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ファンレター

2年前に送ったファンレターの返事が届いた。

その子に対して初めて書いた手紙。
返信が欲しくて書いたわけじゃないから烏滸がましいと思いつつも
少しだけ期待して、返信用の便箋と封筒を同封して送ったものだった。

私が書いた内容に対してのお礼や感想、イラストまで添えてあって
膨大な量のファンレターが届いているはずなのに
本当に私の手紙が手元に渡って、中身を読んでくれて
筆を執ってくれたんだな、と分かった。


私は大学卒業まで地方に住んでいて
頻繁にライブやイベントへ足を運べなかったこともあり
ファンレターを書く機会が多かった。

上京した今でも、本当に伝えたい気持ちは手紙に書くことが多い。


何者かになりたくて、でもなれなかった、何者でもない私は
「自分自身」を一番の武器にしている
アイドルという存在が大好きで、心から尊敬していて
どうしても、溢れてくる気持ちを伝えたくなる。

あなただから応援しているのだ、と。
ほかに代わりなんかいないんだ、と。

本当は、ポジティブな意見なら特に
たくさんの人から見える場所に書いた方が
大好きな人たちの未来に繋がるのだと思う。

目に見える数字が大切な世界だから。


手紙の内容をリプライに書けば
リプライは1増えるし、フォロワーのタイムラインに表示されて
気になってくれる人が増えるかもしれない。

YouTubeのコメント欄に書けば
コメント数は1増えるし、アルゴリズムはよく分からないけど
誰かのおすすめに表示される確率が上がるのかもしれない。

今の活動に対して、目に見える反応があると分かったら
新しい仕事が増えるかもしれない。

大好きな人たちの力になるなら、そうするべきなのかもしれない。


でも、不特定多数の人に見られていると思うと
自分の気持ちをうまく言葉にできなくなる。

自分の考えだから、自分だけのものなのに
応援歴が短くて知らないことばかりだなとか
この言葉は誰かを否定しているように捉えられてしまうかなとか
余計なことが気になって、結局当たり障りのない言葉しか書けなくなる。

気にする必要も
比べる必要もないことは分かっていても、
そういう性格なのでどうしようもない。

綺麗事ばかりになってしまったけれど
結局、自分の気持ちが
ただの「1」になってしまうのが嫌で
他人からとやかく思われるのも嫌で
無意識のうちに(少しでも共感してもらいたい)と思ってしまって
本当に伝えたいことが書けない自分が弱いだけ。

何か意見を書いたら「お気持ち表明」と言われてしまうし
自分の話が多いと「自語り」と言われてしまうし
他人からの見られ方を気にして
いつの間にか、自分の気持ちそっちのけで
「他人に評価される文章」を書こうとしている自分がいる。


手紙なら、私と相手だけの世界だから
思っていることを素直に書ける。

相手を傷つけない文章を書くのは大前提で
他人の目を気にせずに、自分の気持ちを伝えることができる。

目の前で読まれることはないから、相手の反応を気にしなくても良い。

読むも読まないも、返事を書くも書かないも、相手の自由だし
自分の気持ちを伝えることが主で、感想を求めているわけではないので
書いて、封をして、渡したら
もうその手紙はおしまい。


とは言え、やっぱり反応があると嬉しいので

返事を書いてくれたり
読んだよと伝えてくれたり
宝物!って言ってくれたり

恥ずかしいので、中身はあまり思い出したくないけれど
その一つ一つに私は救われています。ありがとう。

拙い文章だけど、少しでも気持ちが伝わっていればいいな。


今回返事をくれたその子は、
2年前どのグループにも属していない、ひとりのアイドルだったけれど
今はグループを組んで、ドラマやバラエティ番組に出ている。

活躍の場が広がっていく姿をリアルタイムで応援できるのは嬉しい。


手紙は、「自分らしく頑張っていきます!」という言葉で結ばれていた。

比べられることや評価されることが多い世界だけれど
どんな場でもあなたらしく、楽しく過ごすことができますように。

あなたのたくさんの夢が叶いますように。