千穂峡の近くの岩戸川をさかのぼると、天照大神が弟の須佐之男命(スサノオノミコト)のあまりにもひどいいたずらにお怒りになり、隠れられたとされる天岩戸(あまのいわと)と伝わる洞窟があります。

この天岩戸をご神体としてしているのが、天岩戸神社です。

ですからこの高千穂峡は、ニニギノミコトが天孫降臨の際に、祖母である天照大神が以前にお隠れになった天岩戸・高千穂峡のあたりに土地勘があったのかもしれません。
「そういえば、この辺りにおばあさまが一時期お隠れになったんだよな~。あの時は大変だったって、アメノタジカラオノカミがよく言ってたよな~。」と言ったかどうかは知りませんが、そういうご縁でこの場所を選ばれたと考えることもできますね。

 高千穂峰

高千穂峰

もう一つの高千穂は高千穂峰です。

先に挙げた霧島山の中の一つで、活火山です。
画像からもわかるように、高千穂峰の西側から噴火した火口が御鉢(おはち)で、古代から噴火を繰り返してきました。

現在、高千穂峰の頂上には天逆鉾(あめのさかほこ)とよばれる矛が突き立てられています。(現在のものはレプリカだそうです)

古代神話の時代、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の神が天沼矛(アメノヌボコ)で混沌とした大地をかき回し、その矛から滴り落ちたものが最初の島となったというのが古事記の伝える国産みの神話です。

 高千穂峰の頂上に立つ天逆鉾は、その天沼矛の別名とも言われているようです。

 イザナギ、イザナミの神は天照大神のお父さんとお母さんですから、古事記の最初の方のお話です。

高千穂峰も高千穂峡の神話に引けを取らないスケールと歴史を感じますね。


  御鉢

高千穂峰の地図を見ていて、「っん~?」と思ったことが有ります。
下の図を見てください。

高千穂峰付近の宮崎県-鹿児島県の県境(国土地理院 地理院地図より)


上図の紫色の一点鎖線が高千穂付近の宮崎県(右側)と鹿児島県(左側)の県境なんですが、御鉢(おはち)の部分だけ変だとは思いませんか。

御鉢は高千穂峰の西側斜面にありますが、その県境は明らかに人為的に鹿児島県側に取り込まれています。

この県境線から推測するに、昔に県境論争が勃発し、ひと悶着あったと容易に想像できます。

しかし、山の県境に関する論争は、主に「頂上」がどちらの県や国に存在するかでもめることが多いと思います。

たとえば、富士山の頂上は静岡県か山梨県のどちらにあるかとか、モンブランの頂上はフランスかイタリアかといった議論です。

でも鹿児島県側に取り込んだのは、高千穂峰の頂上ではなく西側の側面の御鉢の火口です。
高千穂峰の山頂と御鉢とを宮崎県と鹿児島県とで分け合ったのでしょうか。

答え(答えかもしれない)と思われる情報は宮崎県にありました。

宮崎県庁のHPに明治・大正時代に、日向の国(宮崎県)と大隅の国(鹿児島県の大隅半島側)の境界に位置する霧島山のうち、御鉢が宮崎県と鹿児島県のどちらに属するか論争が起こったとの記述があります。
「宮崎・鹿児島県の県境に関する文書」 宮崎県庁HP

どうやら、宮崎県は御鉢で採取できる硫黄の採掘申請のために当時の内務省に申請したらしいです。

硫黄は火薬の原料になるだけではなく、硫酸や化学繊維、医薬品等の原料として大変有用なものです。

当時の宮崎県と鹿児島県でその争奪戦が勃発したと考えても納得できる話です。

現在、御鉢は鹿児島県側となっているため、当時の内務省は鹿児島県に権利があると判断したんでしょうね。

実は宮崎県は明治9年に鹿児島県に合併され、明治16年に再び宮崎県と鹿児島県に分県されています。
約6年の間、宮崎県は存在しなかったことになります。

明治・大正時代のことですから、合併した側の鹿児島県の方の発言力が大きかったのかもしれませんし、明治維新の立役者である薩摩の意向が強く反映されたのかもしれません。

御鉢がもともと鹿児島県側の領地で宮崎県がそれに異議を申し立てたのか、それとも、もとは宮崎県側だったのか等詳しいことは、一応調べたのですがよくわかりませんでした。今後の課題とします。ご存じの方がおられましたら一報頂けると幸いです。

県境論争はどこにでもありますが、前述した富士山山頂はどうでしょうか。

富士山山頂は静岡県と山梨県どちら側でもありません。
山梨県と静岡県が協議の結果、富士山山頂には県境を設けない旨の合意に至ったためです。
ですから、国土地理院の地図には富士山の山頂部分には県境線が存在しません。

地図によっては、富士山山頂の真上ぴったりに県境線を引いているものも存在します。


 どのぐらい古いのか

三重県にある伊勢神宮は、11代垂仁天皇の時代に倭姫命(やまとひめのみこと)が天照大神の八咫鏡(やたのかがみ)を祀る場所を探すために旅をし、天照大神のお告げを聞いて伊勢の地を選んだとされています。

高千穂は初代神武天皇の曽祖父の時代、伊勢神宮は初代神武天皇から数えて11代目の垂仁天皇の時代ですから高千穂がいかに歴史があるのかが分かるかと思います。

ちなみに、伊勢神宮が新しいといっても創建されたのが2000年以上も昔と言われていますから、高千穂はとんでもなく古代であるということですね。

私事ですが、以前に古事記を読んでおいてよかったな~と思います。
当然、現代語訳ですけどね。
おかげで古代の神話の話題にも多少はついていけるようになりました。

(注)年代や出来事等については考古学上のものではなく、古事記・日本書紀が伝える神話の中のものです。


都井岬

都井岬

都井岬は太平洋に面した宮崎県串間市の最も南にある幅約2Km, 長さ約4Kmの半島です。

宮崎県の画像を見ていたら、ちょこんと猫のしっぽのような形をした岬が見えたものですから思わず見入ってしまいました。

海の中に突き出た部分の周囲は断崖が続いています。

画像では岬の先端が欠けているように見えますが、海食崖で断崖絶壁となっています。

また、全国でも珍しい野生馬の生息地で、御崎馬として国の天然記念物に指定されています。

宮崎県は以上です。


今回の画像は国土地理院の数値標高モデルデータを編集・加工して使用しています。


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