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次の世代とドライブイン。──『国道4号線 ドライブインは眠らない』をしゃべる

ドキュメント72時間を好きなふたりが勝手に番組についてあれこれしゃべるnote。今回は2024年4月5日に放送された『国道4号線 ドライブインは眠らない』です。

やまぐち 今回の舞台は、東京から北に伸びる国道4号線沿い、福島県にある24時間営業のドライブインです。いろいろな食べ物が美味しそうだったり、そこを訪れるいろんな人の姿があったりと、まさに“人生の交差点”ともいうべき3日間が描かれていました。ほんださん、どうでしたか?

ほんだ いやー、ドライブインシリーズですね。前回の岡山のドライブインから、あまり間を置かずに今回の福島編が放送されたんで、「また行きたくなるところ増えたな!」って感じです。名物のもつ煮定食、めちゃくちゃ食べたくなりましたね。ご飯おかわり自由っていうのも最高だし、今いちばん行きたい場所かもしれません。

やまぐち あの絶対に美味しいであろう、あの茶色い色合いがたまらないんですよね。まさにご飯を食べるためにある一品というか。しかも建物や看板含めて、かなり昔から続いている感じが渋くていいですよね。昭和47年創業らしいですけど、ほとんどリニューアルとかもしていないんじゃないかっていうぐらい。

ほんだ まさに維持し続けてるっていうところが魅力ですよね。おかみさんも82歳で、旦那さんと一緒に始めた頃はすごく混んでたけど、今はお昼以外はそこまで混まないから、少し楽になったとも言ってましたよね。それでもやっぱり24時間営業を続けていて、常連さんを大切にしてる感じがあたたかい。ご飯おかわり自由も含めて、まさに“人情”って感じでした。

やまぐち 最近は、24時間営業と言っても人手不足や高齢化とかで続けるのが厳しい店が多いじゃないですか。コロナ禍をきっかけに、コンビニやファストフードでも24時間営業をやめる動きがあるなかで、今回のドライブインは経営的な合理性よりも「夜中に来る人のために開けていたい」という想いで続けているんですよね。そこがすごいなと思いました。

ほんだ 本当に厳しいですよね。でも、夜中にやってるからこそ、来る人もいるわけですよ。番組内でも3時とか5時とかに来る人がいたし、そういう人たちの顔を知っているからこそ、おかみさんも「閉められない」って言ってましたよね。いわゆる“効率”とはかけ離れてるけど、それでも人のために続けるってすごく尊いなと。

やまぐち しかも今年は、トラックドライバーの労働環境の改正や物流問題がいろいろ取り沙汰されてるじゃないですか。そういう状況だからこそ、長距離のドライバーさんが休める場所として24時間営業のドライブインが必要なんだなと再認識しました。そういった社会のインフラを支えている部分を、おかみさんの「顔見知りだから」という温かさで保っているという危うさというか、ある意味奇跡的なバランスですよね。

ほんだ そうなんですよね。24時間営業というと若者向けのイメージがあるかもしれないけど、今回のドライブインを利用してる“若い層”って、実際は40代、50代も含めた労働人口だったりするわけですよ。地元の消防団の人たちなんかも、深夜にファミレス感覚で集まって飲んでましたよね。だけど「若者が入ってくれない」と嘆いてたりして。

やまぐち そうそう、消防団の2人が「昔は1、2軒まわったらみんなが入ってくれたけど今は誰も入ってくれない」って言いながら、結局大工さん呼んで帰るという(笑)。あのおかみさんも彼らを温かく見守っているんですよね。「あら、また飲んでるわ」っていう感じで。

ほんだ 最後に出てきた中学生のエピソードも良かったですよね。徒歩で1時間かけてドライブインに来るという。ドライブインって“車で来るもの”ってイメージだから、徒歩で来る中学生たちが新鮮でした。

やまぐち 30年、40年、いや50年近く通ってる常連のおっちゃんも、「高校生の時から来てるんだよ」って言ってましたし、同じように、あの中学生たちが将来大人になったら、また消防団に入って通うような場所になるのかもしれない。そうやって世代をまたいで受け継がれていくのがいいなと思いました。

ほんだ 地元から離れた人たちも、帰省の時に親子でご飯を食べに来たりするんですよね。だから一度いい思い出ができると、「あ、ここまだやってるんだな」「行こっか」って、連鎖的に次の世代へ繋がっていくんでしょうね。

やまぐち そうですね。チェーン店の物価も上がってきてるし、中高生の腹を満たすにはこういう定食屋スタイルの店がありがたいんだろうなと思いました。ご飯おかわり自由って、下手したら今すごく貴重じゃないですか。だからわざわざ徒歩でも1時間かけて行く価値があるんでしょう。

ほんだ 確かに、エンタメ的に「デカ盛り」ってのとは違って、「お腹いっぱい食べたい、でもお小遣いは限られてる」っていうニーズを満たしてくれる場所が少なくなってるのかもしれませんね。そういう意味では、こういう昔ながらのドライブインが地元の“定食屋”みたいな機能を果たしてるんだと思いました。

やまぐち 本来ドライブインって通過点のイメージじゃないですか。長距離移動の途中に寄る場所っていう。でもそこに地元の人まで集まっているのが面白いですよね。もつ煮定食をテイクアウト用にドサッと詰めてもらう社長さんとかも出てきて、「家族が待ってるから」って。蓋が閉まらないくらいパンパンに入れてもらうみたいな(笑)。

ほんだ 仕事で使ってた場所が、いつの間にか地域密着型の店になってるっていうのが面白いですよね。昔は男性ばっかりの場所だったかもしれないけど、今はお父さんがお子さん連れてくる姿も増えてきてる。やっぱり時代とともにドライブインの役割自体が変遷してるんだろうなと感じました。

やまぐち 昭和に創業した頃は、本当にトラックドライバーのための休憩所だったでしょうしね。そこにサウナがあったりお風呂があったりするのもその名残だと思うんですけど、今は若い人が「あそこ行ったらサウナもあってメシも旨いらしいぞ」って感じで来るのも面白い。いわば“第二世代のドライブイン文化”が始まってるのかもしれませんね。

ほんだ で、さらに地元の中学生が第三世代として来るかもしれない(笑)。世代が重なってるからこそ、あのおかみさんも含めていろんな人が混在して面白いですよね。

やまぐち ただ、やっぱりどこでも問題になるのが“後継ぎ問題”なんですよね。店を畳む、畳まないの岐路は来る。おかみさんも80代ですし、建物にも寿命がある。無理矢理延命しても違う気がするんですよ。お店をそのまま残すだけが正解ではなくて、そこで培われた文化や想いがどこかで受け継がれていくことが大事なのかもしれないなと。

ほんだ そう思いますね。味をそのまま引き継ぐもよし、雰囲気やスタイルを誰かが別の場所でやってもいい。いろんな形があるだろうし、一概に「この店をずっと残さねば!」というのは難しいかもしれない。

やまぐち ですよね。自分もあの中学生の誰かがいずれ継いでくれたら最高だな、なんて思ってますけど(笑)。まだちょっと先だと思いますが。

(おわり)

Podcastでは毎週金曜にドキュメント72時間の感想をしゃべっています。ほぼすべての放送回についてしゃべっているので面白かった方はぜひ他の回も聴いてみて下さい(SpotifyやApple Podcastで配信中)


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