知りたい!リアルな再生医療現場#1~細胞培養加工施設CPCのリアル~
サイトロニクスでは、再生医療現場における細胞製造の課題を解決するための事業に取り組んでいます。実際の現場は、どんな状況でどのような課題を抱えているのか、リアルな再生医療の現場に迫ります。
第1回目は、再生医療の細胞培養加工施設CPC(Cell Processing Center)での経験が豊富なサイトロニクスの社員、大竹さんに再生医療の製造現場はどんな環境なのか、そこで使用する機器にはどのようなことが求められるのかについて聞きました。
再生医療の製造現場で重要な施設管理
― 大竹さんは前職で細胞培養加工施設CPCでの業務経験があったとのことですが、まずは当時どんな立場で、どんな業務を担当していたかを教えていただけますか?
私は、再生医療等製品を製造するクリーンルームの管理と製造や品質管理試験で使う装置のメンテナンスや管理など幅広く担当していました。また、バリデーションと呼ばれる再生医療等製品製造において求められる重要なステップも担当していました。分かりやすく言えば、機器がいつもと同じように問題なく動くかなどを確認する業務です。
実験室と製造現場との大きな違いは「厳格な管理体制」
― 実際に使われる医薬品を製造するクリーンルームは、大学の実験室のような場所とは違うのでしょうか?
そうですね。規模なども違いますが、何と言っても管理の度合いが大きく違います。再生医療等製品を製造するクリーンルームでは、「清浄度」という空気中の微粒子の量などの衛生状態が管理されていたり、冷蔵庫や冷凍庫の中に温度センサーが内蔵されていて設定温度に変化があると管理者にアラームメールが飛んだり、内部が厳格に管理されています。
― なるほど、管理体制が違うのですね。
はい。まず、製造しているものが患者さんに投与する医薬品なので、品質をしっかりと保証するために、菌がない綺麗な環境(無菌環境)下で製造され、安全性上問題ないことが重要です。また、細胞は生き物なので、少しの温度変化でも品質に影響を与えてしまいかねず、厳格な管理体制が求められます。
クリーンルームで求められる「無菌性」
― そういった厳格な管理がされているクリーンルームの環境下では、扱う機器も異なるのでしょうか?
再生医療業界での一般的な話としてですが、大学でも使う機器がほとんどそのまま入っているのではないかと思います。
― そうなのですね。では、同じ機器でも医薬品製造業として使う立場で見た時に、不足していたり不満に思ったりするところはあるのでしょうか?
無菌性ですかね。クリーンルームで扱うので、顕微鏡のような小型装置でも安全キャビネットやCO2インキュベーターといった大型装置でも、基本的には業者さんが設置してくださるのですが、クリーンルームでの作業に慣れていない方も少なくなく、例えば、アルコールなどでちゃんと清拭してから搬入してほしいなとか、無菌性を保証するためにここはこうしてほしいなと思う部分は多くありました。
無菌環境で使用する機器に求められること
― 「無菌性」という観点で、クリーンルームで使用する機器にはどのようなことが求められるのでしょうか?
顕微鏡の話をすると、結構細かい部品がたくさんあるんですよ。搬入時は、その部品を、一個一個拭き上げてクリーンルームの中で組み立てるわけではなくて、清浄度が管理されていない普通のオフィスや実験室のような一般環境下で組み立てて、その後クリーンルームに搬入するんですね。そのため、対物レンズなど細かい部品については、どうしても空気中の菌や微粒子などが入り込んでしまう恐れがあります。
また、機器を導入するタイミングも重要です。基本的には再生医療等製品を作っている時には搬入できません。ただ、どうしても必要であれば搬入せざるを得ない時もあるのですが、その場合は機器が通ったところをすべて大規模に清掃することになってしまいます。ですから、基本的にクリーンルームに搬入するものについては、滅菌済みであったり、もし細かい部品でどうしても滅菌できないものだとしても、例えば、事前にアルコールで部品ごと拭き上げて、クリーンルーム内で構築できるようにしたり、そういった配慮を機器メーカー側でしていただけるとすごく助かりますね。
― 「滅菌済みの状態」というのは、具体的にはどういう状態であることが求められるんですか?
滅菌方法の一つとしてEOGガス(エチレンオキサイドガス)というのがあるのですが、それで滅菌されているとありがたいですね。さらにその機器の包装形態も重要で、滅菌バッグに入っていること。そして、その滅菌方法もちゃんと再現性が取られていれば非常に安心できます。
― EOGガス等で滅菌され、かつ持ち込む際には滅菌バッグに入れた状態で提供されることというのが、製造を止めて、さらには大規模な清掃作業を必要としない形として望ましいということですね。
はい。そうです。
― 「再現性」があると安心できるとのことですが、それは具体的にはどういうことなのでしょうか?
そもそも、無菌というのは菌が存在しないという状態を言い、その無菌状態をつくるために滅菌します。滅菌方法は、ガスの他にもオートクレーブと呼ばれる高圧蒸気を用いたり、ガンマ線などの放射線を照射したりなど色々あるのですが、いずれの方法にしても、この手順でこういう方法で実施すればほぼ確実に滅菌された状態にできますよ、という滅菌作業の試験を行います。これを滅菌バリデーションと言い、毎回同じように滅菌できるか、つまり滅菌作業の再現性があるかを確認できることが重要です。
― では、滅菌バリデーションもされて、クリーンルームで持ち込みやすい形になっている。そういった再生医療等製品向けとしての専用機器っていうのはあまりないものなんですか?
私のここ5年くらいの経験では、滅菌済みの状態で搬入できる機器というのはなかったですね。もちろん必要最低限、細胞に直接触れる資材については、確実に滅菌されているのですが、顕微鏡などの観察装置は基本的に細胞には触れないので、滅菌まではされていなかったです。滅菌されていなくても再生医療等製品にはそこまで影響しないかもしれないですし、資材に比べたら無菌に対する重要度は下がると言えますが、製品をつくるクリーンルーム内の環境には少なからず影響を与えるので、やはりしっかりとした無菌状態でクリーンルームに入れられる機器があるとありがたいと思います。
― 滅菌についてもう少し詳しく聞きたいのですが、本当に隅々まで滅菌されたのか、されるのか、あるいは何か不測の事態が生じた時に滅菌されていない箇所が露出されてしまわないか、といった懸念もあったりするんですか?
そうですね。ありますね。小型装置も大型装置もクリーンルームに入れる際は、アルコールで清拭してから搬入するんですけど、細かくて拭けないようなところがある場合はどのように無菌性を担保するかが難しい問題です。また、内側が密閉された機器では、その密閉された中の空間の保証はどうするのかが問題になります。例えば、機器を落として今まで密閉されていた内部が露わになった時には、その機器自体が、クリーンルームで作られていたのか、ガンマ線照射されたのかなどが重要になってきます。もしそういった事前の滅菌がされていなかったら、機器を導入する際にクリーンルーム内の清浄度に気を遣って作業する必要があります。導入前には機器をアルコール等で清拭し、導入後にはクリーンルーム全体を清掃するといった作業が必要になってきます。
― サイトロニクスの製品は、滅菌された状態で、かつ滅菌に関してのバリデーションが取られて、滅菌バッグに入れて提供されるので、その無菌性がユーザーさんにとっての価値になるということですね。
はい、大きな価値だと思います!さらに細かい点では、滅菌バッグも二重ないし三重でバリデーションを行っているので、グレードCで細胞製造されている方もグレードBで細胞製造されている方も、つまり簡易的なクリーンルームから医薬品製造向けのクリーンルームのいずれでも使用できることもポイントだと思います!
― グレードですか…また新しい用語が登場しましたね(笑)。
つい熱くなってしまいました。とにかく、サイトロニクスの製品は無菌性が保たれ、どんなクリーンルームでもお使いいただけるということです!
グレードについての詳しい話はまた今度(笑)。
― はい、またの機会にお願いします(笑)!ありがとうございました!
サイトロニクスの製品紹介
サイトロニクスの製品は滅菌済みでのご提供が可能です。
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