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D&D和物、キャラクター紹介:はぜ火
はぜ火。世に燻り出でた戦乱の炎
どこか遠くで、それともひどく近くで、かすれた音がする。
繰り返し、繰り返し、執拗に――
音、いや、声。
言葉にならない声が呼びかけてくる。
応えるように、身体の奥で何かが動いた。
温かい――いや、熱い。
熱い?
身体?
これが、おれの、身体――なのか。
ゆるりとまた意識が遠ざかる。微睡の中に戻ろうとしたとき、視界を何かが過ぎった。そう思う間もなく身体の奥から熱い赤いものが“そいつ”めがけて迸(ほとばし)った。赤いものに包まれ、そいつは跳ねる、踊る。
――ああ、きれいだなあ、楽しいなあ…
おれは、そいつをずっと眺めている。やがて、黒くなる。そいつも、視界も。
名前:はぜ火(と、のちに呼ばれるようになるもの)
生まれたばかりの火薬の神。内側に炎を宿したつぎはぎだらけの鎧。或いは殻を纏(まと)った炎。
種族:ウォーフォージド
クラス:ウォーロック(地獄;書の契約)。
PL:チョモラン(https://twitter.com/huusen_uri、マンガ家)
D&D日本公式でキャラクターイラストを描いているチョモランさん、実はD&D4版の時にもいっしょに和物を遊んでいる。で、キャラの相談をする。
「種族はウォーフォージドをやってみたいんです。イメージとしては、和物世界における“命が宿ってしまった鉄砲などの兵器”、『もののけ姫』なら石火矢とか」
「生まれたての黒色火薬の神、神は神でも概念の精みたいなやつで、それが鎧とかに宿ってウォーフォージドになった的な……」
いきなりスゴいのが来た。
TRPGってのは、DM(ダンジョン・マスター)とプレイヤーとでイメージを持ち寄って一つの物語世界が構築してゆく遊びなので、つまりは“DMである僕が考えてたこと以上”のアイデアをぶつけられることがある。
今回のチョモランさんのキャラクターがそう。
ロードムービー的に、単発の化け物退治をやっていこうかな、とか考えてたところにいきなりキャンペーンの芯となる柱がぶち立ってしまう。
はぜ火は、そんなキャラクターだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1705055815652-8X2lAJ3Ttn.jpg?width=1200)
器物の怪と人造人間
和物で器物の化け物と言えば、それは『百鬼夜行絵巻』に登場する器物の怪、およびそれの元ネタとなった『付喪神記』の付喪神だろう。だが、これらの怪は「陰陽雑記云、器物百年を経て、 化して精霊を得て、よく人の心を誑す、是を付喪神といへり」てなくらいで、時間がかかる。
人や獣の姿を取った器物の怪は、じつのところ民話にはいなくてこれらの絵巻物を踏まえて、鳥山石燕が創作妖怪を描いた『百器徒然袋』に登場している。ビジュアルイメージではぜ火に近いのは瀬戸物の怪である瀬戸大将。はぜ火は鎧や石火矢がイメージなのでここまでユーモラスではないだろう。
って、ことはだ。
はぜ火は付喪神のように見えるけど、そうではない“何か”にした方が収まりが良い。
はたしてそれは、なになのだろう?
種族のデータとしては『エベロン冒険者ガイド:最終戦争を超えて』に掲載されてるウォーフォージドを使おう。
で、実は日本の昔ばなしにはウォーフォージドと同じような「人に作られた人造人間」が存在する。
河童の起源の伝承として、「大工の名人(左甚五郎など)が人手がほしくて人形を作って仕事を行わせ、役目を終えたその人形を川に流した。この人形が『河童』になった」と言うのがある。
この伝承をモデルにして、和物のウォーフォージドを設定するのはどうだろうか? 伝承では人形だったのが河童になっていくが、その前、つまり“偉大な技術を持った大工(アーティフィサーやウィザードだったのだろう)が自分の仕事を手伝わせるために作りだした種族”=言うなればタスクフォージド(和名は後で考える)とかにしてしまうのだ。
フィーンドって、誰だよ?
ただし、はぜ火は“命が宿ってしまった鉄砲などの兵器”、“生まれたての黒色火薬の神、それが鎧とかに宿った”存在で、クラスとしてはフィーンド契約のウォーロックである。
D&Dでフィーンドと言えばデーモンやデヴィルといった下層次元界原住の存在であり、ウォーロックの契約相手となればアスモデウスやメフィストフェレスの名が上がる。
和物世界でフィーンドってなにが相当するだろう?
しかもはぜ火は“生まれたての黒色火薬の神というか精霊”。
ならばむしろ、彼はこの世界にただ一人の存在だ。ウォーフォージドという種族データは、彼の特徴を表現するのに最適なのでこれを使うが、彼はエベロンのウォーフォージドではない。
ただ、“戦いのために造られた”というところは、先ほどの左甚五郎作成の人造人間説よりも、本来のウォーフォージドに近く、そして世界に果たす影響力が大きい。
つか、火薬だよ、石火矢だよ。マジでもののけ姫のタタラ場でエボシ御前じゃん。かっこ良いけど、いきなり昔ばなし世界から戦国時代が見えてきちゃうぞ。
オリジナルのセッティングを遊ぼうという時、キャラクターを作ってもらうことで、これから作らなきゃいけない・必要になる設定が見えてくる。
チョモランさんとのキャラ作成時のチャットは、まさにそういうやり取りだったのだけど、さらにはアイデアを交したその一合で、このキャンペーンのテーマも立ってしまった。
新たにこの世に現れ出でた、この神。
はぜ火は、どこから来て、どこへ行くのか。
今回のキャンペーンは、はぜ火の物語になるのだ。