同級生の女子に電気アンマされたら足奴隷に堕とされた 9
全てが終わったんだ、元通りになったんだ、と心の底からほっとした。これで平穏無事な日常が戻ってくるんだと思った。
一週間ぶりに教室に足を踏み入れる時は、胃が喉から出るほどに緊張したが行ってしまえば拍子抜けするほど何もなかった。僕に関する悪い噂が流れていることもなかった。またしても江崎さんに呼び出されるというわけでもなく、パシリにもされなかった。この数カ月間に起きたことは、寝苦しい夜に見た悪夢だったんじゃないか、と錯覚するほどに普通の日常がそこにはあった。
普通の中学校生活がまた戻ってきた。
なんでもない淡々とした日常を過ごすのはとても気が楽だが、物足りなさも感じていた。江崎さんに呼び出され、氷のように冷たい表情で、酷い命令をされ、それを実行する時に感じていた高揚感。男としてのプライドをズタズタに引き裂かれる時の甘い傷。そういったものが今となっては恋しい気持ちになっていた。
僕は江崎さんに、生涯消えることのない烙印を身体に刻み込んだのだ。それは<変態>という名の烙印だ。僕の自慰はいつも外履き用の靴を陰茎に押し当てて揺らすというものになっていた。そうでないとイケなくなったのだ。他の人がしていると言われている右手で輪っかを作って扱くやり方ではまったく気持ちよくなることができない。陰茎を押しつぶされるときの痛みや振動が無ければ気持ちよくなることすらできなくなってしまっていた。
さらに、自慰をする時に必ず思い浮かべるのは、江崎さんの顔だった。
「あぅ、江崎さん…もっと…もっとぉ…おねがい、いじめてください…」
と口の中で彼女の名前を呼んで自慰をするようになっていた。いつもイッた後は絶望的な罪悪感に落ち込み、もう二度とするもんか、と思うのに、次の日になるとまた、江崎さんに苛められてはしたないイキ姿を晒す妄想をして、靴を股間に押し当てて自慰をする。もうそんなことが日課となってしまった。
変態なことなんてしたくもない、穢らわしい、恥ずかしいと絶望的な自己嫌悪に沈むのに、それよりも快感が勝ってしまい、何度も何度も自慰をしてしまう。引き裂かれるような心痛を覚えながらも、それすらも快感になってしまっていた。
夏頃にはまだ江崎さんの足にしか興味がなかった自分は、この頃、江崎さんを見ると、すぐにでも跪きたくなる衝動に駆られる。彼女に傷つけてほしい。江崎さんに傷つけてもらわなければ、踏みつけにしてもらわなければ、彼女に支配されなければ、とても身も心も満足することなんてできなくなっていた。しかし、江崎さんはきちんと約束を守って、僕に優しく、普段どおりに接してくれる。それは本来ならば有り難いと思わなければいけないはずなのに、今はそれが寂しくて仕方がない。また苛めてほしい。もっと苛めてほしい。江崎さんに虐められなければこの甘く切ない身を焦がすような疼きはとても治めることなどできようもなかった。
とても自分でするだけでは満足できない身体になるのはそれほど時間が掛からなかった。いくら靴底を押し付けたって、陸上部で鍛え上げられた彼女の足による強い刺激には代えられるものではなかった。あれからずっと下半身が江崎さんの足を求めて疼いていた。
こういうことを求める男のことは<M男>と呼ぶらしい。試しにスマホで調べてみると、それはとてもおぞましい光景が展開されていた。いかにもな意地悪そうな女子に足蹴にされる中年太りの男性の映像が次から次へと出てくる。いまどき芸人すら履いていなさそうな滑稽な白ブリーフに、場違いな覆面を被っただらしない身体つきをした中年が、アヘアヘと喘ぎながら、「もっとぅ!もっとぅ!もっといじめてください!」と叫んでいる。あれが自分の真の姿なのだと思うとぞっとする。でも、心の底から彼のことが羨ましかったし、心の底から彼のことを尊敬した。
この渇望は自宅だけでは収まらず学校でもそうだった。授業中に江崎さんの背中を眺めていると、彼女に苛められていた日々のことが思い浮かぶようになった。あの渦中にいたときは死にたくなるほど辛かったが、今はその日々が恋しくてたまらなかった。また、彼女に嫐られたい。涙が出るほど傷つけてほしい。そんな思いとは裏腹に江崎さんはどこまでも僕に優しくしてくれる。それが辛くて辛くて悲しくなったし、そんな身勝手な自分が大嫌いだった。
僕の思いが決壊したのはさらに季節が移り変わった真冬の、終業式の日だった。
もうこれ以上は耐えられない。彼女に電気アンマで精通に導かれた秋の夕暮れからずっと被虐的な妄想が止まらない。僕はあの日に、江崎さん無しでは生きられない身になってしまったのだ。
終業式の日の全校集会も、成績表をもらうときも、ずっと江崎さんのことばかり考えていた。この日を逃したら2週間近くも江崎さんの顔を見ることができない。どうしても、江崎さんにもう一度苛めてもらいたい。江崎さんに刻み込まれた烙印は、江崎さんでしか埋められないのだ。身勝手だと思われてもいい。変態だと思われてもいい。自分が最低な人間になったとしても江崎さんにもう一度虐めてもらいたい。
大荷物を抱えた生徒たちでごった返す昇降口で、ローファーに履き替える江崎さんを掴まえた。もう今しかないと思った。自分が周りにどう思われるかなんて気にする余裕なんてなかった。江崎さんの裾を掴み、
「ねえ、あの……」
「ん?どうしたの?榎森くん」
優しそうな表情を向けて江崎さんはそう微笑んだ。その優しそうな笑顔は僕を優しく拒否する笑顔だった。それを見て胸が苦しくなる。
僕は周囲に生徒がいるにも関わらず、その場に土下座した。
「お願いだ、僕を、僕のことを、苛めてください!もう一度、苛めて……お願い……江崎さんじゃないとダメなんだっ……どんなに頑張っても江崎さんのことなんて忘れられない……この渇きは江崎さんじゃないと癒せないんだ……だから……お願いします!僕を奴隷にしてくださいっ!!!」
と昇降口中に響く大声ですがりつくような声で懇願して、床に額をすりつけて彼女を請うた。
数秒後、僕の後頭部に固い何かが触れたのが分かった。その固い何かは押しつぶすようにして力が込められる。床につけた額が痛くなるほどの力強さだった。これは奴隷に対する抱擁だった。
羞恥なんて全然感じなかった。羞恥以上の上回る激情でただただ涙が溢れ出て止まらない。クラスメイトの嘲笑や蔑み、侮蔑の視線すら今の僕にとっては祝福に聞こえる。
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