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【3】ヘソ曲がりの作詞術⑪【不思議な数字】

はいこんにちは。
自宅の前に片方だけのハイヒールが落ちていて心底ビビった作詞家の藤橋です。
誰かからの何かのメッセージでしょうか。明日になったらもう片方も揃ってるとか、ないですよね?
オカルト好きの人、教えてください。

恒例の自己紹介はこちら。

さて今回は
数字の「3」の不思議について自分なりに書いてみます。

みなさん、3っていう数、なんかちょっと特別なものを感じませんか?
キリが良いわけでもなく割り切れるわけでもない変な数字のわりに、
好んで使われる場面が多い気がします。

身近なところでも
野球は3アウトでチェンジ
東京タワーは333メートル
ウルトラマンは3分まで
みたいな。

他にも麻雀で言うと大三元、神話に出てくる三種の神器、3年目の浮気、など
古くからなぜか好まれる数字、3。

ナントカ術や、スピリチュアル的な方面から見ても特別な力を持つようです。
また、スティーブ・ジョブズはプレゼンにおいてポイントを必ず3つにまとめるそうです。

これ、なんででしょうね。


一説には、
人間の脳は4つ以上のことを覚えるのが難しいとか
はたまた縁起が良いのだとか
色々言われておりますが。

実はこれ、作詞においても大きな効果があります。
ちょっと説明させてください。

言葉は3つ並べると強くなる

ちょっと身近な例えですが
仮に取引先に「それってどんなメリットがあるの?」と問われた時。

ぼくはとにかく「まぁ、3つあります」と答えてしまうことを心がけています。

何も思いついていなくても、とにかくそう答えます。

だいたい2つ目くらいまではその場で思いつきます。
2つを話している間に全力で3つ目を考えます。

本当に何も思いつかなくても
「3つ目はちょっと忘れました」とか「あなたが目の前の人間と仕事できることです」とか適当なことを言います。

とにかく「3つある」と言い切ってしまうことが重要です。

実はこの場面って、内容はあまり問われていないケースが多いです。
「3つ」「ある」という事実が重要で、あとはオマケくらいに考えておくと良いと思います。

そして、言葉というものは3つ並べると強くなるという性質を持ちます。
ぼくはこの事実が一番重要なのではないかと考えています。

では、なぜ強くなるかと言うと。


3つの言葉を列挙する際のルール

公用文における接続詞のルールや難しい事例は興味があればどこかで勉強していただくとして、
簡単なものだけ説明してみます。

例:

彼の台所にはリンゴやバナナ、オレンジまで置いてあった

これ、なんとなく使っている人も多いと思いますが
「や」と「、」の使い方が決まっていますよね。
名詞が3つ並ぶときは、基本的にこの使い方をします。

これが例えば
「彼の台所にはリンゴやバナナが置いてあった」
だけだと、どうですか?
「へー」くらいの感じですよね。
他にも色々置いてありそうで、主役はどちらかと言うと果物でなく台所なイメージを受けます。

そこに「、」を使って「更には」みたいな雰囲気で
「オレンジまで置いてあった」
とか言われると、
なんかよっぽど様々な果物が置いてあることを伝えたいんだな、という印象を受けませんか?

3つ並ぶことによって
多分、「彼」の「台所」に「果物」が置いてある「違和感」を伝えたい文なんだな、と理解することができます。

文として強くなっていること、気付いていただけましたでしょうか。

ま、とにかくこんなルールがあるということを知ってください。


作詞における活用

何度かこのnoteでお伝えしていますが、
作詞というのは「決められた尺」「決められた文字数」の中で
伝えたいことをいかに伝えるか、という創作活動です。

ということは、時には
「書いていないことを書いてあること以上に読ませる」ことが必要になります。

行間を読む、というやつです。

そのために、ある片側の事象を強調することによって、もう片側の事象を際立たせる、なんていう手法があります。

そのために「3」です。

例①:

10代 憎しみと愛入り混じった目で世間を罵り
20代 悲しみを知って目を背けたくって町を彷徨い歩き
30代 愛する人のためのこの命だってことに あぁ 気付いたな

エレファントカシマシ「俺たちの明日」

めちゃくちゃ濃いめのドラマがありそうな人生を想起させてくれる歌詞です。
聴き手にとっては自分と重ね合わせる「重ねシロ」みたいなものが多く、とても共感しやすい作りですね。

感覚としては
1が「起」、2が「承」、3が「転結」くらいの感じで使われています。


例②:

ビルに飲み込まれ 街にはじかれて
それでもその手を離さないで

玉置浩二「田園」

3つ言葉を並べる際は、2と3の間にギャップがあればあるほど良いです。
むしろギャップを作るための2です。

1の延長線上の2が「街にはじかれて」ということですね。

1<2という、素晴らしい作りになっていると思います。


例③:

不器用で ヘタクソで 憧れるよ

1年後に解散するロックバンド「イチバンガラス」

手前味噌です、ごめんなさい。

普通に読んだら「そんなわけないじゃん」という語句を3つ目に持ってくるのがポイントです。
「そんなわけない」ものが「そうなる」ところに、聴かせる側の人間性を表現しています。


「3」の力、なんとなく伝わりましたでしょうか?


まとめ

作詞の観点から「3」について書いてみましたが、
これを意識する一番のメリットとしては
「話が上手い」と思われることです。

会話にリズムが生まれ、主張が伝わりやすくなり、
そして面白い人になれる近道でもあります。

なぜなら、
漫才や四コマ漫画でもフリがしっかりしているほどオチが面白くなるからです。

日常でこれをちゃんと考えている人は本当にトークスキルが高いです。
どこに行っても重宝されますので、是非心がけてみてください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではでは。

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