素朴な疑問の顔をしたヘイト
7月15日、朝日新聞に<トランスジェンダーへの「素朴な疑問」 背景にある権力の勾配>という記事が載った。当事者である性的少数者がネット上でマジョリティから「素朴な疑問」をしばしば向けられること。当事者の方が、ネット上で答えるのをやめたきっかけがあるという。
先月6月、私も「It's Pride Month.」で以下のように書いていた。ヘイターと呼ばれる、性的少数者を差別するアカウントがネット(Twitter)で手当たり次第?いろいろな人に「トランスジェンダーとは何か」と聞いて徘徊しているのを見たのがきっかけの一つだ。
「トランスジェンダーとは何か」と聞いて回るそのヘイターには、国連やWHOによるLGBTIの定義を引用したnoteなどは提示済だ。しかし、そのヘイターは決して定義を読もうとはせず(自分で検索しても1分以内にたどり着ける情報なのに!)未だに、何か月以上もいろいろな人に「トランスジェンダーとは何か」とリプを付け徘徊している。もはや「素朴な疑問」の範囲を超えた嫌がらせで、ヘイトスピーチだろう。そのヘイターは実はLGBTIの定義を知りたいわけではないのだ、ということがよくわかる。実際に、検索して調べる能力がないのかもしれないが。国連やWHOによる定義が提示されても読まず読もうともせずに、また別の人に「トランスジェンダーとは何か」というリプを付けて回る。こんな異常な嫌がらせを何か月も続ける人がいれば、当事者の方が「素朴な疑問」にネットで答えるのはやめよう、と思うのも当然である。
筆者は外国人なので、外国人として子どものころからそんな「素朴な疑問」をぶつけられることも多かった。
「なぜ日本にいるのか」
「日本語うまいですね、どこでならったの?」
「いつ日本に来たの?」
「いつ帰るの?」
などなど。
聞く側は歴史を知らない、歴史的経緯を知らないし、マジョリティしぐさで自分たちには「なぜか」聞く権利があると傲慢に思っている。また、こういった素朴な疑問には排他的な視線がセットで、根底には排除や周縁化が潜んでいる。子どもの頃から「素朴な疑問」をぶつけられた経験が多い私は、「素朴な疑問」に排他的な視線が伴っていることもよく知っていた。だから、性的マイノリティについて当事者の方や連帯する方が「素朴な疑問」の体で、無遠慮且つヘイトに接続する質問を延々ぶつけられるのを見て、同じ周縁化されたマイノリティとして黙っていることが出来なかった。そこで先月「It's Pride Month.」を書いたわけだが...
「セサミストリート Sesame Street」アジア系のキャラクター、ジヨン Ji-Young 지영も「出ていけ、帰れ」と言われ傷つく...
映画『マイ・エレメント Elemental』でも子どもの頃「故国へ帰れ」というヘイトスピーチをぶつけられ深く傷ついた主人公が。
Twitterで見たある研究者の言、「歴史修正主義者は常に“ゼロから”議論を始めようとします。過去の研究の蓄積をなかったことにするのが、彼らにとっての必須条件だからです」も、この「素朴な疑問」や「定義を聞く」、あるいは「何が差別かを聞く」ゼロ地点に引き摺り下ろすリセット現象に非常に当てはまる。国連やWHOの定義がそこに、見えるところにあり、あるいは「性自認に基づく差別は国際人権法違反」が手の届くところにあるにも拘わらず、「トランスジェンダーとは何か」と永遠に嫌がらせリプを付け徘徊するヘイターのヘイトスピーチ。
ゼロから議論を始め、リセットさせ解体して主観的に瑕疵のレッテルを貼り
針小棒大にあげつらえば、自分たちの差別が正当化されると思っているのだろう。繰り返しになるが、本当に定義を知りたければ1分以内に検索で情報に辿り着け知ることが出来るはず。そんな常識や基本的情報からも逃避し永遠に無視スルーし続けているということがどれだけ不誠実で卑劣か。歴史修正主義者ネトウヨと全く同じ行動様式である。その代わり、ネットでゼロから議論を始めて発覚した瑕疵を針小棒大にあげつらえば、ナチス排外主義が煽動した迫害のように、少数者周縁者というアウトサイダーに対する「敵意」を「懸念」を装ったストーリーで粉飾し、敵意という陋劣な渇欲や差別を「不安」や「恐怖」のコーティングで煽る「モラル・パニック」のための地ならしが出来る、だから定義を聞いて徘徊し、ゼロから議論を始めようとするのだろう。
冒頭の「素朴な疑問」に戻ると...目の前にいる人に伝え続けることは大切だとしても、歴史修正主義(ドイツでは歴史否認主義という)のレイシストらと同じ、「素朴な疑問」の体でゼロから議論を始めようとするヘイターに性的少数者ら当事者が対応する・対応させられるのは疲弊もするし新たな被害も生むのではと危惧している。
前述の通り、国連のLGBTI定義を提示しても一向に読もうとせずに、また別の人に「トランスジェンダーとは何か」と聞いて回る悪質なヘイターによる加害が頻発している現状では。映画『Denial(邦題:否定と肯定)』で、ホロコーストからの生還者を証人として法廷に立たせるかどうか、と迷った時、歴史否認主義者アーヴィングが生還者を侮辱し嘲笑する、ヘイトスピーチの
リスクが懸念されるからやめようという意見が表明されていた。生還者が法廷でヘイトスピーチを浴びせられ、二次被害に遭わないかどうかも考慮しなければならないのが歴史否認主義者との闘いだった。日本軍性奴隷被害者(「慰安婦」被害者)も同様だ。
「性自認に基づく差別は国際人権法違反」という基本的事実や前提も無視するヘイターがゼロから話を始め、過去の議論や学術的蓄積に国際的コンセンサスなどすべて無視し解体しリセットするなら、特に当事者は素朴な疑問の顔をした議論の土俵に乗るべきではない。それは、歴史修正主義者との闘いが示している通りである。
※ほかに歴史否定/歴史修正主義者の卑劣なやり口としては紙ペラ一枚史観、一点突破主義がある。NHK「緑なき島(=軍艦島)」に戦後の写真映像混入という瑕疵があるからと言って、1930年頃の当時から国際法違反の強制労働、徴用工問題などをなかったことには出来ない。しかし、歴史修正主義者はその瑕疵をもって、一点突破主義で加害をなかったことに出来ると短絡し強弁する。ヘイターも同じ卑劣なやり口をつかう。たとえばアライが〇〇と言った!という失言や瑕疵を声高に取り上げても、ヘイターが日々繰り返している国際人権法違反やヘイトスピーチ、差別を帳消しには出来ないが排外主義プロパガンダを厚顔無恥に押し通す。その姿は歴史否定/歴史修正主義レイシストと一致する。
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